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後悔と懺悔を
まちニキ
二人の別れ話
ニキ視点
「私たち別れよっか」
眉間に皺を寄せて苦味を潰したような表情を浮かべ、到底別れたいとは思えない彼女に俺は別れを告げられた。どうして、そう思うのも問いかけるのもきっと至極真っ当な反応。別れよう、そう言われたのには何か理由が絶対あるはずで、彼女にとって何でもない、で済まされるほど遊びの恋愛をしていたつもりなんて一切ない。だけれども彼女は、「ニキニキは悪くない。私が悪いの」と主張をするだけ。理由を知らなければ俺は別れる義理がない。教えてくれ、そう言った。
「ごめんね…」
そうやって一方的に謝って、走り去っていく彼女の背中は孤独で、どこか不安げ。なのに彼女の輪郭線をはっきりと捉えてしまって、それが彼女との記憶を忘れられない一つの暗示のような気がした。徐々に見えなくなっていく彼女の輪郭はぼんやりとしてきて、この関係に終止符を打てると感じ、後ろを振り向いた。見慣れた景色が広がっているはずの俺の視界は不自然に歪み、ぼやけていた。
俺は泣いているんだ
と、そこでようやく気がついた。彼女との日々はどこか可笑しくて、互いに一方的で、たまにすれ違って、対立して、それでいて何不自由ない生活だった。そんな生活が思っていた以上にかけがえのない思い出になっていたのだと、考えれば考えるだけ伝え切れなかった想いが溢れて、もう彼女とはもとの関係には戻れない喪失感が俺を飲み込む。行く当てもないこの感情を、吐露してしまいたいほどの苦悩を俺はどうすればいいのか、と自分勝手な思想が心底嫌で嫌で仕方がない。
「なにが、いけなかったのかなぁ…」
先程まで晴れていた空は翳り、冷たい風が頬を撫でる。なんだか俺の心情に酷似した天気に更に気が滅入ってしまって、今はもう聞けやしない決別の理由を時間を忘れるほど探し、俺はこれからも迷い続けるのだろう。
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眼福
しろニキ
しろせんせー視点
「ボビー…たすけてぇ…」
両手を一括りに紫色のリボンでキツく縛られた様子の彼がそう言った。何故そうなっているのか問えば、朝起きたらそうなっていたらしい。勿論俺は何もしていない。よくあるご都合ってやつ。
「おい無視すんな、助けろ」
「は?」
助けて欲しいくせに図々しく物申されて、思わず声が漏れた。折角助けようと思ったのだが、そんな気持ちは消え去る。彼をじっくりと見ればやはり俺色のリボンが目に入る。彼を俺のもの、と視覚的に分かるのが眼福だ。そう思いながら彼の方に向かう。彼を壁まで追いやって、グイッと縛られた両手を彼の頭の上に固定させる。
「…ぼ、ぼびー?」
据え膳食わぬは男の恥。そうだろ?ニキ
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ネクタイ
りちょニキ
リーマンパロ
ネクタイが結べないと泣きつくりぃちょのネクタイを結ぶニキくんとそれを見ているしろせんせー
しろせんせー視点
「ニキニキ結んでぇ」
「おまえさ…笑」
ピンク色の無地のネクタイを手に持ち、ニキに泣きつくクソガキことりぃちょとそれに呆れながらも慣れた手つきでネクタイを結ぶニキ。万年夫婦かよ、とツッコミたいこのやり取りももう何度目かも分からない程に見慣れた光景だ。
「…はい、できたよ」
「おっ!ニキニキありがとー!!」
そう言いながら颯爽と俺らの部署から出ていった。俺の隣の席のニキは「あいつまじで…」と小声でいい加減自分で結んで欲しそうな溜息を漏らしていた。だが、心底嫌がっている訳ではなさそうだ。
翌日。満員電車で精神も体もすり減りながらも出勤し、自席まで歩けば普段居るはずのニキがおらず不思議に思っていた。そんなタイミングで運良くりぃちょが通りかかったので、ニキの行方を聞いたところ今日は休みらしい。
「…あ”?なんでお前ネクタイ結べとんの?」
「えっ?」
何か違和感のあるりぃちょをじっと観察すれば、普段ニキに結んでもらうために朝は付けていないネクタイが結んであった。しかも結構綺麗。
「あ、そっか。せんせー俺がネクタイ結べるの知らないよね」
「自分で出来んのかいな」
別に証拠が欲しい訳では無いがりぃちょに疑いの目を向けていれば、見る?と勝手にネクタイを解き、俺の目の前でネクタイを綺麗に結んだ。どうやら本当に自分でネクタイを結べるらしい。
「やったら毎朝自分で結べや」
「えー?やだよ。ニキニキと触れ合えなくなっちゃうじゃん」
「言い方がきっしょいのぉ」
俺の返答に少し笑い、一息ついた後「あ、せんせーニキニキには絶対言わないでよ」と鋭い視線で釘を刺された。軽い口ぶりなのに殺気に近い視線を浴びせられ、体が強ばる。本気でバレたくないんだろうな、と思う。クソガキのくせに生意気だが、まさかニキに構ってもらう口実として俺すらも騙していただなんてとんでもなく恐ろしい奴だ。自分でネクタイを結べるりぃちょに少し感心しつつ、これ以上りぃちょを舐め腐るのは辞めようと心から思った。
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無防備
はちニキ
18号視点
「流石に無防備過ぎじゃない?」
女研メンバーでの旅行一日目の夜。一人ずつ各部屋を取り、寝床に着こうとしていたタイミングでの愛しい恋人からの訪問を快く受け入れたところで言われた一言。
「ニキニキだからだよ」
私だってそこまで馬鹿じゃない。愛しい恋人なのだから受け入れない訳がない。
「…っ、」
私の言葉に彼は欲情を孕んだ瞳に変わる。こんな言葉だけで興奮するほど単純で、その単純さを持ち合わせているのに撮影では強気なのがなんとも哀れで愛おしさが込み上げてくる。
「ふふ、自分だけがその気だと思った?」
「なっ、…まっ、まって、じゅうはち…」
私が寝るであろうベッドに彼を押し倒す。どこまでもヘタレで初心な彼は自分からこんな事はしない。先程の欲情が嘘のように待って、と焦り、真っ赤な林檎のように染まった顔をして照れている彼との距離をぐんぐんと縮める。普段首元を隠しているジャージを羽織って居ない彼はどこもかしこも無防備で、目の前の彼の首元目掛けて口を大きく開ける。
「ぃ”ッッ?!」
彼の首元を強く噛めばあまりの痛みに彼は声を上げる。そんなのお構い無しに反対側の首元、項、肩、腕…至る所に噛み跡を付ければ、羞恥心で埋め尽くされた彼は目元に涙を浮かべ、下唇を噛み締めていた。普段はあんなにも強気で私を揶揄ってくるのに、今は私の手のひらの上で転がされてる。
「じゅうはちの、いじわる…」
自分で蒔いた種に恥じらって、本当に無防備なのはどっちだか。そんな事を思いながら初心な恋人への悪戯を辞めるつもりは無く、まだ夜は長いことを彼に教えてあげようと思う。
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眠り姫
キャメニキ
クライネ・レビン症候群持ちのニキくんと社会人キャメさん
キャメロン視点
「おかえり」
「……え、あ…、え?ニキくん起きてたの…?」
朝見た時にはぐっすりと眠っていた彼が起きていて、あまりの衝撃に通勤鞄を床に落としてしまった。”おかえり”だなんて一人暮らしをしてから家族に言われる事もなくなり、普段帰ってきても寝たきりの彼に言われる筈もない生活。そんな生活が当たり前と化してしまった俺は驚きが隠せなかった。
「起きたなら連絡してって言ってるじゃん…」
「さっき起きたから良いかなって」
「ニキくんと話せるの滅多にないんだからさ」
彼はクライネ・レビン症候群だ。世間では眠れる森の美女症候群とも言われるらしい。数日どころか数ヶ月も寝てしまう時があるほどの深い深い眠りについてしまう睡眠障害の一種。正確に把握している訳ではないが俺が彼と話すのもおよそ三ヶ月ぶりとかではないだろうか。お寝坊さんにも程がある。
「せんせーとかりぃちょくんとは話さなくて大丈夫?」
「んー……まぁ、今回はいいかな」
そんなこんなで久方ぶりに目覚めた彼と食事をしたり、ドライヤーで髪を乾かし合ったりしながら溜まりに溜まった三ヶ月分の話題を繰り広げる。俺の会社での話、彼の見た夢の話、他愛もないそんな話に笑い笑われ、気がつけば日を跨いでいた。思ったよりも時間が経つのは早くて、彼には眠気が襲ってきている様だった。寝ようか、と彼に問いかければ大人しく従ってくれる。布団に入るやいなや彼は嬉しそうに微笑んで、来週中には起きると俺に宣言した。その理由を問えば、どうやら今日の俺の話で皆とも話したくなったらしい。そのためにも頑張る、と意気込む彼は可愛らしく、俺まで笑顔になる。やんわりと笑う彼はこのまま寝落ちしてしまいそうな程の眠気がやってきているようで彼のお腹に手を当てて、軽く叩くと彼の瞼が徐々に降りてきていた。
「おやすみニキくん」
「うん、また…ね…きゃめ……」
底知れぬ眠りに付いた彼が次に起きる日を楽しみに明日の仕事に励むだろう。
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吐露
しろニキ
5月18日は言葉の日
女研メンバーで飲みに来てる前提
しろせんせー視点
「ぼびー、」
純粋無垢な笑顔をした相棒に名前を呼ばれた。ほんのり赤らんだ頬を見ればきっと酔ってしまったのだろうと知る。俺の隣に座って、下から覗き込むような体制で彼は甘えてくる。赤みを帯びた肌、潤んだ瞳での上目遣い、ジャージの隙間から見えたキスマーク、全てが愛らしくて、かわええと声に出していた。俺の言葉にくすくすと笑いながら、首を赤らめる。
「ぼびーおれね、ぼびーのことがだいすき」
上目遣い、満面の笑み、甘ったるい声色、呂律の回っていない喋り方、少し赤い頬…止まることの知らない彼の色っぽさに一度区切りをつける。そして、冷静に状況を飲み込む。それに時間がかかり、フリーズしたと彼からは受け取られてしまい揶揄われる。
「なぁ、ニキ」
「なぁにぼびー」
「いつまで酔ったフリしとんの」
「っぇ、なん、で…」
やはり、彼は酔っていないようだ。
「ずっと見とったもん、そんくらい分かんで」
「……む、ぅ」
勿論彼が酔っていないという根拠はきちんとある。間違いなくお酒は飲んでいたが、別に酔っ払うほど飲んでいなかったのも、数十分前にはりぃちょと馬鹿騒ぎしていたのも、全て見ている。
「ちょ、ぼび…ゃ、だ…」
ジャージのジッパーを彼の胸あたりまで開ける。顕になった首元辺りに顔を近づけて、口付けをし、キスマークを量産する。チラリと横目でメンバーの方を見れば、「ねぇキャメさんあれ見て」と弄りたそうな顔をした白髪と、えぇ、と俺がここで盛り始めたことにドン引きしている赤髪、少し冷ややかな視線を送る茶髪がこちらを見ていた。
「ここか、俺ん家かどっちがええ?」
「……ぼびーんち」
「そ、なら帰ろおか」
嫌だ、そう言うから選択肢を与えてあげた。もう襲うことは確定してしまっているのだから、今夜は帰すつもりなんて一切ない。俺の家に来ると決まれば、二人分の金を机に置いて、店を出る準備をする。うわ、なんて顔をしながらこちらを見る白髪を余所目にそそくさと店から出る。隣に居る黒髪に言われた先程の言葉を嫌ってほど倍で返してやろうと心に決めた。