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空っぽになったまま、 ここに居続けるつもりか?……お前は何のために生まれてきた?……いつまでそこにいるつもりなんだ? ここには誰もいないぞ……。
それに、ここへ来る道だってわからないはずだ。……どうして、こんなところにいる?……ここは、どこだ?……私は誰なんだ?…………?…………!……そうだ、思い出したぞ!……私は……あぁっ!?……頭が痛いっ……うぅっ……ぐわあああっ!!……。
はっと我に返った時、彼はそこにいた。……そこは暗く、寒かった。
自分がどこにいるのか、すぐにはわからなかった。
しばらくしてようやく、かすかに記憶がよみがえってきた。
(……僕は確か、あの時死んだはずだ)
少年の思考は混乱し始めていた。
(……ここはどこなんだ?)
暗闇の中で彼は考える。
(そもそも、僕は何をしていたんだったっけ?)
彼の頭の中には霞がかかったように、記憶の一部が欠落しており、思い出そうとするたびに強い頭痛が襲ってくる。
(痛ッ!)
思わず声が出そうになるが、なぜか不思議と声を出すことはできなかった。
(なぜこんなにも頭が痛いんだろう?……そうだ、思い出せないなら考えなければいいじゃないか)
彼は無理矢理に自分の疑問を押し込め、 再びペンを走らせ始めた。
この先にあるものを確かめるために。……。…………。………………。……………………。………………………………。
そして……
すべての謎を解く鍵となるであろう最後の一枚をめくった時、 彼の手は再び止まった。
そこにあったものは、 想像を絶するほど異様なものだったのだ。
「……なんだこれ?」
それは、真っ黒に染まっていた。
インクを落としたように塗りつぶされていたのだ。
紙全体に広がった漆黒の染み。
そしてその上に書かれた文字。
かろうじて読める程度の、黒い滲みのような字だった。
“私の望み”……それだけしか書かれていなかった。
他のページと同じように。
しかし、ただひとつだけ違っているところがあった。
他はすべて白紙だったが、たった一ヶ所、 裏返しになっていた箇所だけは違ったのだ。……そこにあったのは、”空白”だけだった。
全ての文字が、きれいさっぱり消えていた。……。…………。………………。
彼が呆然としていたその時、背後で物音が聞こえた。
振り向いた瞬間、彼もまた固まってしまった。
そこに立っていたのは、あの少女だったからだ。
相変わらず、表情のない顔つきで立っている。
だが、今回は今までとは違う雰囲気をまとっていた。
「……あの」
思わず声をかけたが、返事はない。
少女は無言のまま近づいてきた。
表情のない顔でこちらを見つめると、 そのまま目の前を通り過ぎていく。……すれ違いざまに聞こえたのは、 少女の声だったように思う。……どうせ誰も来ないしね。
あなたも好きにしていいよ。……わたしはただの飾りだから。……別に構わないけどさ。
あなたの話って退屈だし。……どうすれば良いかわかんなくなるし。……じゃあね。
少女はそのまま歩き去っていく。……あれは本当に、少女だったのだろうか? いつの間にか現れた少女……
そして、突然の別れ……。
少女が去った後に残るのは、 無機質な沈黙だけ……。
ここには、きっと意味があるはずだ。
でなければ、これほどまでに深い孤独はない。
だが、どれだけ探っても答えは出ない。
ここにいる者たちは、本当に生きていると言えるのだろうか……? こんなにも、空っぽなんだ。……ここは、いったいどこなんだろう? 私は、なぜここにいるんだろうか?……あの塔は何を意味している? この先にあるものは……? どうして私は、この場所を知っている?……わからないことが多すぎる。
まるで霧の中にいるみたいだ。
だが、ひとつだけわかることがある。
それは……私が、まだ終わっていないということだ。
たとえ、この身が朽ち果てようとも、 私はまだ……存在しているのだ。
ならば、私は進むしかないだろう。……どうやら、ここで行き止まりらしい。
これ以上先は進めそうもない。
それでも……諦めずに歩き続けた。
やがてたどり着いた場所は……
巨大な歯車が幾重にも重なり合う、 機械仕掛けの装置だった。
複雑な回路図のような紋様……
無数の文字盤と針。
その奥底に隠されたものは、 あまりに複雑すぎて理解ができない。
おそらく、これは人の手で造られたものではないだろう。
だが、明らかに何らかの意図をもって作られたものだ。
おそらくは、あの塔を作った者たちと同じように……。……ただ、それだけのことさ。
私は、私自身のことをよく知っている。……私が生み出したものなんだからね。
そうだ。私の中にあったモノ。
それを形にしただけに過ぎないんだよ。
だから、私にとっては、あれらはすべて我が子であり……
同時に、敵でもあるのかもしれない。……どうにも、複雑な心境だよ。
君だって、そういう経験はあるんじゃないかな?……自分のことなんて、自分以上にわからないもんだし。
特に君は、他人の感情に敏感だしね。……もっとも、それは君の優しさでもあり、弱さだとも言えるけど。
優しいことは悪いことではないよ。
むしろ素晴らしい資質だと私は思うけれどね。
それに……
弱いということは、必ずしも欠点ではないはずだ。
人は皆、弱くて当たり前じゃないか。
そもそも完璧である必要などどこにもない。
だからこそ、私たちはこうして生きているわけだろう?……なら、悩む必要はないんじゃないのかな。
大切なのは、自分がどうしたいかという気持ちだと思うよ。……少なくとも、私はそれで救われたんだから。
まあ、あんまり難しく考えすぎないことだよ。……そっちの方が、かえって楽になれることもあると思うし。……ほら、また眉間にシワが寄ってるぞ。
たまには息抜きすることも覚えなさいな。……うん。やっぱり笑った顔が一番いいよ