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続き
(gk視点)
あの感情がなんだったのかとかは置いといて、俺はどうやったら刀也さんが俺を忘れないで、いなくならないで居られるのか調べた。沢山、沢山。
それには多くの時間を使ったし、神社の仕事と両立しなきゃいけないので大変だった。
「できた、かもしれない」
人である者の時をとめるという所謂不老になる術的なものだ。実行するにあたってデメリットもある。本人の同意な事と、不死ではない事。現代ではこの術は禁止されている。使う神力だって少なくは無いしやってしまえば勿論罰が下される。
覚悟なんて最初からある。また俺のもとに現れてくれないかと来る日も来る日も彼を想った。
『…きつねさん、?だっけ、』
この言葉が聞こえたのはある年の夏の日。暑くて社内にいたので空耳かとも思ってた。
「っ、刀也さん!!」
声を張り上げながら外に出ると、嗚呼、やっぱり空耳なんかじゃなかった。
待ち侘びていた人は何処か落ち着きのない様子で賽銭箱の前に立っていた。
「俺のこと、まだ見えてる?」
深呼吸してそう言った。
『だ、誰?』
当たり前だけど、この反応は少し気持ちが下がる。動揺してぐるりと辺りを見回している彼を見て、やっぱり見えてないのだなと思った。
見えてないだけの事が凄いと思う。そもそも俺のような存在が見えるのは純粋な者のみ。子どもでさえも少ない。俺にとっては珍しくもない事だが避けるべき存在。刀也さんはまさに純真無垢の塊だ。
「狐だよ。きつねさん」
『きつねさん、!僕きつねさんに会いたくて!』
「でも見えないでしょ?」
『……』
「ちょっと触るね」
後ろから操るように手を動かすと
『わっ!動いた!』
と魔法がかけられたかの様な顔をしている刀也さん。身体は成長していても心の中に子どもらしさが残っているようだった。
「これをこうして、レンズにして、後ろを覗いてみて」
『これで?…』
少し不安そうな顔をして覗いた片目と目が合った。
『きつね、さん?』
「久しぶり。刀也さん」
『なんか、大きくなった?』
「変わってないよ。」
『あと、人だったっけ?』
「ううん。俺みたいなのはさ、」
ぼふっと、アニメのような感じで煙の様なものが出るように
「こんな風に簡単に化けられるの」
「まぁ、個体によってはできるまでが簡単じゃなかったりするんだけどね」
ぼふっ
「俺にとってはこっちの方が本来の姿なの」
『そう、』
「…ぺらぺらとこっち側の事話しちゃったし、刀也さんの事も聞かせて」
「さっき俺に会いたくてって言ってたよね?中に入って。たくさん聞きたい」
『……はい』
話を聞けば、刀也さんは高一になっていたと。俺的に制服はよく似合っていたし、大人へと近づいている顔立ちをしていた。再来月の四月に二年生になるみたい。
「それで?俺に会いたかった理由は?」
『特にないです、』
「?それはまたどういう事」
『まあまあ、理由とかはどうでもいいんです。』
「俺がどうでもいいとか無いの」
『…どうせ分かってくれやしませんよ』
そう言ったあと、そっぽを向いて足元の石を蹴り飛ばした。
「きっと分かるよ」
どうせという言葉を聞く限り多分、誰かには相談した事のあるか、はたまた一人で抱え込んでしまっているからなのか。今は敢えて彼の方を見ないようにして、俺はそう声に出した。
少し間を空けて彼はまた話し始めた。
簡単に言うと、楽しいことが楽しめなくなったり、人間関係に対して不安を感じていたり、何処か生きずらさを抱えてるとの事。
神社に関しては忙しくなった事で行けなくなり、ふと思い出してまたやってきたという事を聞かされた。
『ちなみに言いますけどね』
『きつねさんの存在もちゃんと僕の記憶の中にありますよ』
そう言って人差し指を頭の方に向けた。寂しかったと思っていた事が彼に筒抜けになってしまっていたのか、心配そうな目でにっこりと微笑んだ。
「また逢えて嬉しいです。刀也さん」
返す言葉なんてそれくらいしか無い。何度も何度も辛い日があったけど、きっとこの日が来る事を分かっていたからなのかもしれない。
『僕も。』
『明日、多分来ます…またね』
赤らめた顔を隠すようにスクールバッグをひょいと取って手を振ってもくれずに帰り道を辿っていった。
「あ、」
「あれは明日でいっか」
事実は変わらない。約束も変えない。
またね。刀也さん。
続く
こちらも更新させて頂きます。大変長くお待たせしました。