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玄関に出ると、ドアの向こうには悠真が立っていた。
「おはよう。亮、いる?」
落ち着いた声。
けれど咲の鼓動は一気に早まる。
「……あ、はい。中にいます」
言葉が少しぎこちなくなる。
悠真は気づいていないのか、いつもの穏やかな笑みを浮かべて靴を脱いだ。
「昨日のカレー、美味しかったな。また作ってくれ」
「っ……そ、そんな……」
思い出すのは、昨日の「咲ちゃん」という呼び方。
その記憶がよみがえって、まともに顔が見られなかった。
ほんの数秒のやりとりなのに、咲には一日の始まりを揺さぶる出来事に思えた。