この作品はいかがでしたか?
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……ああ、これなら分かるぞ! きっと、あれに違いない。
彼女が探していたものは……
「ここ」にあったのだ。
そうしてまたひとつ……
世界の断片が組み変わる……。
ここはどこなんだろう……? 暗くて寒い場所……。
凍った床に、冷たい水が流れこんできて……
わたしの周りだけ、氷に覆われてしまったみたい……。
息ができないよ……。
ねえ、どうしてこんなことになっちゃったのかな……? 助けてくれる人は誰もいないし……
このままだと死んじゃうよね。
やっぱり、あの時死んでしまった方がよかったのかもしれないね。
そしたら、苦しい思いもしなかっただろうし……
痛かったり寒かったりすることもないもん。
あのままの方が幸せだったかもって思うけど……結局、全部なかったことにしちゃったら、 もっと後悔しそうだなって思ったのよね。……だから、いいわ。これで。
きっと、これからだってずっと一緒よ。……たとえどんなことがあってもね。
わたしたちは、あなたたちとは違うんです! あの時の言葉の意味が、やっとわかったわ。
だから、わたしも一緒に行く。
それで……みんなと一緒に戦うの。……お願いします! わたしたちも連れていってくれませんか!?……えっ?……どうして? なんで、こんなことになっちゃうのかなぁ……?……ごめんなさい。
やっぱりダメみたいです。……さようなら。
「どうしよう……」
「大丈夫だよ」
「でも、このままじゃ、みんなが大変なことになるかもしれないんだよ?」
「うん、わかっている。それでも、今は耐えよう」
「どうして……?」
疑問とともに、声にならない呟きが漏れる。
それは……
「……あなたたちは、いったい何を考えているんですか!?」
だが、それを口に出すことはできなかった。
その言葉を口にしてしまえば、 今まで積み上げてきたモノが崩れてしまいそうな気がしたからだ。
だから私は、口をつぐんだままでいたのだけれど……。
それでも私の問いに答えるように、無数の羽音が聞こえてくる……。
「私はね……」
「ただ知りたいだけなんだ」
「あなたは何のためにここにいる?」
「ねえ、教えてくれないか?」
「ここはどこなんだい?」
「ここはあなたのための世界じゃないよ」
「あなたはいつまでそこにいるつもり?」
「それは違うよ」
「本当はわかっているはずだよね?」
「忘れちゃったかな? この場所のこと」
「ここはまだ終わってなんかいないんだよ」
「さあ、思い出してごらん」
「ほら、聞こえるでしょう?」
「まだ終わっちゃいないってことが……」
「終わらせたくないなら、早く目を覚まさないとね……」……ああ、また幻聴か……。
少女の声……
記憶に残るあの時と同じ声……。
ここはどこなんだ……? なぜ私はこんなところにいる……? そして、彼女は一体……? あそこに見えるものは……? あれは何を意味しているのだろう……。……わからないことだらけだ。
思考がまとまらない。
ここは本当に現実なんだろうか? どうにも落ち着かないな……。
それにしても、ここはひどく寒い場所だね。
どうやらこの場所にも、 また別の目的があったようだ。
ここには、多くの者が眠っている。
それもおそらくは、 あまりいい意味ではない形で……。
この結晶からは、 死のイメージが伝わってくるよ。
死の瞬間を永遠に引き延ばすための装置……。
それが、この結晶の正体らしい。
だが、ここにある者たちは皆、 自ら望んで眠りについたようにみえる。
少なくとも私は、そうだと信じたい。
だが、もしもそうでないとしたなら……
彼らの苦しみを終わらせるためにも、 私のような者の果たすべき責任というものが、あるのではないかと思うのだ。……ここに眠る者たちのほとんどは、 何らかの病によって生を奪われたようだ。
中には、すでに息絶えた後の遺体もある。
そして、その多くは若い娘たちばかりだ。……おそらくはこの者たちが、 この街の異変の原因なのだと思われる。
私がここで目にしたものが真実ならば、 彼女たちはもはや助かるまい。
だが、それでもせめてひとつだけ……
わかっていることがあるとすれば……。
それは……おそらく、この場所こそが……
「あの子」にとっての安息の地なのだということ。
ここは、あの娘のための場所なんだ……。
だからこそ、こんなにも空っぽで……。
だから、「あの子」にとってはここが楽園だった……。……だが、それも今は昔だ。
この結晶が最後に見せたものは、ただそれだけだった。
「あの子」はすでに、ここにはいないのだ……。……ここにいるべきなのは……あるいは……わたしたちなのか……?
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