テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
順番が周り、アーティストさん達がガヤガヤと移動に移動を重ねる。
やっと自分たちの出番がやってきた。
1番最初の曲はMCを入れずふわっちのイントロで曲が始まる。
合計3曲を演奏し、俺が歌うのは1番最後だ。
今までで1番大きな会場、俺達目当てのお客さんは少ないだろうけど、それでも俺達が作り上げる音楽を楽しんで欲しい。そんな思いで音の粒子を呼吸単位で揃えて行く。
自分の思いや気持ちが上手くあの人に伝えられない。そんな失恋ソング。 嫌味なほど今の自分と重なる歌詞をメロディに乗せる。くっさんはこの会場に居るのだろうか。居るのなら今の俺の気持ちを乗せて歌うからどうかどうか届いて欲しい。そんな不安や俺を見て欲しいという独占欲を隠しきれないローレンの歌声はnqrseが教えてくれたようには歌えなかった。かっこよくてでも女々しくもあるこの曲はローレンのどこかもどかしさを感じる色気とのギャップには他に無い色を醸し出していた。
🗝「ごめんnqrse、ちゃんと歌えなかった。」
ステージ袖で見てくれていたnqrseを暗い袖裏で見つけ、そう言葉をかける。
🍥「良かったよ。俺が作った曲を今のローレンが消化して思いを歌ってくれるのは」
🍥「作曲家としてこれ以上のものは無いよ」
気持ちが歌詞と混ざりこんで抜け出せないローレンも、好きな人を思って作った曲が俺じゃない他の誰かを思って歌うその理不尽で悲しくどうしようも無いものも。
その感情の名前も俺は知っていた。
一度だけでいいから、ローレンの気持ちが欲しい。振り向いて欲しい。俺を見ているようで違う誰かを見ているローレンをどうにかしてでも振り向かせたかった。きっと俺じゃない誰かを探している今でも俺を見て欲しかった。
🗝「…?nqrse大丈夫? 」
🍥「…」
🍥「ちょっとごめん」
薄い体、俺より少し低い身長も、仄かにするあいつと同じ匂いも、抱きしめてるのにローレンは俺の好意に気づかないことも。
🗝「な、nqrse?具合悪いの?」
🍥「…もう大丈夫」
🍥「葛葉さん探してるんでしょ?行ってあげて」
🗝「…うん」
フェスはまだ続いてる。大きすぎるこの音が俺の気持ちも感情も隠してくれる。きっとこれで良かったんだ。俺が卒業式で花束を抱きしめているローレンと出会ったあの時から俺の負けはきっと決まっていた。
🗝「はぁ…はぁ…」
歌詞に感情が引っ張られて、言葉に俺の気持ちを乗せて歌ってしまったから、本当にそうなりそうで怖い。こうして今くっさんのことを探してるのに、会うのが怖い。俺にかけてくれる言葉は何なのだろう。何を一番最初に俺に伝えてくれるのだろう。もう形になったはずの俺の心がシャボン玉みたいにパッと形を戻さないように、居なくならないように、くっさんと云う光に反射して俺の身体の中でずっと浮かんでて。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!