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俺と勇斗は、いわゆる幼なじみだった。
小学校から同じで、勇斗が声を掛けてくれたのをきっかけに仲良くなった。
昔は毎日一緒に遊び呆けるくらいには仲良しだったし、一番の親友とも思っていた。
秘密基地を作ってはそこに通っていたし、親同士もそこそこ仲が良かったからお互いの家で遊ぶこともあった。
なんとなく距離を感じ始めたのは、中学から。
向こうはサッカー部に入って、毎日遅くまで練習していた。
一方の俺は帰宅部で、放課後は家で趣味に没頭していた。
作る友達も変わっていった。本当に特別大きなきっかけがあったわけじゃなくて、こんな些細なことで徐々に距離を取って、いつの間にか会話も全く無くなった。
親からは「最近勇斗くんの話題が出ないね」とか、「勇斗くんと喧嘩しちゃったの?」って言われることも多かった。それでも俺は親に何も返さなかったから、察した親は勇斗の話題も出さなくなった。
そんなこんなで、勇斗との仲を修復しないまま中学を卒業した。
きっと進学先も違うだろうから本当に関わりは無くなるんだろうな。そんなことを思いながら門をくぐった高校一年生の春。教室の扉を開けたらそこにはまさかの人物がいた。
(なんで…)
勇斗は既に新しいクラスメイトと仲良くなっていて、俺はもう他人なんだと思い込むようにして、自分の席に座った。
あの時の気持ちは、嫌だとか、気まずいとか、そんなものじゃなかった。
むしろ、また同じ場所にいられることが、少しだけ嬉しかった。
正直に言うと、俺は勇斗に恋をしていたんだと思う。
ずっと一緒にいたからだとか、気づけば隣にいるのが当たり前だったからだとか。たぶん、そんな曖昧な始まりだった。
でも、そんな感じだからもう諦めたけど。
『おーい、仁人?』
しばらく返答をしない俺に、勇斗は不思議そうに俺を見つめた。
「あ、えっと、花火ね。いいと思う。」
思わずぎこちない返事を取ってしまう。笑顔で取り繕って、自分の感情をなんとか抑え込んだ。
『ほんと?じゃあ決まりな!』
本当に、昔と変わらない笑い方だった。
ただそれだけなのに、胸の奥が嫌になるくらい騒がしくなる。
やっぱり、無理だ。
諦めたつもりだったのに。
いや……諦めたんだ。
胸のざわつきを掻き消すみたいに、蝉が鳴いていた。