この作品はいかがでしたか?
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翌週、地縛霊と暮らすのにも慣れてきた頃。
昼食後の紅茶を飲みながら、こんな提案をしてみることにした。
「ねぇ、カルヴァリー。」
「んー?」
「私今日出かけるんだけど、一緒に行かない?」
「お、引きこもりにしては珍しい。」
「はっ倒すぞ。」
ちょうど暇を持て余していたので、この前アスカの言っていた居候とやらを見に行こうと思う。
「あー、そうだな。やりたい事もあるし、ついて行く。」
「なら、少し待ってて。準備してくる。」
カップに残る紅茶を飲み干し、荷物の準備をした。
準備ができると、カルヴァリーが後ろを着いてきていることを確認し、家を出る。
***
昼頃の街はよく賑わっていた。
果物屋の店主の呼び込みの声、子供たちの楽しそうな声。
少し前までは人が多い上、うるさいので気が滅入りそうだったけど、案外悪くはないのかもしれない。
月一で街にやってくる骨董屋も、思ったよりいい品揃えだった。
先週の私とは比べ物にならないほど、私の心は落ち着いていて、穏やかだった。
「外の世界って、案外悪くないだろ?」
「…そう、かもね。」
たまには散歩をするのも良いかもしれない。骨董屋も、また今度見に来よう。
そんなことを思いながら道なりに歩いていくと、大きなお屋敷が見えてくる。
ここらではちょっとした観光スポットになっているらしい、ルシフェル家のお屋敷だ。
黒い屋根に、ワイン色の壁、高くそびえ立つ時計塔、どこを取ってもこの街1番。
そこに住むのが、アスカ・ルシフェル。
ルシフェル家の一人娘で、両親が海外出張中は国内の営業を任されているらしい。
どんな商売をしているかは不明。見たところ、違法なものでは無さそうだ。
アスカにいくら尋ねても、それだけは教えてくれなかった。
意地の悪い笑みで、「企業秘密よ」と返されるだけ。
「おいちょっと待てよ、目的地ってここか?
あのルシフェル家の屋敷? 嘘だろ。」
「ちょっとした腐れ縁よ。大丈夫、許可は取ってるし。」
まだ何か言いたげなカルヴァリーをよそに、裏口へと回る。
裏口にある、これまた雅な扉を開けると、壁と同じワイン色をした部屋に出た。
「あら、トウカじゃない。何か用?」
ちょうどアフタヌーンティーを楽しんでいたアスカが、こちらに目を向けて尋ねた。
「暇だったから、噂の居候を見に。」
そう答えると、食事を中断したアスカが、部屋へと案内してくれる。
「それにしても、トウカ。随分変なもの連れて歩いてるじゃない。どこで拾ったの?」
「拾った、というか…元から家にいたの。
地縛霊ですって。」
「へぇ…。」
階段を登って最上階の3回へと向かう。
本当はもっと階があるらしいのだが、そこに行くにはまた別の階段を上る必要があるらしい。
玄関を通ってすぐの、目立つ階段で行けるのは3階までなのだと、アスカは言っていた。
「はい、この部屋よ。」
案内されたのは、図書室だった。
部屋を開けた瞬間に漂う古紙の匂い、目に入る山と積まれた本の数々。
いつ見ても、この部屋は綺麗だ。
「確か…あの部屋にいるはずよ。」
奥の方にある、小さな扉を指さした。
「確か? 貴方でも知らないの?」
「普段は出てこないの。一応寝室も用意したのだけれど、まだ使ってるのを見たことないわ。」
「え、それ生きてるの?」
「知らない。」
興味なさげにそう言ったアスカは、アスカはそそくさと下の階に戻ってしまう。
「出てこないって、死んでるんじゃないのか?」
今まで一言も話さなかったカルヴァリーが、どこからが出てきた。
それに関しては私も同感。死んでるでしょ、それ。
「とにかく、行ってみる他ないでしょ? さ、行きましょ。」
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