※あらすじ編集してきた
「イズ…!」
カエデの震え声が聞こえる。予想はできていた事態だったけど、油断しきっていた。
「どうしよう、カーくん…!?」
「決まってるでしょ、戦う!」
足元の砂を大量にすくい上げて口の中に突っ込む。サンドランでも居ればよかったけど、今はそんなことを考えている場合ではない。
「コピー能力…“サンド”!」
流動する砂の帽子を被ると、ぐんと力が湧いてきたみたいだった。
「…ぉえ…ジャリジャリする…」
ただの砂から強引にコピーしたものだから、口の中はまだ砂まみれだ。
「え、いつもそんな感じになるの?」
「ううん、いつもは能力持ちのひとを吸い込んだり、パワーのある物を吸い込んでるからね。こういう普通の物からコピーするときは、たくさん口に入れないと駄目なんだ」
「…てことは、ウォーターとかも…」
「うん、普通にきつい」
口直しに海水でうがいをしてから、改めて相手と向き直る。あちらも交戦の構えをとった。
「来る!」
片手から水が発射される。アドレーヌとぼくに向かってきたそれを、左右に分かれて避けた。
「…っ、“サンドウェーブ”!」
「“ペインター:ゴーストナイト”!」
軽い攻撃を発動して、大技を出す隙をはかる。アドレーヌはもう大きなキャンバスに下描きを準備していた。
「よし…“アドペインター:クラッコ”!」
水に通りのよさそうな電撃を放つ。しかしそれは躱され、アドレーヌが振り向くよりも速く攻撃が放たれる。
「わっ…クラッコが…ゴーストナイトも!」
大波で絵が流され、空中のアドレーヌはしりもちをついて落下した。
「今だ、“サンドキャッスル”!」
砂を固め、城の形を生成して設置する大技。ダッシュの勢いでいい感じの距離まで近づき、ようやく一撃――
「……!」
至近距離で虹の光が輝く。水の橋が架かるのが見えた。
「“すなやま”!」
その攻撃――ぼくの“レインボーレイン”にも似ていた――を、砂に隠れて凌ぐ。ちらりと覗くと、サンドキャッスルはふやけて意味を成さない置物となってしまっていた。
「なら…“サンドかんけつせん”!」
勢いよく砂から飛びだす。砂嵐を伴った突進は、今度は避けられずに命中する。が――
「…!」
「うわぁっ!」
失速して無防備になる瞬間を狙って、噴き出る水――“かんけつせん”に似ている攻撃――がぶつけられた。幸い、強い水流で吹き飛ばされたおかげで追撃を喰らう事態は免れたが、それでもこちらの劣勢には変わりない。
「カーくん、大丈夫?」
「うん。でも、攻撃できる隙がないんだ。真正面から攻撃しても、水で流される。それに、近づきすぎると、さっきみたいにカウンターを喰らっちゃう」
今の能力だと、かなり相性が悪いみたいだ。流されにくい能力ならマシではあったけど、そんなことを考えていても仕方ない。
(隙をつけば、ダメージは与えられるはず。でも、どうやって…?)
悩んでいるあいだも、攻撃は止まない。
次々と繰り出される攻撃を、砂山とキャンバスに隠れて避ける。動き方はなんとなく分かってきたが、攻撃手段が限られている以上はどうにもならない。
(このままじゃ…まずい!)
膠着した状態についしびれを切らしてしまった。ガードを解除して走り出す。
「“デザートストーム”!」
上方向に砂嵐を出す技だ。上手く巻き込めば大ダメージも狙えるだろう。掻き消されないよう、いつもより勢いを強めて放つ。
「……!」
しかしそれも、周囲に撒き散らされた水――“ウォータークラウン”みたいだった――に阻まれて届かない。それどころか、すぐに放たれそうな二擊目が、ぼくに強く叩きつけられそうになる。
(やば――)
瞬間、視界が暗くなる。
がっしりと包み込まれるような感触があった。
「――え…カエデ!?」
覚悟していた痛みはない。
冷たい水の代わりにぼくを包み込んでいたのは、腕を包むさらさらの布だった。
「…ごめん、カービィ。…今まで、覚悟が決まらなくて」
地に降ろされるのと同時に聞こえた、予想外の謝罪。びっくりして声の方向を向くと、彼女はもうぼくの前へ歩み出ていた。
「ここからは、わたしたちも戦う」
決意を込めるようにして、そう言った。
「迷ってばっかりじゃ、助けたいものも助けられない…!」
あとがき
グレゾが追いつかなさそうで心配なフジミヤです!
…と言うわけで次回は遅れそうですね(汗)素早く書けるだろうか…
そういえばみなさん、前回入れた挿し絵、上手く書けてましたでしょうか…?光の加減とか難しかったです!
では今回のあとがきもこの辺にして、また次回!