コメント
2件
gkty gktu
不穏かも
この話は、剣持刀也が16歳になるまでの話。
(gk視点)
出会いは刀也さんが5歳の時、俺が居た神社での事。お昼辺りの時刻。
「おやぁ?見かけない顔だ」
そう思った。辺りを見回すと親らしき人はいなくて、迷子というのも頭をよぎった。それは違ったらしい。
『………』
からんからん
お賽銭、五円玉を入れて本坪鈴を鳴らした。
『おねがい、叶いますように』
ぽつりとそう呟き神社の木の陰に寝っ転がると、絵本を読み始めた。まぁ、最終的には寝てしまったんだけれども。
「なんだ、この子、」
第一印象なんてこんなものだった。謎の行動とあの発言が気になった。
日が沈みはじめて、空が橙色に染まっていく。
「起きないなぁ、、」
少年はというと、まだ寝ている。すよすよと寝息をたててこの状態をどうしようか考える。
夕方になる前にはもう帰したかった。木を揺らして音をたててみたり、姿とかが見えないようにして身体を揺さぶってみたりもした。子どもは特に、そういう存在に気づきやすい。親が来る気配も無い。
「仕方ないのかなぁ、」
「ねぇ、起きなよぉ、」
溜め息をつきながらも願った。
『きつねさん?』
やってしまった。咄嗟に木の後ろに隠れた。
「……キツネジャナイヨ」
『え〜?』
『んふふ、しっぽ見えちゃってるよ』
「ふぇっ?!」
これまたやらかした。もうバレているけれども、そろ〜っと出るとあと十数センチで触れるくらいの位置に彼が居た。
『やっぱりきつねさんだ』
「あのぉ、この事は俺と君だけの秘密ね?」
『なんで?』
「じゃないと俺、怒られちゃうから、」
「ねっ?頼む!」
この願いが叶わないのなら俺はもう終わってしまう。果たして少年はなんと言うだろうか。
『そっかぁ』
『うん!いいよ』
「ほんとか!良かったぁ、」
ひとまずは安心した。彼を信じてこの事がバレないようにするしかない。
『じゃあさぁ、』
『ひみつのまんまにしてあげるから』
『明日も会ってくれる?』
「え!?っと、まじですか、」
『おねがい、きつねさん』
真剣な目で頼まれると断れない。それも小さな子どもからだ。
「うぐっ、」
「、、分かったっす」
『ほんと!!じゃあまた明日もね!』
(明日も)という言葉を残して彼は走って消えてった。
その翌日、言った通りに彼はやってきた。昨日と同じ時間帯で。
『きつねさんってさ、名前なに?』
「俺?…今は教えられないかな」
『今はって、いつ教えてくれるの?』
「君が大きくなった時かな」
今はまだ、教えられない。子どもに名を名乗る事はあまり良いことでは無い。思ってもみなくても呪いのようになってしまう可能性があるから。
『すぐ大きくなるもん!そして、かっこよくなるんだもん!』
「ひひっ」
「君の名前は?」
『ぼく?とうや!』
『けんもちとうや!』
「とうやさんって言うのかー、ってあれ」
今の今までここに居た彼が居ない
『きつねさーん!!』
声のする方へ目をやると、木の枝にぶら下がっている彼がいた。
「わ゛ー!!」
「何してるんすかとやさん!」
『ふへへ、降りれなくなっちゃった、』
「これじゃあまるで猫っすね、」
こんな感じで、彼とはやりとりをしていた。流石に毎日ってほどでもない。彼の家の事情というものだってあった。でも、暇さえあれば彼は走って神社まで来た。俺は、そんなとうやさんを気に入ってたし、神社の裏に引きこもらなくなった。
ここまではとうやさんが小学生までの話。
中学生の夏休み辺りに、ぱったり来なくなった。
ぱったり来なくなった理由なんて幾らでもあったが、俺自身に寂しいという感情が出てきてしまう。とうやさんは俺に初めて友達のように接してくれて、人間の色んなことを教えてくれた。たまにヒヤッとさせられるけどそれもまた楽しかった。
俺のこと、忘れちゃうのかな。
そんなの、絶対嫌だ。
続く