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放課後の西日が、草川家のリビングを柔らかく橙色に染めていた。
「たくやぁ、お腹すいた……」
リビングのソファに深く腰掛け、スマホを眺めていた超特急のタクヤの隣に、ドサッと倒れ込む影があった。ONE N’ ONLYのNAOYAだ。仕事帰りの疲労感を全身から漂わせながら、直弥は迷わずタクヤの膝元に頭を預けてきた。
「お前さ、帰ってくるなりそれかよ。靴下脱いでちゃんと部屋片付けろっていつも言ってるだろ」
タクヤは呆れたような声を出しつつも、目線はスマホに向けたままだ。しかし、NAOYAが膝の上でゴロゴロと体勢を変え、タクヤの裾をぎゅっと掴んでくると、ため息をひとつ吐いてスマホをテーブルに置いた。
「今日、ダンスリハーサルがめちゃくちゃハードだったの。足もパンパンだし、頭も使ったから甘いもの食べないと動けないー」
「甘いものなら冷蔵庫にプリンあったろ」
「あれ、タクヤが昨日買ったやつでしょ? 勝手に食べたら怒るじゃん」
NAOYAはタクヤの顔を下から覗き込むようにして、少し上目遣いで言った。外でのNAOYAといえば、しっかり者でグループを引っ張る頼もしい存在だが、家の中で、しかも兄であるタクヤの前では完全に甘えモード全開の弟に変わる。
「……半分やるから、持ってきて食べろよ」
「タクヤが取ってきて」
「なんで俺が動かなきゃいけないんだよ!」
言いながらも、タクヤはNAOYAの頭を軽くポンと叩くと、ゆっくり立ち上がった。NAOYAは満足そうにソファに寝転がり、タクヤの後ろ姿を笑顔で見つめている。
キッチンから戻ってきたタクヤは、ふたつのお皿に分けたプリンとスプーンをテーブルに置いた。NAOYAはすぐに体を起こし、タクヤの隣にぴったりと体を寄せて座る。
「はい、どうぞ」
「ありがと、たくや」
ふたり並んでプリンを口に運ぶ。静かなリビングに、スプーンが皿に当たる小さな音だけが響いた。
「ねえたくや、最近の超特急のライブ見たよ。あの曲のたくやのダンス、すごく良かった」
「……別に普通だろ」
タクヤは照れくさそうに顔を背けたが、NAOYAには兄が少し嬉しがっているのがすぐに分かった。自分と同じアーティストという道を選び、切磋琢磨し合いながらも、一番近くで自分を支えてくれる存在。
食べ終えると、NAOYAは再びタクヤの肩に頭を預けた。
「またすぐツアー始まるから忙しくなるなぁ……」
「お互い様だろ。体調崩すなよ」
「たくやがたまにこうやって甘やかしてくれたら頑張れる」
「誰が甘やかしたんだよ」
タクヤはそうツッコミを入れつつも、肩にかかるNAOYAの重みを払いのけることはしなかった。外ではそれぞれのグループで輝くプロとして走り続けるふたりだが、この温かいリビングの中だけは、変わらない兄弟のままだ。
夕闇が静かに迫る中、草川家のリビングには、穏やかで優しい時間が流れていた。
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