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「・・・って言ってもぉ、ここじゃあ休む場所としてはあんまり良くないんだよねぇ、ねぇ主人ちゃん、どっかいい場所知らなぁい?」
クスリが抜けてないのか、悪魔のように柔らかな声で物体は私に聞いてきた。
「・・・下の階に行けば暖炉があるわ。」
「へぇ〜、それじゃあ下の階に行こう〜!」
ナハハハハと変わった笑い声をあげながら一番に突き進む物体を見て、私は不思議と物体を止めることはしなかった。
下の階の暖炉に着けば、弱い物体は体を丸めて縮こまっていた。正直、一番迷惑だった。邪魔で邪魔で殺したくなった。
髪を乱暴に掴んで顔が原型を留めなくなるまで殴って歯を折って指を切り落として中の器官を全部引きずり出して最後には目を抉って放置して、蛆虫が湧くのをこの目で見てやりたかった。
「いや〜ごめんね〜主人ちゃん」
少し離れたところで座っていた私に、ヤク中の物体が小声で話しかけてきた。
「・・・別に。」
「それでさぁ、主人ちゃん、俺、聞こうか迷ってたんだけどさぁ・・・」
「主人ちゃんってぇ、いつからここにいるの?」
冷ややかな目で見つめられて、思わず震えた声が出そうになった、逃げたかった。けど、それを許さないというかのように物体は腰に手をまわしてきていて、逃げ場はないと悟った。
「ホントにここって変だよねぇ。ほら、真衣ちゃんも言ってたじゃん?早くここから出してぇ、って。あれ、俺ら皆そう思ってるんだよ。だってここぉ、入れるくせに出口が見つからないんだもん。ねぇ、主人ちゃん。」
ここってぇ、なんなの?
「・・・場所を変えたいわ。」
「んふ、んふふ。俺ぇ、主人ちゃんみたいな子好きだよぉ。だからぁ、許してあげる。」
そう言って物体は立つと、暖炉近くにいる物体たちに少し席を外すと言えば、物体たちは興味もないのか、あぁ、そう。というだけで何も触れてくることはなく、今だけはそれを恨めしく思った。
「それじゃぁ、主人ちゃん。行こっか?」
甘い声に胸焼けがしそうだった。
なるべく暖炉があった場所の近くの部屋を選び、そこに入る。
「それでぇ?ここはなんなの?」
「・・・ここは、此処は、私のためだけにつくられた、私のための場所なの。私を閉じ込めておく場所なのよ、此処は。だからきっと・・・」
きっと、貴方たち、死んじゃうわ。
「ふぅ〜ん?じゃあ俺ら皆死んじゃうんだ。」
「えぇ、そうね。十中八九、死ぬわ。」
ふぅ〜ん、と気の抜けた声で再びそう言うと、物体はガサゴソと服の中を漁り、太い葉巻を吸うと、アハハと笑いながら息を吐き出した。ああ、こいつ、これでキマっていたのか、そう思っていると物体はもう一度深く吸うと、顔をこちらに近づけてた。
驚いて後ろに下がろうとすると顔を掴まれ、そのまま唇を重ねられた。そのまま舌をねじ込まれる。物体の口に溜まっていた空気が私を毒す。嫌だ、嫌だ!嫌だ!!
しばらくの間は嫌悪感で顔を顰めていたが、段々と意識がふわふわとしてきた。チカチカと目眩がする。世界が歪む。苦しい、気持ちいい、気持ち悪い、気分がいい。
力が抜けてしまったのか、崩れ落ちそうになる私を、物体は笑顔で支えながら、悪魔のような笑みを浮かべていた。いや、もしかするとコイツは人と呼ぶにも値しない、かといって悪魔と呼ぶにも軽すぎる、悪魔の皮を被ったバケモノなのかもしれない。
「ふぅ〜、んふ、んふふふふ。あはははは!どお?楽しくなってきたでしょ?うんうん、分かる、分かるよ。良い気分になるでしょ。」
部屋に私とコイツが吸っているものと同じ匂いが充満する。床に、壁に、天井に、椅子に、机に、すべてにこの匂いが染み付く。
「大丈夫、俺は主人ちゃんのこと大好きだから、俺は主人ちゃんのこと赦してあげる。だから主人ちゃん、俺と契約しよっか。アハッ、してくれるの?嬉しいなぁ。それじゃあ、こういうのはど〜ぉ?」
「俺は主人ちゃんを裏切らないしぃ、側にいてあげる。アイツラが邪魔になったら殺してあげるぅ、その代わりぃ、主人ちゃんも一緒にぃ」
笑ったり真顔になったりで、忙しい奴。
ふわふわした頭の中で、それだけを思い続けた。