「あのー、とんでもないことに巻き込まれるってどんな脅しですか?」
「脅しでもなくただの事実じゃな」
「その根拠は?」
「お主が手に入れた『ダンジョン生成【Lv1】』というものじゃな」
「確かにこのスキルはとんでもないけど、それが事件に巻き込まれるとは……。 」
「まぁ、少しワシの昔話でもしよう。」
十数年前ワシの暮らす村は突如戦火に襲われ、滅びることとなった。何故ワシの暮らす村が戦火に襲われることとなったのか。それは、この村に伝わる魔法『ダンジョン生成』の存在を知り、その脅威と優位性に目を付けた人と魔族のお偉いさんによる政略の礎となった為だ。
ダンジョン生成という魔法が作られた意図はワシにも分からない。しかし、それが争いの火種になる理由はわかる。何故ならダンジョン生成は避難所になり得るからだ。中の魔物達はこの魔法を所持してる者に攻撃はせず、練度によっては特定の人物にのみ中の魔物を襲わせるようにさえ出来たのだ。リスクはほぼゼロで簡単に戦力を増やすことができる。
さらにここを狩場とすれば装備品だって新調できる。ノーリスクハイリターンという言葉がお似合いなほどとんでもない魔法なのだ。故にその魔法は村人みな覚えても使用することは一切なかった。それでは、生きとし生けるもののありがたみを忘れてしまう。それを恐れたから魔法自体は継承してもそれを使用することは誰ひとりとしてせず、村の外でその魔法の存在を匂わすことさえしてこなかった。だがしかし、ワシらのご先祖さまは一度この力を外の世界に見せていた。
古い書物の中からこの村の事がバレてそして村人はみなそういった私利私欲の国や権力者達に利用され、遂にはなくなってしまった。この魔法はこうして失われたはずじゃったが、幸か不幸かお主はスキルという形で再度この力を現世に呼び戻してしまった。そしてあろうことかお主はその力を今こうして使ったのじゃ。しかもわしら『ダンジョン生成』を使っていた村の跡地でな
「というわけでお主がこれから狙われるようになるわけだ。」
「つまりこれから俺は苦労する道に進むことになると?」
「うむ。まぁわしが最大限サポートしてやるから安心せい。そのためにまずはダンジョンを強化してわしらさまよう魂が永住できるフロアを作り出してくれ。」
「なんか難しいこと言ってくるんですけど……」
「やることはいたってシンプルじゃお主がダンジョンに潜って練度を上げるんじゃよ。」
「このダンジョンって創造主も等しく襲われるの?」
「基本はそんなことないが、今は状況が状況だからな。自作自演になるがお主が潜ってダンジョンとしての質を上げるんじゃ。」
「俺別に特別強くないんですけど……」
「そんなもん見たらわかるわ!あんたが貧弱なのも込みでダンジョンに潜ってもらうんじゃよ。」
「えぇ……。」
「これを使いこなせばたった一人で小国と遣り合えるくらいにはなるんだからのぉ?」
「そんな過剰戦力はいらないけど、そうだなぁ。これうまく利用して金儲けには使おうかな。」
「お主もきったない大人じゃな?」
「俺は楽して生きてたいんだ。その過程で害なすなら仕方ない。爺さんの言う通りダンジョン強化もしてやるよ。」
「自衛のために強化は必須じゃからな?油断してると大国に狙われてあんたの人生設計ぐちゃぐちゃになるからガチで気を付けたほうがいいぞ?」
「じゃあ仕方ない。一旦爺さんの言うこと聞くか……」
「それじゃあ早速じゃが今作ったダンジョンに潜るぞい。」
中の造りはよく見る石煉瓦で結構がっちりしてる。石もかなり綺麗でダンジョンっていうにはちょっと雰囲気が足りてない感じがする。明かりは松明が等間隔に壁に掛けられておりその辺は比較的親切だなと思ったり思わなかったり。このダンジョンはどっちかというと人工的に作られた迷路で敵国の兵士を惑わすための撃退要素ていう感想しか出ないな。そんなことを考えていると爺さんが語り掛けてきた。
「時にお前さん。ダンジョンについてはどのくらいの知識があるかの?」
「俺が知ってるのは適度に魔物がいて宝箱があって罠があるうまく利用すれば安定した生活が送れる便利な装置の一つって認識だな。」
「なるほど……。お主の話したそのダンジョンはいわゆるスタンダードダンジョンじゃな。」
「その言い方だとダンジョンっていくつか種類があるのか?」
「大きく分けて四種類のダンジョンじゃな。まずはお主が今話したダンジョン、これはスタンダードダンジョンと言われて世界中でよく見かけるダンジョンは基本これじゃな。次に罠が多くあり魔物が少なく宝箱から手に入る道具は比較的上物が手に入るダンジョンがトラップダンジョン。」
「それうま味ってあるのか?」
「まぁその辺はあとでまとめて詳しく話してやるから今はそんなダンジョンがあるのかと思うくらいでいいぞ。で、三つめは罠が少なく魔物だらけで宝箱もほどほどにあるダンジョンがモンスターハウスと言われるダンジョンじゃ。最後に魔物が極端に少なく罠もほとんどない宝箱も少ないが手に入るものは極上の物が多く出るチャレンジダンジョンと言われておる。これが主に世界で見られるダンジョンの種類じゃな。」
「そんなにあるんだなダンジョンって……。」
「で、これからダンジョンを育てるんだがそのダンジョンの育て方で今言った四種のでどれになるかが決まるという話じゃな」
「なんとなく理解したが、それよりも前にその各種ダンジョンについて詳しく教えてくれよ。」
「それじゃあちょっと長くなるが心して聞くんじゃよ?」
まず、スタンダードダンジョンはさっきも話した通り魔物も宝箱も罠もすべてがバランスの取れてるダンジョンで人造なものもあれば自然に発生したものも存在するのじゃが、それらすべてに共通するのは『攻略難度の高さ』がちょうどよく設定されている点にある。ただしこれは特定の範囲での話になり、ある一定の範囲から出るとまた攻略難度が変わっているということ。まぁこの辺の話はダンジョンの種類から外れるので一旦保留にするぞ。で、その攻略難度が一定というのも相まって狩場が一つ見つかるとそこを起点にダンジョン探しが始まりそこでお宝を手に入れたり腕試しをする輩が出たりとするわけじゃな。主にこれが理由でわしらが狙われる理由だとわしは推察している。
さて、では次は罠だらけのトラップダンジョンについてだがこれに関しては一般人にはうま味はほとんどない。というのも普通の冒険者は罠解除の術を持ってることが無いからである。仮に数人で組んでいてもわざわざ少数行動で罠技師なんて連れ歩く人はそう相違ないはずじゃ。いるならばそれこそこのダンジョン攻略で生計立ててるやつぐらいじゃろうからな。というわけで基本このダンジョンは好まれない。もちろん得られる報酬で言えばスタンダードダンジョンで手に入る希少な素材や道具がコロコロと入ってるがリスクとリターンが合ってないためトラップダンジョンと分かれば回れ右して皆出ていく冒険者からは好まれないダンジョンになる。
次はもう名前からして危険な香りしかしないモンスターハウスというダンジョンについてじゃが、これはもう名前の通りで魔物がうじゃうじゃいるとんでもないダンジョンでまぁ好まれないのじゃが、さっき話した通り腕試しでダンジョンに潜る輩も少なくはない。そういう奴らにとっては他のダンジョンよりも輝いて見えるな。あとはそれなりの実力者がさらに高みを目指すために使うこともあれば、このモンスターハウスに出てくくる魔物は普通ではあまりお目にかかれない魔物が生息しているからそいつらの素材を刈り取って冒険の資金に当てたりしてるらしいな。
では最後に紹介するダンジョンはチャレンジダンジョンというダンジョンでこれは本格的に腕に自信があるものしか訪れることのないダンジョンとなっておる。先ほどのモンスターハウスとは比べることのできない魔物がたった数体出てくるんじゃがそれらすべてがその土地にあっていない強さ、または規格外の強さという。言葉では伝わらないお主のために感覚的に伝えるならそうじゃなぁ……。スライムしか出てこない平原に突如サイクロプスが一匹投下されるみたいなやばさじゃな。このダンジョンに関しては人工的には作れないじゃろう。あとでその理由も話すが、今のところ見つかっているのと攻略されたダンジョンすべて含めてもすべては自然発生した物しかない。少なくともわしが生きていた時まではすべてそうだったからな。なのでそんなダンジョンは作れないから話半分にこれは聞いてくれてもかまわない。あくまでこんなのもあるぞという知識としてな。
「……。と、長くなったが各ダンジョンについてはこんなもんじゃ。何か不明点はあるか?」
「種類に関しては特にないよ。」
「では、次に『ダンジョン生成』によるダンジョンを作る時のコツというかを教えてやる。」
「よ、よろしくお願いします?」
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