第二話:波紋とスケッチ
翌朝、蓮はアトリエ兼小屋で絵を描き始める。スケッチブックには、紗夜が灯台で掲げていたランタン、その淡い光、そして背後に広がる星空が描かれている。その絵を描く彼の手つきは慎重で、光と闇を行き来させるような微妙なタッチだ。
紗夜は昼間、彼の小屋を訪れ、絵を覗き込む。蓮は恥ずかしそうに見せながらも、自分の描きたいものを語り出す。「夜の海。光。その奥にある記憶を掴みたいんだ」と。紗夜は静かに頷き、自分の父の話を少しずつ語り始める。
彼女の話には切ない思い出が混じっている。幼い頃、父と見た星空、父が見せてくれた灯台の明かり、そしてある日を境にその明かりが遠くなった記憶。紗夜は写真やお守りを取り出し、父との最後の時間を思い出そうとする。
その夜、蓮は紗夜の話を胸に、夜道を歩きながら構想を練る。彼はランタンの中の光と影、紗夜の感情をキャンバスに落とし込む絵の構図を頭に描き、「光を灯す人」と「待つ人」の関係性をテーマに据えようと思い始める。