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蓮 side
俄かに信じ難い状況に、動揺するなと言う方が無理があるだろう。五年もの記憶がすっぽりと抜け落ちたしょっぴーはあろう事か、俺のことを好きだった頃の〝翔太〟そのものだった。
阿部ちゃんと翔太の間に何があったかは知らないけれど、近頃の二人はすごく幸せそうに見えた。
翔太と別れたのは、彼からの束縛に耐えられなかったからだ。あの時の判断を今でも後悔している。そう気付いた時には翔太は違う人を好きになっていた。俺の存在が、彼から消えてもずっと見ていた。それだけで良かった。
寝室から飛び出してきた翔太は満面の笑みで俺を迎え入れた。
翔太💙 『蓮!会いに来てくれたの?』
蓮 🖤 『そうだよ具合はどう?』
翔太は痛めた右足を見せて〝もうすっかり元気だ〟と軽く跳ねて見せた。
蓮 🖤『今日休みなんだ。何処か出かけようか?』
大した意図はない。外へ連れ出した方が気晴らしになるかと考えただけだ。翔太は〝水族館行きたい〟と言った。
蓮 🖤 『ふふっそう言うだろうと思った。翔太大好きだもんね。じゃぁ水族館にしよう』
〝やったぁ….着替えてくるね〟とても嬉しそうに五年ぶりに俺だけに向けられた無邪気な笑顔に自然と顔が綻んだ。
阿部ちゃんに隠し事はしたくないので、メッセージを送る
蓮 📩『しょっぴーと水族館へ行ってきます。夕方には戻ります』
すぐに返事が帰ってきて、少し他人行儀な返信に、あまり快く思っていない事が読み取れた。
亮平📩『ご迷惑おかけして申し訳ない。夕飯までには戻りますから俺たちの事はお構いなく』
〝俺たち〟と軽く牽制されたメッセージを閉じると電話をかけタクシーを呼んだ。
寝室から現れた翔太はまだ部屋着のままで〝蓮何すればいいんだっけ?〟俺は目の前で起きた事に整理が付かないでいた。慌てて阿部ちゃんに電話を入れる。その間翔太は部屋をウロウロして落ち着かない様子だった。
蓮 📲『あっ阿部ちゃん、すぐ病院連れて行きたいんだけど…うん分かった』
阿部ちゃんの寝室に入ると部屋の隅に置かれた机の引き出しを開ける。〝紹介状〟と書かれた封筒と、病院の名前のメモを手に取った。その下から出てきたノートに手が止まる。最初のページを読んだ。静かに閉じ引き出しに戻した。俺が見ていい筈はない…阿部ちゃんの翔太に対する想いが綴られていたそのノートに触れていいのは二人だけだろう。
寝室に行くとベットの隅に翔太はちょこんと座っていた。〝お着替えしようか?〟そう言うと翔太は〝何処行くんだよ?〟と首を傾げた。
着替えを手伝いながら病院へ行く事を伝えると〝そう?頭おかしいもんね俺…なんか変だね〟そんな事ないよと言っても翔太はそのくらいの事は分かると言って譲らなかった。
翔太💙『皆んな俺に隠し事してる。だから忘れるようにしてる心が軽くなるから。忘れろって聞こえてくる…頭おかしいだろっ?何で泣いてるの?』
蓮 🖤『ごめん。病院行ったらきっと治るから。行こうか?』
〝うん〟無邪気に返事をする翔太に益々涙が溢れた。翔太に見えないように少し前を歩いて涙を拭った。
蓮 🖤『いっか…え?なんです?』
医者から告げれたのは〝一過性全健忘〟と呼ばれるものだった。短期的に記憶がなくなる症状は不眠や偏頭痛、ストレスが原因で2、3日すれば治ると言われた。問題は初めに起こしている〝解離性健忘〟と呼ばれるトラウマや極度のストレスによって引き起こされたであろう5年間の記憶喪失の方だった。
心理的なストレスの元となっている原因を取り除く事が先決だと言われた。
人によってストレスの原因は様々で、翔太が仕事をしたいならそれを優先させる方が良いとのアドバイスも貰った。こんな状態で仕事に復帰できるとは到底思えない。回復の見込みを尋ねたところ、突然戻る事もあるし、長い治療が必要な場合もあり個人差があるとの事だった。
結局、精神安定剤と睡眠薬の処方と心療内科でのリハビリを勧められて病院を後にした。
翔太の前を歩いていると小走りで駆け寄ってきて腕にしがみ付いている。
蓮 🖤『どうしたの?具合悪い?』
首を横に振っている。〝時間あるし水族館行く?〟
翔太💙『ホント?いいの?行きたい』
タクシーに乗り近くの水族館を目指す。20分程で到着するとまた〝何処行くの?〟と聞いてくる。〝ほらあそこ何処だか分かる?〟
翔太💙『水族館?やったぁ行きたかったんだ』
参ったな…これは本当に大変だ。
翔太くんは夢中になって水槽を眺めている。ずっと前に二人で来た事覚えてるだろうか。前を歩く俺を小走りで追いかけてくる。シャツを掴んで上目遣いの翔太は〝お手手繋いで?〟と甘えてきた。5年前にはあんなに嫌だった事も、今は胸を締めつけられる程に愛おしく繋いだこの手を離したくないと思ってしまう。
今も変わらない色白の小さくて冷たい手の持ち主は〝ふふ蓮の手ゴツゴツしてる〟そう言って握り返してくる。
平日の水族館は人もまばらで幻想的な海の中は静まり返り巨大な水槽を前にベンチに二人座り眺めている。
俺の肩に頭を乗せた翔太はずっと手を握ったまま離さなかった。
蓮 🖤『キスしてもいい?』
翔太💙『駄目だよキスって好きな人とするんだよ?蓮はもうすぐ俺のこと嫌いになる』
蓮 🖤『どういう意味?』
翔太は首を傾けて考えているようだった。〝きっとそうなる俺は好きでも蓮は俺のこと…〟
正直、記憶が戻らなければやり直せるんじゃないかって思ってしまっていた。
蓮 🖤『ならないよ。今度はそうはならない。愛してる翔太』
あんなに嫌がった〝愛してる〟を今は俺が言うなんて見苦しいにも程がある。
5年ぶりの翔太とのキスは甘い記憶を呼び起こす。触れるだけのキスから記憶を辿るように翔太の下唇を喰むと開けられた隙間から舌を挿し込んだ。逃げるように奥に収まる翔太の舌を捉えて交わすと、握っていた手に力が籠った・・・
翔太💙『んっ』
男は身勝手。手に力が篭れば感じてる…吐息を聞けば喜んでる。翔太の腰を掴んで自身へ引き寄せれば首を窄めて怯えた表情を見せた。〝やめて…〟5年分の想いはこんなもんじゃない。歯止めの効かない想いを翔太にぶつけた。
翔太💙『ンンッ////苦しい…はぁっはあっ』
蓮 🖤『ごめん…大丈夫?』
翔太は苦しそうに胸を抑えると〝亮平に会いたい…..〟小さい声でそう言った。
翔太💙『見て見て蓮!ペンギンさん可愛いふふっ人形みたい』
暫く休んだ後、俺は水槽前のベンチで無邪気にペンギンを追いかける翔太を見ていた。
そうだペンギンの人形をあの時買ったんだった。ずっと枕元に置いて寝ていたのを思い出した。陸では可愛らしく歩くペンギンが、水中で泳ぐ姿に感心していた。
翔太💙『見て見て蓮!水中だとこんなに速く泳げるんだよ。すごいね可愛いしカッコいい。俺みたいじゃない?』
蓮 🖤『ふはっはっ自分で言うなよ』
〝自分で言わなきゃ誰も言ってくれないだろ〟さっきまでの笑顔が嘘のように、暗い表情に変わった。
翔太💙『誰も俺に本当の事言わない…忘れろ忘れろ…嫌な事は全部忘れないと…』
蓮 🖤『翔太!』
力なく膝から崩れ落ちた翔太は、もう少し遅かったら頭を手摺にぶつけるところだった。慌てて駆け寄り翔太の腕を掴むと翔太ごと抱き抱えて倒れた。
蓮 🖤『痛っ…翔太大丈夫?ゆっくり深呼吸しよう』
翔太💙『亮平……』
帰りの車内、翔太はあのまま気を失って今は俺の膝の上で眠っている。マンションに着くと翔太をベットに横に寝かせると、椅子に腰掛け様子を伺っていた。いつの間にか眠っていたようで、翔太の魘される声で目覚めた。涙を流して奥歯を噛み締めた翔太は両手で枕の端を掴むと足をバタ付かせている。頭を撫でて声を掛けるとうっすらと目を開け、抱きついてきた。
翔太💙『蓮!良かった….また独りかと思った。居てくれてありがとう』
蓮 🖤『ずっとここに居るから安心して』
そのまま翔太の隣に寝転んだ。〝蓮….俺治る?このままだったら?〟いつの間にか繋いだ手にグッと力が入る。翔太に跨り頬を撫でると不安そうな顔で俺を見上げた翔太は〝何するの?〟
蓮 🖤 『治したい?荒療治試してみる?』
翔太の答えを待たずに首に顔を埋めると、五年前とは違う阿部ちゃんと同じ香水の匂いがした。〝なんで香水変えたの?前の方が良かった〟ガキみたいな嫉妬をぶつけたって翔太は答えないし、今は俺のモノでもないくせに勝手な独占欲が自分の中に沸々と湧き上がるのを感じていた。
首筋に舌を這わすと、優しい手が俺を除けようと胸を押している〝やめて蓮〟手首を捉えてシーツに縫い付けると〝翔太力抜いて?大丈夫俺を感じて〟耳を舐めると足をバタ付かせて身体を捩った。甘い吐息が唇を艶めかせ、寝室に翔太の息遣いが響いた。
翔太💙『はぁはぁっ/////ダメ…』
蓮 🖤『試す価値あるだろ?俺たち愛し合ってた//俺との事覚えてる?』
翔太💙『んんっ覚えてる….あい…好きだった』
蓮 🖤『違う愛してるだろ?今も愛してるはずだよちゃんと思い出して///思い出させてあげる』
下へと降りる快楽に翔太は抵抗し続けた。身体をなぞりシャツを脱がすと、丁寧に愛していく。ただ身体を求め合った頃とは違う、一方的に翔太を欲しがり、求め、喘ぎ声を勘違いする、俺に感じているんだと・・・
蓮 🖤『いいよもっと聞かせて鳴いて翔太////綺麗だ』
白い肌がピンクに色づき、頬を赤く染めた翔太がベットの上で何も纏わず横たわり、潤んだ瞳で今もなお〝やめて〟と言い続けている。言葉とは裏腹に勃ち上がり出した花茎を手で擦ると腰がびくりと跳ねた。口に含むと先端からは透明な液体が流れ出て吸い上げると更に膨らんだそこはドクドクと脈打っている。
翔太💙 『ンァっ….あはぁはぁやだ…..出ちゃう』
蓮 🖤 『いいから出しなさい気持ちいね翔太可愛いよ』
白濁を口内に放った翔太は力なくベットに沈みこみ目を瞑って涙を流した。後孔に指を挿れると目を見開いて〝お願いやめて〟と懇願する翔太を捉える〝よく見て思い出して?翔太を愛しているのは誰?〟涙がシーツに流れ濡れている。
翔太💙 『助けて苦しい…..亮平がいい』
気付いたら自分の熱塊を翔太にブチ込んでいた。ドロドロと蠢く嫉妬心が独占欲が俺の身体を支配して、翔太を離すまいと必死で腰を打ちつけた。翔太の身体を起こして、抱き合いながら顔を両手で掴むと唇を貪り腰を揺らめかせた。抵抗の言葉は掻き消され二人の間は唾液の糸で繋がった。下から突き上げられる快感に翔太は俺の背中に必死でしがみ付いた。
蓮 🖤 『気持ちいい?翔太』
翔太💙 『気持ちイイ….蓮?気持ちいい』
翔太は静かに絶頂を迎え、俺の肩に顎を乗せ息を整えると繋がったままベットに横になった。俺は翔太をひっくり返すとそのまま後ろから突いた。腰を持ち上げ四つん這いにすると、翔太は前のめりに突っ伏しお尻だけ差し出すと再び荒い呼吸を繰り返す。腕を取り膝を立たせると苦しそうに鳴いている。
翔太💙 『イヤっ////んんんっつ無理….キツイよ//あん、あん、蓮とめて』
蓮 🖤 『可愛い翔太///もっと感じて俺をちゃんと感じて?身体が覚えてるはずだよ』
翔太💙 『ンンンッイク…..蓮イク』
頭を、頬を撫でるとくすぐったそうな仕草をした〝発作起きなかったね?平気?〟翔太は小刻みに震えると〝寒い〟と言って服を纏うと再びベットに横になった。
蓮 🖤 『翔太、もしかして思い出した?』
翔太💙 『蓮とは別れたそうでしょ?….なんでこんな事するんだよ』
蓮 🖤 『愛してるからだろ?助けたいんだよ』
翔太は背中を向けてベットの端に蹲ると、そのまま眠ってしまった。リビングのソファーに座って阿部ちゃんの帰りを待っていた。阿部ちゃんが帰ってくると病院での事を報告する。神妙な面持ちで聞き入る阿部ちゃんは〝蓮と暮らした方がいいのかなって少し思ってたんだけど…〟
俺は返事が出来ずに室内は重苦しい空気が流れた。向かい合って座ると阿部ちゃんはすごく疲れきった顔をしている。
蓮 🖤『眠れてる?大丈夫?阿部ちゃんまで倒れたら大変だよ』
亮平 side
正直ギリギリの体力だ。皆んな個々の仕事が忙しくて人を選んでもいられない。縋るような思いだった。ヒントがもらえるなら答えを知ってるなら教えて欲しい。そんな思いで蓮に全てを話す。
亮平💚『ごめんねこんな話…俺のせいで…早く翔太を救ってあげたいのに何もできなくて…もうどうしたらいいのか分からない』
蓮 🖤『ようやく決心がつきました。翔太は俺が引き取ります。付き合ってからの翔太は幸せそうに見えてました。それなのに翔太を傷つけた。遠慮する必要ないですよね?』
時が止まるってこういう事を言うんだ。一言吐いた弱音が蓮の決意を後押しした。きっとまだ翔太の事が好きなんだ。
亮平💚『いや、さっきのは本音じゃなくて…それに今日一日一緒に居て何の手応えもなかってんでしょ?一緒に住んだところで…』
蓮 🖤『そう言うのやめましょう?翔太にとってどっちが環境的に良いか、今の阿部ちゃんは余裕があるようには見えない。失礼ですけど俺の方が幸せにできると思います』
何も言い返せないのが悔しい。
翔太の為にどっちが良いかなんてなんで蓮に分かるんだよ。俺と居た日々は短いけど本当に幸せだったし本物だった。ちゃんとお互い愛してた。
膝の上に置かれた握り拳が震え、涙に濡れた。
翔太💙『亮平さん…また泣いてるね大丈夫?』
気が付いたら、翔太が俺の顔を包み込んで抱き締めている。〝しーっ大丈夫、大丈夫だよ亮平きっと上手くいくねっ?そうでしょう?〟翔太の腰にしがみ付くと一生懸命俺の背中を摩っている。大変なのは翔太だ俺じゃないのに情けない姿を蓮に晒している。
亮平💚『ごめん頼りなくて・・・』
翔太💙『どうして?そんな事ない』
蓮 🖤『翔太!』
翔太は、蓮の声に敏感に反応すると笑顔になって〝蓮来てたの?〟そう言って蓮の方へ行きたそうに足がピクリと僅かに動いた。 俺が抱きついていなければきっと蓮に飛び付いている。
蓮 🖤『翔太が嫌じゃなきゃ俺の家に来ない?一緒に住まない?』
翔太💙『蓮と?駄目だよ今阿部ちゃんと付き合ってるんだって。不思議だね今日何してたか覚えてないけど阿部ちゃんの事は忘れない。今日は朝からTVに出てた。カッコよかったよ』
翔太は俺を抱き締める腕に力込めた。
翔太💙『…阿部ちゃんね俺が居なきゃダメなんだよ。だから俺はやっぱりここに居る。見てほら泣き虫でしょ大丈夫ったらもう泣かないで?』
蓮 🖤『分かった、じゃあまたここに遊びに来てもいいかな。それなら構わない?2人の方が阿部ちゃんの負担も半分だしどうかな?』
翔太💙『どうかな?お亮さん』
亮平💚『翔太が構わないなら…なんでお亮さん?』
翔太💙『なんか可愛いから〝亮平さん〟って呼ばれるの好きだったでしょう?違ってる?』
亮平💚『あってるよ…バカ覚えてるのずるい…』
〝ほらまた泣き虫〟翔太が笑っているただそれだけでいいのかも知れない。そう思えるほど屈託ない笑顔で笑っていた。
コメント
13件
切ない😭
マジで神作なんだよな、何回読んでも泣ける😭😭😭
爆モテ推し💙にニヤニヤしかない。可愛いし。切なかったけど、蓮🖤くんも💙に未練があって大満足🤭これは舘❤️のターンもありますかね?😂😂😂亮平💚くん、いなさすぎて可哀想だけど、まあ、しょぴ💙の好きな人は揺るがないし、大丈夫🙆どんどん行こう❣️さっくん🩷元気?そろそろご登場お待ちしています✨✨