テラーノベル
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時間の感覚が、もうなくなっていた。外の世界は遠く、扉の向こうは静まり返っている。
アルとアーサーは日々をともに過ごしながら、少しずつ歪んでいった。
アルの執着はますます深くなり、アーサーの心は揺れ続けた。
「もう……逃げられねぇのか」
アーサーは時折、虚ろな目で呟く。
アルはそんな彼を抱きしめ、囁く。
「逃げられないよ、アーサー。俺たちは繋がってるんだ。離れられない」
しかし、その繋がりは甘くも暖かくもなく、どこか冷たくて重い枷のようだった。
ある夜、アーサーは突然、窓の外を見つめた。
「俺……これでよかったのか?」
アルは答えられなかった。代わりにゆっくりと彼の背中を撫でる。
「もう誰も来ない。ここから出ることも、戻ることもできない。
でも、君といる。それが、俺の全てなんだぞ」
アーサーの瞳が細くなり、笑みを浮かべる――それは、喜びとも絶望ともつかない表情だった。
「俺たち、終わっちまったのかもしれないな」
アルはぎゅっと彼を抱きしめる。
「終わりじゃない。……ただ、新しい形の始まりだぞ」
だが、その“始まり”は闇に包まれたものだった。
二人だけの世界は狭く、深く、外の世界とは完全に断絶された。
時が経つにつれ、アーサーの笑顔は減り、無口になり、アルもまた狂気の影を深めていった。
「お前がいないと、俺は何もできない」
「俺も同じだ、アーサー。君が俺のすべてだ」
その言葉は、二人の牢獄を飾る唯一の真実だった。
終わらない夜の果てに、彼らは互いの存在に依存しながらも、どこかで自分を失っていった。
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