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하오를 모르는 마음
- hanbin side -
目が覚めたとき、
最初に見えたのは天井の白。
機械の音と、消毒液の匂い。
少し遅れて、
「事故」という言葉が頭に浮かんだ。
スタッフが言う。
「二週間休んでいた」
「でも、すぐ戻れる」
――戻れる。
その言葉が妙に心に引っかかった。
戻るって、どこに?
誰のもとに?
練習室の空気、
ステージの光、
仲間の笑顔。
全部が映像のように浮かんでくるのに、
そこに“ひとりだけ”影が抜け落ちていた。
でも、その“空白”に気づけなかった。
いや、気づいていたのかもしれない。
胸の奥のあたりが、
時々、ひどく痛む。
理由もなく息が詰まる。
誰かの名前を呼びそうになる。
でも、
その“誰か”が誰なのか、
どうしても掴めない。
鏡を見る。
練習室で一人、汗を流す。
ダンスの形は覚えているのに、
どこか、違う。
右を向いた瞬間、
自然と隣を探してしまう。
そこに居るはずの“影”がない。
そのことに気づくたび、
理由もなく胸が締めつけられる。
「…누구지.(誰なんだ)」
声が震えた。
言葉にしてはいけない気がした。
でも言わずにはいられなかった。
忘れたくなかったのに、
きっと“その誰か”を。
夜、ベッドに横たわっていると、
時々夢を見る。
音楽が流れて、
鏡の前で並ぶ二人の影。
笑い声。
タオルを差し出す手。
そのたび、
目が覚めた瞬間、涙が流れている。
理由はわからない。
だけど、心のどこかでわかっている。
――俺は、大切な人を忘れた。
――その人は、まだ俺の中で呼び続けている。
「…미안해.(ごめん。)」
誰に向けた言葉かもわからず、
静かな部屋でそう呟いた。
病室の白い光が、
あんなに冷たく見えたのは初めてだった。
ハンビンが戻ってくる日。
スタッフが「もう大丈夫らしい」と笑っていた。
チームメンバーも喜んでいた。
自分も笑わなきゃと思った。
“良かった”って言わなきゃいけないのに。
どうしてか、声が出なかった。
ハンビンがドアの向こうに立っていた。
以前と同じように優しい目をして、
同じように挨拶して、
同じように笑っていた。
ただ――
その笑顔の中に、
自分だけがいなかった。
「모두, 오랜만..(みんな、久しぶり)」
名前を呼ばれなかった。
心のどこかが崩れる音がした。
いつもは何かとあれば「はおひょん 」って呼んでくれていたのに。
今は仲間の名前しか覚えていない。仲間の名前しか呼んでくれない。
僕の名前は。 ーー
そう言いかけたけど、あの人はこっちに目を遣らないし、見てもくれない。忘れられたのかな。
「…응, 오랜만.(うん、久しぶり)」
なんとかみんなに便乗して、話したり笑ってみたけど、
唇の端が震えていた。
彼の瞳には、何も映っていなかった。
前みたいに、
ダンスの後で目が合って笑い合うような――
あの“繋がり”が、
まるで最初からなかったみたいに。
みんなが談笑する中、
ハンビンは誰にでも平等に優しくしていた。
その優しさが痛かった。
どうして自分だけが“知らない人”みたいなんだろう。
彼が笑うたびに、
自分の中の何かが少しずつ壊れていく。
「괜찮아.(大丈夫)」
そう呟くたびに、
心が遠ざかっていく。
夜、宿舎に戻って
ハンビンと練習した時の動画を開く。
画面の中の彼は、
確かに自分を見ていた。
同じリズムで踊って、
同じように笑っていた。
でも今の彼は――
もう、あの目をしない。
「하빈아, 왜… 나만 몰라.(ハンビン、どうして…僕だけ覚えてないの)」
声にならない言葉が、
静かな部屋の中に消えていった。
画面の中の“過去の彼”が、
自分を見つめて笑っている。
それが、
もう二度と戻らないものだと気づいた瞬間、
涙が頬を伝って落ちた。
毎日 2個以上更新中^_^
自分の小説誰も見てくれてなくて泣く。