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「初めまして、『ナギサ』さん。折角翼に入社できたんだ、お互い頑張ろうな。」
血にも見間違うような赤の双眸が、
無垢にも思えるその色が、
今は、酷く冷たく感じる。
「……あぁ、よろしく、『エーフィン』。」
差し伸ばされた手に応え、握手をするとその手は凍えているどころか、緊張で手が震えているようで、暖かく、柔い。
筋肉硬直で固くなった死体でもなく、なんの温度も伝わらない死者でもない。時間が経って死体が溶けて、ドロドロな訳でもない。
その事実に気づいたら、少し握る力が篭ってしまう。生者の温もりを忘れてしまっていたのだろうか、私は。
はは、と。自らの口から氷の様な乾いた笑みが零れる。そうか、もう忘れる程には誰とも触れ合ってはいないのか。
自らの情けなさに視界がぼやけるが、すぐに目の前の男の手を離し、眼鏡を押し退けて袖で目元を拭う。エーフィンは、カチコチと固まった表情のままこちらを見つめていた。
「…そうだ、一つ言い忘れていた。」
心残りがない前に、未練が残る前に。
「業務に支障が出ない程度に、よろしく頼む。」
さぁ、今回も始めようか。
いつまでも回り続ける地獄の続きを、
また新しい世界で、繰り返そう。