テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
えりりん(コメ返頻度🐢かも)
えりりん(コメ返頻度🐢かも)
えりりん(コメ返頻度🐢かも)
えりりん(コメ返頻度🐢かも)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
自室のドアノブを回しただけだ。
本当に、それだけだった。
いつもの部屋。白い壁に、少しだけ散らかった服たち。鏡の前には、いつも通りの、私。
なのに。
ドアの向こうは、廊下じゃなかった。
一面の草原。
風が、音もなく揺れている。いや、正確には「音が遠い」。耳の奥に布を詰められたみたいに、すべてが薄くなる。
振り返ると、さっきまであったはずのドアは消えていた。
――ああ、なるほど。
こういう夢、昔から好きだったな。
私は少しだけ笑って、草の中へ足を踏み入れる。靴が沈む感触はあるのに、なぜか汚れない。現実よりも現実らしいのに、どこか作り物めいている。
空は、青すぎる。
青というより、塗りつぶされた色。
雲がある。でも動かない。
時間が止まっているみたいで、少しだけ息苦しい。
人はいない。
当然のように、誰もいない。
遠くに、白いドアがぽつんと立っていた。
草原の真ん中に、似合わないほど綺麗な長方形。
私は歩く。
歩いているのに、距離の感覚が曖昧になる。近づいているのか、遠ざかっているのか、よくわからない。
ふと、思う。
ここには音楽がない。
風の音も、虫の声も、全部「それっぽい静けさ」でしかない。
でも、不思議と怖くはない。
綺麗だから。
あまりにも整いすぎていて、逆に触れてはいけない気がするだけ。
ドアの前に立つ。
白い、何もないドア。ノブだけが銀色に光っている。
私は自分の髪を軽く整えた。
こういう場所でも、見た目は大事だ。誰も見ていなくても。
――さて。
次は、どこに繋がっているのだろう。
少しだけ胸が高鳴る。
それが期待なのか、不安なのかは、まだわからない。
ノブに手をかける。
開ける。
ただ、それだけ。
――続く。