テラーノベル
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翔太 side
亮平💚『えっ?待ってここに包丁入れるの…ムリムリ可哀想』
涼太❤️『ねぇもう死んでるから、食べてあげないと反対に可哀想だよ』
翔太が倒れて2時間後、正直どう対処していいか分からず涼太に電話をかけると〝新鮮な魚が手に入ったからそっち行くよ〟そう言って調理器具一式揃えた涼太が来訪した。
翔太💙『ふふっ阿部ちゃん包丁握った事あるの?』
1時間ほど眠っていた翔太も起きてきてキッチンカウンターの向かいに座って眺めている。涼太からは〝焦らずゆっくり亮平らしく〟とアドバイスされた。変に気遣うなという事らしい。
〝 何があっても動じず受け入れなさい〟
神様のような涼太の言葉に今は縋る他なかった。
亮平💚『翔太よりは包丁の扱い上手だよ』
翔太💙『言うねぇ』
本当に昔の翔太と話しているようだった。ちょっと尖っていて、でもやっぱり優しくて、年上風吹かせている。俺に甘えてこない・・・少し寂しい。
翔太💙『涼太その‥何言おうとした?あっそうその魚なんてやつ?』
涼太❤️『アジだよ。塩焼きと、残りは刺身にして食べよう』
翔太💙『亮平が捌ければ?だろっ?』
涼太❤️『・・・』
時折〝亮平〟と呼ぶ翔太は無意識のようで、涼太と俺を一瞬ドキッとさせる。戻る日も近いだろうか…
〝ちょっと待って本当に無理涼太助けてなんか出てきた〟翔太は楽しそうにケラケラ笑って見ている。
涼太❤️『内臓くらいでビビってたら翔太の世話は務まらないよ?』
翔太💙『そうだぞ!阿部ちゃん』
亮平💚『内臓がどう関係するんだよ💢』
前にも感じた…3人なら翔太も寂しい思いせずに楽しく過ごせるのに。隣の涼太を見ると〝駄目だよ亮平、良からぬ事を考えるな〟エスパーかお前は・・・
食事を終えると涼太は〝じゃあお暇するね亮平頑張れ〟翔太は俺にだけ挨拶したのが気に食わない様子で〝俺には?俺に何か言う事ないの?〟涼太には無条件で甘えられるみたいだ・・・
涼太❤️『亮平の事頼んだよ!こう見えて繊細で泣き虫で心が弱いから・・・翔太と同じくらい』
涼太が帰ったリビングはまた静けさを取り戻し二人の間に気まずい空気を流した。
亮平💚『お薬飲んだ?先にお風呂入っておいで?』
翔太💙『りょ…亮平?…あってる?こうやって呼んでた?』
亮平💚『好きに呼んでくれていい。阿部ちゃんで構わない、無理しないで』
翔太💙『無理したいの分からない?…ごめんえっと…なんだっけ…お風呂…そうお風呂一緒に入る?』
時折、言葉を詰まらせる。言葉が迷子になって言いたい言葉がすぐに出て来ない事があるようだ。無理しなくていいのに…言えない言葉が宙を舞う。
返事を待たずにずかずかと近づく翔太は、〝ンッ〟と言って万歳をした。脱がせてって…事?
こうやって蓮に甘えていたのだろうか?二人が付き合っていたなんて、想像が出来ない。
恐る恐る手を伸ばし脱がせると、俺の手首を掴んだ翔太は脱衣場へと連れて行く。
翔太💙『ねっ?来た事もない亮平の家、俺知ってる。ここがお風呂だ』
5年前には住んでいなかった俺の家。翔太は〝初めて〟のはずだった。〝たくさんお話しして?亮平の事知りたい〟迷ったり、悩んだり俺が答えを出す前に沼から引っ張り上げるのはいつだって翔太だった。助けたいはずの翔太にまた救われている。
亮平💚『ンッ…俺のも脱がせて?』
シャツに手をかけた翔太はいつかみたいに〝か、が、ん、で〟と地団駄を踏んだ。クスッと笑った俺を見て〝何で笑うの?〟と膨れた。
亮平💚『いつものやり取りが嬉しいんだよ』
頰を撫でるとくすぐったそうに肩を竦めた。
亮平💚『怖い?』
首を左右に振る姿もまた…いつかの…
翔太💙『首取れちゃいそう?……亮平さん…泣かないで?』
もう涙腺崩壊だった。5年前の翔太も昨日の翔太も今日の翔太も明日の翔太だって俺の大好きな翔太だ。傷つけたのは俺で、過去に閉じ込めたのも俺なんだ。
〝頭で考えるな心で動け〟頭脳先行型の俺は心の声が聞こえない。
亮平💚『ごめんなさい俺のせいでこんな事に』
翔太💙『しーっ大丈夫。大丈夫だよ亮平きっと上手くいく。だってこんなにも俺の事好きでいてくれてる』
顔を上げた俺の唇に、翔太の薄くてほのかにピンク色の唇が重なった。胸が痛むのか俺の腕をグッと掴んでいる。また無理をさせている。好きでもない俺を必死で好きになろうと〝元通り〟にしようとしてる。今好きな人は蓮なのに・・・
唇が離れて屈託ない笑顔で笑うと〝大丈夫だった良かった一歩前進〟そう言ってズボンを脱ぐと〝ほら早く亮平〟そう言ってグイグイ腕を引っ張った。慌ててズボンを脱いで翔太に続いた。
翔太💙『頭洗いっこしよ?いつまで泣いてるんだよ?』
亮平💚『ごめん…うわっ!ちょっと冷たい』
翔太は慌てる俺を見てケラケラ笑ってる。洗い終わって湯船に浸かると〝俺明後日から仕事復帰する〟驚いて目を見開くと〝大丈夫だよすっかり元気だ〟そう言って足を上げて見せた。心配なのは心の方だ。
就寝の準備が出来るとお互い別々の寝室へ向かった。隣同士部屋の扉の前で〝おやすみ〟を言って別れた。
隣の部屋から啜り泣く声と時折魘されている声が聞こえてきたのに俺は怖くて翔太の部屋に行くことが出来なかった。また臆病な俺が何も出来ないで翔太を傷付けている。
夜半すぎ、ガサガサと言う音で目を開けると、ベット脇に翔太が枕を抱えて立って俺のシャツを引っ張っていた。
亮平💚『どうしたの?具合悪い?』
翔太💙『眠れない…阿部ちゃん隣寝てもいい?』
俺は翔太を抱きしめていいのか分からなくなっていた。返って翔太を苦しめる事にならないだろうか?先程のようにまた発作が起きたら…
〝考えるな心で動け〟
今俺はどうしたい?
翔太を抱きしめたい・・・
大きく腕を広げた。翔太が安心してこの胸に飛び込んで来れるように。
亮平💚『おいで翔太………うわぁっちょっと』
勢いよくベットにダイブした翔太が俺の胸に相当な衝撃を与えた〝うう゛っ!〟
翔太💙『あははっ大丈夫?肋折れた?』
亮平💚『馬鹿じゃないの痛ったい…』
子供みたいに無邪気に、俺の首に擦り寄ってきて手を繋いだ。
〝阿部ちゃんの手…好きだな〟
時々顔を出す以前のままの翔太が〝阿部ちゃん〟と呼ぶチグハグな世界で自分の忍耐を試されているような気がした。
俺の腕に両手で掴まりながら眠る翔太が、時折ビクビクと身体を震わせ苦しそうに涙を流す背中を摩っては涙を拭った。
朝起きると、俺の腕にしがみついたままの翔太が居る。ほとんど寝てない俺は、朝の生放送の為、3時に目覚めて支度をする。俺が留守の間は涼太にお願いしてある。
亮平💚『お仕事行ってくるからね…』
おでこにキスすると少しだけ反応した翔太は、今は落ち着いて寝ている。
康二 side
舘さんから連絡をもらって阿部ちゃんのマンションまで来た。鍵は預かってる。千載一遇のチャンスとはこういう事をきっと言う。
康二🧡『初めて使うな〝千載一遇〟なんて言葉…使い方おうてるんかな?』
合鍵で入ると、しょっぴーはまだ寝てるみたいだ。買ってきた食材でお味噌汁を作る。俺にはまだ〝胃袋を掴む〟作戦が残ってる。
時々俺のうちに来ては生姜焼きやハンバーグを食べて帰っていたしょっぴーは、俺の料理の腕前には一目置いている。記憶がない今、胃袋に語りかけるのが得策だろう。
翔太💙『ん?康二?なんで?阿部ちゃんは?』
康二🧡『おはようさん。テレビ付けてみ!』
朝のニュース番組に映る阿部ちゃんを観て、しょっぴーは目を輝かせている。〝すっげぇ阿部ちゃんまた夢叶えたんだ〟自分の事のように喜んでいるしょっぴーは可愛い。
康二🧡『もうすぐ朝ごはん出来るで、顔洗ってきいや』
付き合ったらこんな感じだろうか?違和感の残る右足を少し庇いながらちょこちょこ歩くしょっぴーはリビングをウロウロしている。
康二🧡『どないしたん?』
翔太💙『あぁ…洗面台どこ?』
何処までの記憶が残っていて、残っていないのだろうか?少なくとも俺とのいざこざは全く覚えてないようだし、こりゃ阿部ちゃん大変だな。
康二🧡『あ…俺も分からへんけど、待ってなあぁここやわほら』
昨日お風呂入らなかったのかな?広々とした脱衣場に設けられた洗面台を見つけるとしょっぴーは小首を傾げながら洗面台に向かうと丁寧に顔を洗っている。朝ごはんが出来上がるまではソファーに座って目をキラキラさせながら阿部ちゃんを観ていた。やっぱり阿部ちゃんの事が好きなんやな・・・
〝出来たで〟その言葉も耳に入らないくらいに夢中になって小さなワイプに映る阿部ちゃんを見逃すまいと食い入るように観ている。
意地らしくてしょっぴーの目を後ろから手で覆うと〝ご飯やで俺を見てもろうてもええ?〟俺の手を掴んで後ろを振り向いたしょっぴーの唇にキスをする。
翔太💙『あれ?胸苦しくないね…?』
康二🧡『胸?なんやの?』
翔太💙『阿部ちゃんとキスすると胸が苦しくって息ができなくなる…皆んなかと思ってた』
康二🧡『もう一回してみる?たまたまって事もあるかもしれへんで』
しょっぴーは一瞬躊躇ったものの、早く元に戻りたいんのだろう俺の手を掴んで〝ごめんね嫌じゃない?…お願いします//んっ〟と言って薄く可愛らしい唇を差し出した。頰に手を添え上唇を喰む。僅かな隙間に舌を挿し込むと、胸を押して抵抗した。
康二🧡『苦しいの?』
翔太💙『違う…そうじゃないけど…これは違うからこれは好きな人同士がする奴だよ?』
携帯のスマホの画像をしょっぴーに見せる。
康二🧡『阿部ちゃんやなくて俺と付き合うてた。これ見て!初めて結ばれた日の写真…せやから俺とはキスしても胸痛くないんちゃう?』
しょっぴーは混乱して、これが発作だろうか?舘さんから聞いていた発作に似てる。肩を震わせて息苦しそうだ。肩を抱いて背中を摩った〝大丈夫大丈夫しょっぴー俺に身体預けてご覧。ゆっくり深呼吸しいや〟そのままソファーに横になったしょっぴーは目を閉じて呼吸が落ち着くのを待っていた。
翔太💙『あ…あのっ』
康二🧡『構わへん待つから。でも覚えときしょっぴー好きなんは俺や、しょっぴーも俺の事好きやってんで…もうええからご飯食べよっ』
モグモグと小さなお口に御飯をゆっくり運ぶしょっぴーは、いつもと変わらない。綺麗な箸使いで口に運んで行く。時々物言いたげに箸を置いては、言葉を飲み込んでいる。〝お薬あんねやろ?何処か分かる?〟しょっぴーは首を傾げて〝分かんない〟と言って〝ごめんね…なんかあんまり新しい事分かんなくなる〟こんな症状聞いてないけどな…
舘さんに聞くけど薬の場所は分からなかった。やむ無く阿部ちゃんに電話すると、ちょうど番組終わりですぐに電話に出て、案の定怪訝そうな声だった。
康二📲『仕方ないやろ?舘さんに変わってて言われたんやもん。放っておいた方が良かった言うんか?』
亮平📲『翔太に薬の場所は昨晩教えてたんだけど?キッチン後ろの戸棚の中にある』
康二📲『何時になるん?ちょっと気になることあるから話できひん?』
阿部ちゃんの帰りは19時頃。それまで二人きり・・・かと思ったのに
康二🧡『なんで来るん?』
蓮 🖤『は?館さんから連絡もらって、康二くんが用事あるから変わってって言われたんだよ?』
康二🧡『阿部め(裏で工作したな)・・・なんでめめなん?』
蓮 🖤『俺と康二くん以外仕事だよ?ほら急ぎの用事なんでしょ?しょっぴーは?』
寝室に向かいドアをノックして入ると、横になって休んでいるはずしょっぴーは部屋をウロウロ歩いている。
康二🧡『どないしたん?』
しょっぴーは不安そうな顔で〝良かった康二が居たの?一人かと思った。今来たところ?〟あぁあかん重症や。手に負えんな。
めめに事情を話すと、〝取り敢えず阿部ちゃんが帰ってくるまで僕が診るよ〟そう言って俺は用事もないのにマンションを追い出された。腹も立ったし、しょっぴーの事も伝えなければともう一度阿部ちゃんに電話をする。
亮平📲『何?まだなにか?』
しょっぴーの症状について話をすると、電話の向こうの阿部ちゃんはすごく動揺していた。一番驚いていたのがしょっぴーの症状よりも、代わりに赴いたのが〝めめ〟だった事だ。誰が行くかは知らなかったみたいだけど、どうしてあんなに動揺したのかは俺には分からなかった。
コメント
14件
康二のキスを読んで胸キュンする私もいる😅🧡💙 康二🧡も切ないよなぁ。
康二くん!!!ダメでしょ! あることないこと吹き込んで! (康二のお味噌汁飲みたい🤤) 阿部ちゃんと亮平と亮平さんと 度々記憶が混在してるんだね。 大丈夫かな?💙
記憶失うならやりたい放題ですな🤭🤭🤭(鬼畜) 蓮くん🖤キターーーーーー! ちょっとトラブルくるの早いな🤣🤣まだ💋しかしてませんよ?🧡 阿部ちゃん💚の時だけ胸苦しくなるの素晴らしいと思いました💕明後日仕事に復帰できるかなぁ???🤔🤔🤔