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言葉が詰まる。
喉の奥が熱くなる。
でも、もう逃げたくなかった。
『俺な、いむくんのことが……好きや。ほんまに、大事で、離れたない』
言いながら、情けなくて涙が出てきた。
自分でも驚くくらい、ぼろぼろ泣いた。
いむくんは、一瞬きょとんとしたあと、ふわっと笑って、花束を両手で受け取った。
「ありがと、しょーちゃん。僕も、しょーちゃんが大好き」
そう言って、いむくんも泣いた。
嬉しくて、寂しくて、言葉にならない気持ちがあふれていた。
二人して、泣きながら笑って、抱き合った。
どれだけ時間が過ぎたのか分からなかったけど、夕暮れの空はだんだんと夜に変わっていった。
「短冊に書こうか、願いごと」
いむくんがポケットから、折りたたまれた紙とペンを取り出した。
俺たちは、並んで短冊に願いごとを書いた。
『もう一度、必ず会えますように』
それを木の枝にそっと結びつけると、涼しい風が吹いた。
夜空には、星がひとつ、またひとつと灯っていく。
「ありがとう、しょーちゃん。僕、ずっと忘れないから」
『俺もや。どこ行っても、いむくんのこと、絶対忘れへん』
花束の青いアネモネが揺れた。