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7 - 第7話

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2025年06月02日

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それから俺はここから逃げるために、まずは元貴の信用を勝ち取ることにした。




若井「元貴今日は何時に帰ってくる?……なるべく早く帰ってきてね。」



若井「元貴今日は隣で一緒に寝て欲しい…。」



わざとっぽくなり過ぎないように、慎重に少しずつ元貴が好きそうな自分を演じる。



元貴はとても満足な様子で、若井可愛いといって擦り寄ってくる。



日常でも、行為の最中でも俺は元貴に愛の言葉を投げかける。元貴もそれに返してくる。



一方通行の中身のないハリボテの関係性。



これも元貴から解放されるため。

俺は今日も元貴を愛してる‪”‬若井滉斗‪”‬を演じる。



そんな日々の努力が功を奏し、俺は体の枷を外して貰えることになった。



元貴がいる時は、リビングまで通して貰えて、今までは元貴に管理されてたトイレやお風呂も、元貴の在宅時は自由にすることが出来た。



完全に1人になれる時間が何よりもありがたかった。



ある日、夕食後リビングで2人で過ごしていると、元貴がカクンカクンと眠そうに揺れていた。



元貴はここ最近何をしているのか、帰りが遅い日が多くなっていた。



若井「元貴?眠いの。横になったら?」



元貴はんーといって、ソファに横になる。



しばらくして、すーすーといった寝息が聞こえてくる。



起こさないように、そっと顔を覗き込むと、演技ではなく本当に眠りについたみたいだ。



俺は思わず自分の両手足をみる。



手枷がなく、自由のきく身体。



こんな機会きっと二度と来ない。




ここから逃げるには今しかない。




俺は細心の注意を払って、元貴を起こさないように、そっとリビングをでて、玄関のドアを開ける。



久方ぶりの、外の空気を胸いっぱいに吸い込んで、俺は無我夢中で駆け出した。




土地勘のない場所を、明るい方へ走ってると、交番を見つけた。



やった!助かった。ここに駆け込んで、助けを求めたら……。




助けを求めたら、元貴はどうなる?



俺は、ぴたと足を止める。




5人……いや、それ以上の人を殺しているだろう元貴は、きっと死刑は免れない。




冷たい独房に入れられ、最後は1人で絞首刑の苦しみに悶えながら死んでいくんだ。



俺がその引き金を引いてしまうのか。



脳裏に、こうなる前に元貴と過した日々がスライドショーの様に流れ込んでくる。



元貴   「若井!これ美味しいよ。」


「若井といると落ち着くなぁ。」


「へへっ、僕若井のこと大好き。」



若井「あっ……あぁ……。」



過去の思い出が足に絡みついて、動くことが出来ない。



あぁ、俺はこんなことになっても元貴の事がどうしようもなく好きなんだな。



元貴が起きる前に戻ろう……。



そう思い来た方向に戻ろうとすると、「若井。」と低く鋭い声がする。



見ると、そこには黒いパーカーに身を包んだ元貴がいた。



元貴「若井も結局、僕のこと裏切るんだ。」



その双眸は、怒りを滲ませながらも、虚ろでどこか悲しげだった。



元貴の手にはスタンガンが握られ、暗闇に電流がバチバチと流される閃光が見える。



若井「待って、元貴ちゃんと話し合おう。俺元貴の事……。」



元貴「聞きたくない。もう疲れた。」



元貴は駆け寄ってきて、俺の腰にスタンガンを当ててくる。次の瞬間、バチィッと電流が体を突き抜ける。



体が硬直して動けない。俺は地面に倒れ込んだ。



そのまま馬乗りになられ、元貴に首にもう一度スタンガンを当てられる。抵抗する間もなく俺は意識を失った。



元貴「俺のものにならない若井なんて要らない。」



元貴の声は誰にも届かないまま虚空へ消え去った。

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