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#ワンナイトラブ
常葉くんの家にお世話になって、三週間が経とうとしていた。
一昨日から、アルコールのリハビリだって、一日一本だけお酒を解禁した。迷惑掛けたからって勝手に自粛していたのだけど、今更関係ないと言われたのでそうさせてもらった。
なんならビールが良いけど、さすがに『女子力』と、天の声が聞こえてきそうなので可愛らしくチューハイ(ほ○よい)にしてみた。
それを確認した常葉くんは、ゴミを見るような目で私を見下ろしたので本当は気づいてそうだけど知らないフリをしている。
旺くんと別れた翌日、常葉くんと飲みに行った時に私はある失態を聞かされたのだ。
『穂波さん、これ以上飲んだら寝ますよ、多分』
ビールとレモンサワーを飲み終えると何故かストップを入れられ、疑問を抱く私に常葉くんが聞かせてくれた一言だ。
1人で一升瓶を余裕で開ける私に何を言う、と。しかし、確かに意識が先程よりもぼんやりしているのも否めない事実。
だから、素直に『なんで?』と、問いただした。
『あの日もチューハイ三本くらいで酔ってたんで』
熱燗も飲みたくても飲めないからって自分に飲ませたのだと、彼は告げたのだ。
……何たる失態。
きっと、旺くんと付き合っていた半年、ほぼ一滴もアルコールを摂取しなかったから弱くなったのだろう。
『何で我慢なんかしてたんですか』
立ち飲みスタイルのバルで、ジントニック片手の常葉くんはこの小一時間ほぼ呆れ顔だ。私の恋愛遍歴もとい黒歴史がかなり堪えているのだろう。
遂には『妹と話している気分です。いま』と、そんな小言さえ聞かせてくれたけど、だから面倒見良いのね、とか、妹も可愛いのかな、とか、そんな情報の方にしか私の脳は反応しない。
汗をかいて、最早氷の方が多いレモンサワーを大事そうに飲みながら、はぁ、とため息を落とす。
『だって旺くん、飲めない人が好きって言うから…』
『はぁ…で?』
『会社の飲み会の時は幹事に回る事ばかりで、その時は全く飲んでいなかったから勝手にお酒ダメな子って思われてたみたいで……』
本当は、帰って1人で晩酌してるって言うのに、そう言われたらダメなふりをするしかないって、旺くんにしがみつきたい私は必死で繕っていた。
付き合っていた時は恋心が勝って気付かなかったけど、無理していた分随分とストレスと疲れが溜まっていたみたい。
反動で常葉くんにボロボロさらけだしてしまっているけれど、今更取り繕っても仕方が無い。諦めよう。
常葉くんは、休日は買い物にも付き合ってくれた。荷物が多いだろうって、車を出してくれたのだ。
……もちろん、タダでは出してくれなかったけれど。
『はい、これ』
と、急に車の鍵を渡されて、意味が分からない私は首を傾げる。
『車貸しますよ、荷物多くなるでしょ』
ほぼペーパードライバーの私が人様の車など運転できるはずもない。
『出来れば運転手も頼みます……』
頼み込むと案の定面倒そうな顔をして、腰を持ち上げてくれた。
『何だかデートみたいですね』
『帰ります』
『すみません!黙ります!』
常葉くんは絶対にセダンに乗ってるイメージだったのに、意外と四駆に乗っていた。
『あの、言っていいですか』
『……』
『私、四駆派です』
『死ぬほどどうでもいいですね』
『ですよね、黙ります』
『前はセダンだったから、また替えようかな』
『四駆のままで頼みます…!!』
常葉くんのマンションはコンビニもスーパーも入っているので、買い物帰りに二人で寄るとすっかりデート脳の私は『何だか』と言いかけたのに『黙れ』とすぐ様お叱りが入ったので素直に黙った。
何だか扱いが格段に雑だ。もはやご主人様とペットみたい。
随分と彼の前では楽に居させてもらっている。
やっぱり女として見られていないのか、毒舌にも慣れてきた。
お風呂上がりでようやく待ちに待った晩酌タイム。冷蔵庫からチューハイ片手に常葉くんがいるソファーのその隣に腰掛けて、プシュ、と気持ちのいい音を立てて缶を開ける。
「ふぁ、生きてる……!」
「おやじくさ」
「ふふ、何とでも言ってください」
「女子力ありませんね」
そう言って、常葉くんはテレビ台の下にあるステンのカゴからブランケットを1枚取り出し膝に掛けてくれた。
「どうも」と、少しだけ上機嫌の私はぐびぐびとジュースみたいにチューハイを喉に流し込む。
実際、ぶどうジュースみたいだ。これならもう一本くらい飲んでも良くない?私今日も残業頑張ったし。
常葉くんは既にお風呂上がりから時間が経過していて、私とは違うタイプのお酒を片手にタブレット端末を操作している。
彼のパーマヘアは天然の物らしい。一度聞いたら嫌そうに教えてくれた。
柔らかそうな髪質をぼんやりと見ていても彼の視線は一向に私に注がれる事は無いし、私もそれは望まない。
なので、何となく手元を見れば数学的なグラフが目に飛び込むので、思わず「あ」とそれを覗き込む。やはり、思った通りだったのでそのまま目線を上にあげる。
「市場調査ですか?」
「……まぁ、そうですね」
「この会社、最近株価も安定してますし、良いですよね」
頷きながら数値を見ていれば、常葉くんは画面を暗くしてため息をひとつ。
「あんたは市場調査じゃなくて男の調査したらどうですか」
なんて辛辣な言葉を吐き出すので、うつったため息は常葉くんのよりも大きなものが出た。
飲みに行った時に話した理想の男性像。
私には年上が合うっていっちゃんにアドバイスを受けてから年上の人とお付き合いをしてきたけど、旺くんも2つ歳上だったのに半年でお別れしたので、今度は3歳以上年上の人と付き合うって勝手に決めている。
あとは浮気癖なくて、素の私を受け入れてくれる人。