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イギリスが優しいよ
書斎の空気は、相変わらず重く淀んでいた。
血の匂い、吐き気、罪悪感――それらは二人の心に深く刻まれ、逃れられない重力のように押し付けられる。
だが、その中で、イギリスは静かに歩み寄った。
「もう嫌だ。」
ソ連が震える声でつぶやいたその言葉に、周囲の重苦しさが一瞬だけ和らぐ。
イギリスは微笑み、丁寧に手を差し伸べる。
その手は温かく、柔らかく、ナチスとソ連の緊張と恐怖をわずかに解きほぐす。
「大丈夫、君たちはもう無理をしなくていい」
紳士的で落ち着いた声。
その声には、威圧も支配もなく、ただ純粋に二人を思いやる温もりがあった。
ソ連は驚き、目を見開く。
「…え?…本当に…?」
涙が滲む瞳に、かすかな希望の光が映る。
ナチスもまた、頭を抱えたまま微かに肩を震わせる。
「…こんな…状況で…?優しい…だと…?」
吐き気と罪悪感に押し潰されながらも、イギリスの優しさは、ナチスの胸の奥の硬く冷えた何かを溶かし始めた。
イギリスは両手を広げ、そっと距離を保ちながら二人に寄り添う。
「君たちには、僕がついている」
言葉は簡単だが、重く、確実に二人の心理に響いた。
暗闇と絶望に飲まれていた二人の心に、ほんのわずかだが“救い”の温もりが差し込む――
血と絶望に塗れた密室の中で、奇妙な安心感が二人を包み込んだ。