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国際連合本部。
朝の廊下は、いつもより少し静かだった。
書類の束を抱えた職員たちが行き交う中、
アメリカはいつも通り、
サングラスをかけたまま歩いていた。
🇺🇸)……ふぁ……
欠伸を噛み殺す。
頭の奥がまだ重い。
身体が、自分のものじゃないみたいだった。
会議室に入ると、すでに何人かが席についている。
昨日の居酒屋のことを思い出そうとすると、
記憶は相変わらず、途中で途切れたままだ。
🇯🇵)おはようございます、アメリカさん
🇺🇸)おー、グッモーニン!
いつもより少し大きめの声。
元気なふり。
それが癖になっている。
――視線を感じた。
🇬🇧)……アメリカ
丁寧で落ち着いた声。
イギリスが、廊下の端から手招きをしていた。、
🇬🇧)少々、お時間よろしいでしょうか
🇺🇸)え? あ、今?
一瞬だけ、迷う。
けれど断る理由も見つからず、アメリカは肩をすくめた。
🇺🇸)まあ、いっか
🇺🇸)どしたの?
人目につかない資料室の前で、イギリスは立ち止まる。
扉を閉める音が、やけに大きく響いた。
🇬🇧)……昨日の件ですが
🇺🇸)昨日?、
わざとらしく首を傾げる。
思い出せないふりは、半分本当だった。
🇬🇧)居酒屋で、少々……
🇬🇧)お疲れのように見えましたので
アメリカは笑う。
🇺🇸)HAHA、気のせいだって
🇺🇸)ちょっと飲みすぎただけさ
イギリスは一拍置いたあと、
視線を、サングラスに向けた。
🇬🇧)失礼ですが
🇬🇧)その、サングラスは……
🇺🇸)ん?
🇺🇸)あー、これ?
軽く指で弾く。
🇺🇸)オシャレ!
🇺🇸)それだけ!
いつもの答え。
いつもの逃げ道。
だが、イギリスは引かなかった。
🇬🇧)昨日も、でした
🇬🇧)その……目元
アメリカの肩が、ほんの少しだけ強張る。
🇺🇸)……なにが?
イギリスは、ためらうように手を伸ばした。
慎重に、けれど確実に。
🇬🇧)確認させていただいても
🇬🇧)よろしいでしょうか
🇺🇸)は?
🇺🇸)ちょ、ちょっと待てって!
半歩下がる。
逃げようとするが、背後は壁だった。
🇬🇧)外す必要はございません
🇬🇧)少しだけ、ずらします
声は穏やか。
動きも、あくまで紳士的。
それが余計に、逃げ場を奪う。
🇺🇸)……やだって
🇺🇸)マジで、やめろよ
イギリスの指が、サングラスの縁に触れ る。、
ほんの数センチ、持ち上げられる。
空気が止まった。
🇬🇧)……やはり
短い一言。
🇺🇸)っ……!
すぐにサングラスを押さえ、元に戻す。
心臓が、嫌な音を立てていた。
🇺🇸)な、なにがだよ
🇺🇸)寝不足なだけだって!
声が、少しだけ上ずる。
🇺🇸)昨日も言ったろ?
🇺🇸)忙しかったんだよ、色々!
イギリスは否定しなかった。
だが、目を逸らすこともしなかった。
🇬🇧)確かに
🇬🇧)一晩でできるものではありませんね
🇺🇸)……っ
🇬🇧)昨日も
🇬🇧)そして、今朝も
静かな指摘。
責める調子ではない。
それが、余計に刺さる。
🇺🇸)……だから
🇺🇸)寝不足だって言ってるだろ
笑おうとするが、うまくいかない。
🇺🇸)世界の警察ってのは
🇺🇸)忙しいんだよ
イギリスは、ほんの少しだけ表情を緩めた。
🇬🇧)無理をなさるのも
🇬🇧)あなたらしいですが
一歩、距離を取る。
🇬🇧)ですが
🇬🇧)隠しきれているとは
🇬🇧)思われません
🇺🇸)……余計なお世話
小さく吐き捨てる。
🇬🇧)承知しております
🇬🇧)ですので、本日はここまでに
扉に手をかけてから、振り返る。
🇬🇧)……アメリカ
🇬🇧)お気をつけください
それだけ言って、イギリスは去っていった。
残されたアメリカは、しばらく動けなかった。
🇺🇸)……チッ
サングラスの奥で、目を閉じる。
見られた。
昨日も。
そして今日も。。
🇺🇸)……寝不足
🇺🇸)それだけだっての
誰に言うでもなく、そう呟いて、
彼は再び廊下へと歩き出した。
サングラスを、いつもより強く押さえながら。
コメント
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っだぁぁぁぁっっすきっ(?)
求婚したいです(?)