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第二十一話・終「残された言葉」
ひらり、と。
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一枚の紙が、佳の手元から落ちた。
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「……っ」
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山本美憂の視線が、それを追う。
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佳の手は——
プリクラとぬいぐるみだけを、大切そうに握りしめていた。
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まるで、それだけは離したくなかったみたいに。
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(……なんで)
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震える手で、その紙を拾う。
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封がされている。
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「……手紙」
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かすれた声。
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開けていいのか。
一瞬、迷う。
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でも。
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(……読まなきゃ)
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ゆっくりと、封を開ける。
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紙を広げる。
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そこに書かれていたのは——
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もしこれを見たって事は
見つけちゃったのかな。
それとも、救急車で運ばれて
誰かからこれをもらったのかな。
それはわかんないけど——
ごめんね。
僕は先に行くよ。
美憂。
大好きだったよ。
愛してた。
でももう——
いないよね、俺。
ごめんね。
代わりに、誰かと幸せになってね。
小太郎とかね。
最近、よく会ってることも
楽しく過ごしてることも、知ってるよ。
小太郎くんのこと、俺も見てた。
いい人そうだし、真面目そう。
安心して、お願いできそうだよ。
だから——
美憂、幸せになってね。
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「……っ」
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最後まで、読めなかった。
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途中で、視界が完全に滲んで。
文字が見えなくなった。
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「……やだ」
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ぽつりと、こぼれる。
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「……やだよ……」
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手紙を握りしめる。
ぐしゃっと音がする。
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「……なんで」
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声が、崩れる。
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「……なんでそんなこと言うの」
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涙が、止まらない。
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「……なんで勝手に決めるの」
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佳の方を見る。
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そこにいるのに。
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もう、届かない。
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「……誰かとなんて」
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首を振る。
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「……無理に決まってるじゃん」
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震える声。
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「……佳じゃなきゃ、意味ないよ……」
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手紙を胸に押し当てる。
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「……っ、好きだよ……」
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今さら。
本当に、今さら。
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「……ずっと好きだったよ……!」
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叫びに近い声。
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でも。
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返事は、ない。
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佳は、静かに座ったまま。
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何も変わらない。
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小太郎は、その光景を見ていた。
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何も言えない。
言葉を挟むことすら、できない。
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ただ。
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その手紙の重さと。
美憂の想いの深さを。
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全部、受け止めるしかなかった。
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夜景の光が、揺れる。
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その下で。
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一つの想いが——
ようやく、言葉になった。
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でもそれは。
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もう、届かない場所にあった。