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【異能学園・入学式】
空は快晴。
けれども、空気はどこか張り詰めている。
世界中の異能者たちが憧れる、超大規模大学園――異能学園。
今日、その門が開かれる。
敷地中央、重厚な礼拝堂のような式場には、何千人という入学生が整列していた。
種族も姿もまばら。
人間、エルフ、獣人、竜人、天使、悪魔、そして神にすら近い者まで。
壇上には、学園の象徴――ラミエス・リレネ学長の姿。
その隣には、国家SSSランク保持者、薄志間 カズトの気配すらある。
だが、場の誰にも気づかれぬよう、ひとり静かに席についていたのが――
伊弉諾 林野(いざなぎ・りんの)
くすんだ黒髪に、ボサついた前髪。
制服は一応着ているが、シャツのボタンは上まで留めておらず、目元に眠気が漂う。
彼の通知書にはこう記されていた。
ランク:D-以下(能力未検出)
評価:不可解。再測定推奨
伊弉諾「……やっぱり、まだバグってるな。この世界のシステム。」
彼は手にした入学書類の端を眺めながら、つぶやいた。
重力の揺らぎが、ほんのわずかに空間を歪めていたことに――
彼だけが、気づいていた。
《壇上:学園長・ラミエス・リレネ》
「ようこそ、異能学園へ。皆さんの力、志、そして存在そのものが、次代を担う光です。
ですが、この学園においては、力の“意味”を問い続けなさい。
異能とは、種族とは、ただの“始まり”に過ぎません――」
式が進む中、Sランク以上の選抜生徒たちはざわついていた。
新入生の中に、異常重力の揺らぎを感じ取った者がいたのだ。
他生徒達「今、一瞬……重力が変動した? 結界のせいじゃない…」
「ありえない…魔力反応がないのに……まさか、“物理干渉”?」
式の最後、校章の光が全員の胸に転写された瞬間――
林野の校章だけが、一度「D-」と表示された後、ブラックアウトした。
「……ふーん。またこれか。まぁ、どうでもいいけど。」
林野は眠そうなまま、立ち上がり、誰とも目を合わせず会場を後にした。
その背に誰も気づかない。
彼の一歩一歩が、空間の“落下点”をずらしていることに――