昼休み。
教室では弁当を広げる生徒たちの声が溢れていた。窓際の席で、ほのかがサンドウィッチを頬張る。
「ね、楓、今日も購買戦争参加しなかったの?
「うん。朝 うちに買っといた」
そう言って楓は、たこ焼きパンをひとつほのかに差し出した。
「えっ、くれるの?!ありがとう〜!」
隣の席のむつるは無言でパンをちぎって食べている。だが、その手は微かに緊張していた。
何かを、感じている。あの転校生ーー響夜から。
そして、響夜がゆっくりと近づいてきた。
「春風さん」
「えっ、わたし?」
ほのかが驚いて顔を上げる。響夜は無表情のまま、少し首を傾けた。
「話してる内容が……楽しそうだったから」
「え、えっと……よかったら、ここ来る?」
ほのかの提案に楓の表情がわずかにこわばる。
だが、響夜は「いや、また今度」とだけ言い残して去っていった
(ーー観察してる)
楓とむつるは、心の中で同時に確信する。
(目的は ほのか か)