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第65話<誰かを好きになる気持ち>〜茂side〜1

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2024年02月04日

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バカだな、場の空気よりも大切なものがあるのにオレは失って初めて気がついた。



物心ついた時から、家庭は居心地の悪い場所だった。会話のない両親を見て何故、結婚をしたのか?結婚を継続しているのか?小学生の頃はどの家も両親とはそういうものだと思っていた。ところが、友人の家に泊まりに行った日の夜、友人の両親と弟と妹の6人で食事をした。

たくさんの話題に笑いながら食事をする姿に衝撃を受けた。

オレが遊びに来ているからかと思ったが、それは普通のことだと言われた。

家では父はオレに時々話をかけてくる。そして、母はオレにしか話をしない。二人の顔色を伺って空気を読んでなんとか自分の居場所を作っていた。


だから、周りの空気を読んで場を和ませることで自分の居場所を作っていたから家にいるよりも学校にいる方が安心できた。


誰にでも優しく場を読むことで勘違いされる事が多く、中学に入ると女子から告白をされるようになり、断って空気を悪くしたく無くてよほどの事が無ければ付き合った。


そんな彼女も暫くすると、付き合う前と違ったと言って離れていく。

彼女がオレに対して勝手に想像して自分の理想を押し付けている癖に付き合ってから変わったと言われた。


高校に入ると付き合うという意味合いが変わっていき身体の関係が絡んでくるようになった。

告白されて付き合って、エッチをして暫くすると彼女は去っていくの繰り返しだった。


「愛してる?」

としつこく聞かれるが、そもそも愛なんて知らないし答えようが無かった。


家庭内には無いものだったから。


両親それぞれには“愛”はあったのかも知れない。

ただそれが、“オレ”の家庭内ではなかった。高校に入った頃には両親にはそれぞれ相手がいたから。


ある日母が「息子が大学を卒業するまでは離婚はできない、あと少し我慢する」と誰かと電話で話をしているのを聞いてしまった。


すでに家族として破綻しているのに家族の形を維持するのはオレのせいだと言わんばかりの言葉に家族ごっこをしている二人に対して嫌悪した。


家にいたくなくて大学は家からは通えない場所を選択すると、それまで家族の形をかろうじて保つための箱である”家”には誰も帰ることが無くった。

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