第一話:新しい光と出会い
夜、紗夜はいつものように灯台に登り、小さなランタンをそっと灯す。波の音と潮風が静かに寄せる中、彼女の目にはどこか決意めいた光が宿っている。彼女の腕には、小さな古い写真が包まれており、それは父との思い出の断片だ。
それから数日後、港町にやってきた若い画家・蓮が、灯台のすぐそばにある小屋を借りる。彼は初めてこの町を訪れたわけではなく、過去に幾つかの場所を転々としてきたらしい。記憶の一部が抜け落ちており、自分の過去を探して絵を描いている。
紗夜は夜の灯台で偶然彼に出会い、ランタンの明かりに導かれるように話しかけてくる。蓮はその静かな習慣に興味を持ち、なぜ彼女が毎晩あの場所で灯りをともすのかを尋ねる。紗夜は少し戸惑いながらも、「父さんが帰ってくるかもしれないから」と言葉を濁す。
その後、二人は星空を見上げながら、互いのことを少しずつ明かし合う。蓮は自分が絵を描く理由、そして記憶喪失について触れ、紗夜は父との思い出を話すきっかけを探す。ラストで、蓮がスケッチブックを取り出し、灯台のシルエットを静かに描き始める。その筆跡には、ただの建物以上の “何か” が感じられる。