テラーノベル
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えりりん(コメ返頻度🐢かも)
白いドアを開けた先は、海だった。
まぶしい、というよりも、白い。
空と海の境目が曖昧で、遠くはすべて溶けているみたいに見える。
砂浜に立っていた。
足元の砂はさらさらしているのに、踏んだ感触が少し遅れてくる。時間が、ほんの少しだけずれている。
波の音がする。
でも、それは録音を流しているみたいに一定で、どこか平坦だ。
振り返る。
やはり、ドアは消えていた。
私は波打ち際まで歩く。
水に触れる。
冷たいはずなのに、温度がよくわからない。
ただ、「海らしい何か」がそこにあるだけ。
しゃがみこんで、指先で波をなぞる。
水面はきらきらしているのに、私の影は映らない。
……映らない?
もう一度、確かめる。
やはり、何もない。
私だけが、ここにいるのに。
ふと、遠くに何か見えた。
海の上に、ぽつんと立つドア。
今度は白じゃない。少し古びた木の色をしている。
どうやって行くのだろう、と思う。
けれど気づいたときには、そこに近づいている。
――ああ、ここはそういう場所だ。
理解すると、少し楽になる。
怖さは、昨日よりも少しだけ増えている。
でも同時に、どこか安心している自分もいる。
誰もいないから。
評価も、視線も、何もない。
ただ、美しいだけの世界。
ただ、私が開けるだけのドア。
ドアの前に立つ。
木の表面には、細かな傷があって、やけに現実的だ。
私は軽く息を整える。
――大丈夫。
ノブに手をかける。
波の音が、一瞬だけ止んだ気がした。
開ける。
ただ、それだけ。
――続く。
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