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二人っきりでの初めてのデートは映画館。 彼女の見たいと言っていた少女漫画原作の映画を観ることにした。
白いブラウス、フワフワとピンクのプリーツスカートの裾を風に靡かせながらやって来た彼女はそれこそ少女漫画に出てきそうなヒロインのように可憐で一瞬で視線を奪われる。
「お久しぶりです」
「ふふ、今日は宜しくお願いします」
二人の会話は何処となくぎこちなくて、それでもそのぎこちなさが、こそばゆくて歯痒くて、楽しい。
映画館。
隣に座っている彼女。
肩がぶつかりそうな距離。
ふと横を見れば食い入るように映画に集中している彼女の凛とした横顔と真剣な眼差し。
俺一人が舞い上がっているようで恥ずかしくなって、大きなスクリーンに視線を戻した。
「あ〜もうすっごく感動しちゃいましたっ!」
映画館近くのカフェに入り彼女はオレンジジュース、俺はアイスコーヒーを頼んだ。前回のお見合いの時はミルクティーを頼んでいたことを思い出した。
(甘いものが好きなのかな……)
映画の感想をキラキラと輝いた瞳で語る彼女はなんだか生き生きしていて、口数も多く、映画が好きなんだなぁ、と思った。
そんな彼女の話を聞いていて、キラキラとした彼女を見て、俺はつい口から気持ちがこぼれてしまったかのように言葉にしていた。
「美桜さん、結婚してください」
「え……」
なんのムードもへったくれもない場面で口からこぼれてしまった言葉に自分自身が焦ってしまった。
「す、すいません! こんな急にプロポーズとか困りますよね! 指輪だって用意してねぇし、いや、まず告白もしてないのに、あぁ、本当にすいません、気にしないでください!!!」
穴があったら入りたいと言う言葉は俺の為にあるんじゃないかと思うくらい恥ずかしくて彼女の前から隠れたくなった。
何やってんだ俺……と落ち込んでいた俺に彼女はボソッと口を開いた。
「……クなんです」
彼女の声が小さすぎて聞き取れず、「え?」と聞き返してしまった。
「私……お、オタクなんです! それでも私と結婚できますか?」
……オタク?
オタクってあの光る棒をもってダンスとかするあのオタク?
それともコスプレとかするオタク?
コスプレ……それもそれで可愛いかも……
「俺は全く気にしませんよ」
「……本当に?」
「はい、本当です」
「……あの、先程のプロポーズ喜んでお受けします」
耳まで赤く染め上げた顔を俯かせ、チラリとこちらの様子を確認するそぶりはあざとい、としか言いようがないくらい、可愛くて、オタクだろうと何だろうと俺は彼女に惹かれている事は確かだ。
交際0日婚。トントン拍子に結婚話が進みお互いのお互いの親に二人揃って報告しにいくと彼女の両親は大喜び、俺の父親も大喜び、ちなみに母は小さい頃に病気で他界し、姉は仕事が多忙な為殆ど実家には帰ってこない。
彼女はもし自分が結婚出来るのならジューンブライドに憧れていたらしく、「子供っぽい憧れですいません」なんて恥ずかしそうに俯いて言うもんだから可愛くて、彼女の凄く乙女チックな一面を知れて嬉しくなった。
六月十八日の大安日に婚姻届 を区役所に持って行くことに決めた。