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自分からレッド・サークルを出てきたミスティと、レッド・サークルを追われたアリコ。放浪ワオキツネザルの暮らしは思っている以上に大変なものです。
レッド・サークルの右の縄張りにはライトブルー・サークルという縄張りがおり、メスの頭数は五匹に保たれおり、少なめなわりには強い縄張りで、マダガスカル南部の川沿いに集まる縄張りの中で二、三番目に大きい縄張りに発展していきました。ライトブルー・サークルのメスたちはみんな強靭で凶暴。だからこんなに発展してきたのですが、一番大きいのはレッド・サークルです。
そのレッド・サークルとライトブルー・サークルの狭間や、縄張りにわずかに侵入して食べ物にありついていました。入っては追い出されを繰り返してきた二匹たち。八回ほどそれを繰り返し、ついに、大きな決断を起こします。
あの時の喧嘩で切れ込みが入った右耳はアリコのチャームポイントとなりました。
明け方。
子どもたちは大きくなると何処かへ消え去り、たった二匹となった二匹はレッド・サークルの縄張りの中を我が物顔で歩き回っていました。
レッド・サークルのワオキツネザルたちはどこから見ているのか、二匹が縄張りに侵入すると五分も経たないうちに現れ、特攻隊のように攻めてくるのですが、今回はいつになっても現れる気配がありません。
二匹は仲良くユーカリの花を食べています。そしてお腹がいっぱいになった頃、移動を始めました。最後まで、レッド・サークルのメスたちは現れませんでした。
二匹が続いて向かったのはライトブルー・サークルの縄張り内。ライトブルー・サークルの端の辺りは隠れる場所が多く、縄張り争いや暑い日、寒い日の見回りなどに多いに役立ってくれるのです。
二匹はそこで乾期のはじめになり、ちらちらと光り輝く太陽から身を隠そうとライトブルー・サークルの縄張り内に生えている大きく丈夫で葉がたくさん生い茂っているユーカリの木に悠々と登った。そしてのんびりと昼寝をした。いつもはこの時間帯、ここのあたりにいることがほとんどのライトブルー・サークルのメスたちは離れたところにいて、こちらをちらりと見つめてきますが手を出そうとはしてきません。しかも、そこそこ離れた一定の距離で保たれています。
実は二匹は、争いを起こしたのです。レッド・サークルとライトブルー・サークルと争って、ついに縄張りを手にしたのです。
アリコとミスティが頑張って手に入れた縄張り。名前は、イエロー・サークルとなりました。
イエロー・サークルができて三年。イエロー・サークルに見慣れたワオキツネザルがやってきました。
ボロボロで傷だらけ。うっすらと血がにじんでいるところもちらほらあり、一対一でやられたようにはとても見えませんでした。そのワオキツネザルの足取りは重く、結構な痛手を負ったようです。
そのワオキツネザルが近づいてくるにつれ、二匹の予想は、予想から確信に行きました。
ファッ、ファッ
二匹は長い尻尾を揺さぶります。なぜなら、
近づいてきたワオキツネザルは、あのラシュアだったのです。
偉そうにしてアリコを追い出したラシュアは見るも無惨な姿でした。もう二匹と戦う体力は残っていないように見えます。それを見極め、二匹はそろそろと近づいていきました。
ペロ
ミスティが一瞬、一回だけラシュアの傷口を舐めた。やはり心から信頼はできないようですが、一応仲間とは認めたようでした。
やがて、ミスティ、アリコ、ラシュアは妊娠し、出産しました。どの子も元気で、ちゃんと育ちました。
アリコの子はオスで、名前はタジ。ミスティの子もメスで、名前はファーフィ。ラシュアの子もメスで名前はサフランです。これで、イエロー・サークルにはメンバーが六匹になりました。
子どもたちのち離れが済みそうな乾季の終わり。レッド・サークルにいた時にあった、あのことがまざまざと頭に浮かびます。