テラーノベル
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あれ、あんなやついたっけ。
第一印象は変なやつ。
当たり前だろ、8月にマフラーとセーター着て妙にリアルなうさ耳としっぽつけてんだから。
名前はなんて言ったっけな、と、と、そうだ。
兎田。
鮮やかな赤い目、切りそろえられてない白い髪、肌を出したがらなくて俺以外と話してるところを全く見ない。
変なやつ。
なんだか日に日に色んなところを隠すようになってきてる気がする。
人を怯えてる感じもするし、いじめられてたりすんのかな。
たまにいない時あるし、薬学は好きそうだからサボりだとは思えないしな。
一応気にしといてやるか。
また包帯が増えてる。
俺にすら警戒してるよ。
可哀想にな、。
朝から姿が見えない。
あんな状態だったから心配だな。
みつけた、冷たい。
包帯だらけじゃねぇか。
火傷跡、これはなんの傷だ、。
注射もされてんのか。
可哀想に。
俺は兎田を姫様抱っこして歩いた。
涙をこらえて、自分がどこに向かってんのかどこを歩いてんのかも分からず。
ただ歩いた。
「それ、何持ってんの。」
同じ学部の友達だ。
「それなんて言うなよ、俺には大切なやつだったんだよ、」
「何言ってんだよ。それただの実験用うさぎだろ、さっさと埋めるかなんかしろよ。」
は?何言って、
「何とぼけた顔してんだよ。お前が無駄に薬剤かけて殺したんだろ、性格わりぃな」
俺が、?
こいつを?
「薬剤かけては包帯巻いて、急に可哀想だなんだって言ってかわいがって。話しかけたりしてうさぎも困惑してたろ。お前のことすげぇ怖がってたし。」
そうか、そうだったっけ。
「無駄に毛切るから毛並みもわりぃしよ。さっさと供養してやれって。」
なんだ、ただの幻覚か。
きっとこの友達もそうだな。
実験用うさぎだきっと。
なら、実験してやんないとな。
もう耳もしっぽももがれたんだな、全く人間みたいな格好しやがって。
そういや、うちの学部にこんな毛色のうさぎなんていたっけな。
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