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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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その後、私たちはピエールさんの用意した馬車で街の中を移動した。

街の中心部から離れる方向へ30分も揺られていくと、『ピエール商会』という看板が掲げられた広い場所が見えてきた。


結構な数の人があちこちにいて、荷物を運んだり、商いや取引をしているようだ。


「……おお、ここがピエールさんの本拠地ですか」


「いえいえ、ここは単なる流通の中継地点の1つでゴザイマス」


「え? つまり、ここだけじゃないってことですか……。凄いですね……」


「お褒め頂き、ありがとうゴザイマス。

それでは奴隷の斡旋はあちらの建物にナリマスので、もうしばらくこのままでお願いイタシマス」



さらに5分ほど馬車に揺られたあと、馬車から降りて、近くの建物に連れられていく。

『奴隷の斡旋』とは言うものの、その建物はそれなりに綺麗な見た目をしていた。


そして奥の部屋に通されると、そこには大人の男女と子供の男女が1人ずつ、合計4人が座っていた。


「アイナ様、こちらが今回ご紹介するエイムズ家の皆さまデス。

エイムズ家の皆さま、こちらがお話していたアイナ・バートランド・クリスティア様でゴザイマス」


ピエールさんからの紹介に続き、私も自己紹介をする。


「はじめまして、アイナと申します」


「本日はお目通りの機会を頂きまして、誠にありがとうございます!

私はハーマン、そして妻のダフニー、子供のダリルとララでございます」


ハーマンさんがそう言うと、他の三人もお辞儀をした。

うん、なかなか感じの良さそうな人たちじゃないかな?


「ハーマンさんは庭木職人をされておりマシテ、一通りの仕事は問題なく行うことがデキマス。

特に問題が無ければ、このまま契約へと進ませて頂きマスガ――」


「……コホッ」


話の途中、ダフニーさんが軽く咳をした。


「そういえば、ダフニーさんってご病気なんでしたっけ?」


「は、はい! ですが今は小康状態を保っておりまして……っ!!」


私の言葉に反応したのはハーマンさんだった。


……あれ、ずいぶんと焦ってる?

それに、他の三人も急に恐縮した感じになっちゃったけど……。


「アイナ様。問題があるようデシタラ、他の奴隷にいたしマスカナ?」


ピエールさんの言葉に、ダリル君とララちゃんがダフニーさんのスカートを心配そうに掴んだ。

……ああ、なるほど。病気を理由に、契約できないことを恐れたのか。


「あ、いえいえ。軽い気持ちで聞いただけですよ!」


そう言いながら、ダフニーさんを鑑定してみる。


──────────────────

【状態異常】

呼吸器障害(中)

血流不全(小)

──────────────────


ふむ、初めて見るものかな?


えーっと、『創造才覚<錬金術>』……っと。


……んー、これならいけそうだ。

せっかくのご縁だし、ちゃちゃっと治してあげよう。


れんきーんっ。


バチッ バチッ


「ほわっ!?

アイナ様、こちらの瓶は何でゴザイマスかな?」


突然私の手元に現れた2つの瓶を見て、ピエールさんが驚いた。


「私、アイテムボックス持ちなんですよ。

ちょうどダフニーさんに効きそうなお薬がありましたので、出してみました」


「ほぉ……。

さすが、有名な錬金術師サマでゴザイマス」


「というわけで、もしよろしければ飲んでみてください」


そう言いながら、ダフニーさんに瓶を2つ渡す。

ダフニーさんは、ハーマンさんと心配そうに目線を交わしていた。


「あの……、アイナ様……。

私共は、薬代をお支払いする余裕がありませんので……」


おずおずと言うハーマンさん。

そう言えば、薬代を払うために借金をしていたんだっけ。


「無料で良いですよ。これからお世話になりますので」


「な、なんと……? ありがとうございます。

それでは後ほど……」


「あ、結果が気になるのでここで飲んじゃってください」


「え、結果?」


……ん? 何かおかしいことを言ったかな?


「あなた……。

せっかくのお申し出ですので、ここで頂くことにしますね」


「そ、そうか……?」


心配そうなハーマンさんを横目に、ダフニーさんは2つの薬を両方飲み干した。


それじゃ、かんてーっ。


──────────────────

【状態異常】

なし

──────────────────


……うん、ばっちり!


「はい、治りましたのでもう大丈夫です。

それでは契約をお願いしますね」


「は……?」

「……おかーさん、治ったの?」

「……もうだいじょうぶなの?」


私の言葉に、不思議そうに声を出すエイムズ家の三人。

ダフニーさんは自身の胸を押さえながら、そして少し深呼吸をしてから――


「……うそ? 苦しいのが、取れました……」


ぼそっとつぶやいた。


「ふむ、エイムズ家の皆さま。こちらのアイナ様は、S-級の錬金術師なのでゴザイマス。

世界の最高峰の、貴重な薬を頂けマシタナ」


さり気なく、私のことをアピールしてくるピエールさん。

実際のところ、こういう展開も可能性としては読んでいたのでは……?


「おお……。実力のある錬金術師様とは伺っていましたが、まさかそこまでの方だったなんて……。

ありがとうございます!! ありがとうございます!!」


「アイナ様……。この病気、一生治らないものと思っておりました……。

このご恩に報いるためにも、精一杯働かせて頂きます……!」


「はい、よろしくお願いしますね」


うん、やっぱり感謝されるというのは気持ちの良いものだね。

でも、それにしても――


「ところで、今まではどういう薬を買っていたのですか?」


「あ、はい……。

錬金術では効果のある薬を作れないと言われてしまったので、霊験あらたかな、祈祷を捧げた特殊な聖水を――」


……ああ、そういう感じか。


ジェラードの右腕のときも、効かない薬を延々と買わされていたからね。

弱みに付け込む人なんて、どこにでもいるものだなぁ。


「なるほど、今まで大変でしたね。

これからはもう大丈夫ですので、ご安心ください」


「はいっ! ありがとうございます!

これから、よろしくお願いいたします!!」


ハーマンさんの大きな声とお辞儀に、他の三人も再びお辞儀をした。

それを見て、満足そうに頷くピエールさん。



……いや、何であなたが満足そうなんですか。

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