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3 - 第二話 / 普段

♥

35

2023年05月26日

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私の朝は六時半すぎにやってくる。

一階からお母さんが何度も私の名前を呼ぶが、返事をしても「聞こえてないよッ!!」といつも言われるので、最近は返さずそのままいつも二度寝している。 七時を過ぎてからやっと重たい身体を動かす。

ボッーとした頭で制服に腕を通していく。梳かさずに机にある伸びきった黒いゴムで髪を結きながら一階へと降りると、既に支度を終えている二人に朝の挨拶をする。私の家族は弟と両親の四人家族だ。お父さんはお仕事に行っていて私が下に降りる頃には家にはいない。

すでに用意されているほんのり温かい朝ごはんを食べる。用をすましてそれからものの数分後、 アラームが鳴った。小学生の弟が家を出る時間だ。弟はランドセルを背負う。その同時に、今日は朝の朝礼があって少し早く家を出ようとしていたのを思い出して急いで私はリュックを持つ。

『いってきます』

渋々玄関を出る。行先はもちろん学校だ。

校舎に入ると、下駄箱に靴を置いて、上履きに履き替える。クラスのある階まで階段を登っていく。 教室に入ると先に登校しているクラスメイトにおはようと挨拶をした。あせっていたせいなのか、急ぎ足で歩いていたようだ。時計を見ると、いつもは二十五分程かかるのにその日は八分早く学校に着いたことに気がついた。

やっと暖かくなってきた制服を脱ぐ。まだ寒いな、なんて考えながら中に着ている体操服になって。 友人とどうでもいい話をして。 チャイムが鳴ると同時に掃除が始まる。一時間目が始まって…..そのまま六時間目まで授業を受けて。クラス内で帰りの会をして。 美術部に入っているのにも関わらず、そのまま家に直帰。 毎日ずっとその繰り返しだ。

つまらないな、と思った。 だから、普段しないことをしてみた。 まぁ、これはあくまで誰かにどうして掃除をするのか、と聞かれた時に答える うそ でしかない。

実際は一緒に帰りたくないとか、家に帰りたくないとか、なにも考えたくないとか。

そんなどうでもいい理由で始めただけだった。廊下や教室・全教室のお水あげ。思いつく所を放課後に掃除してみた。想像以上に汚かった。ホコリがすごく、いや、やばい量取れた。案外、思っていたよりも気持ち良くて、心地よくて、楽しかった。いつしか、すれ違う先生よりも早く元気よく挨拶をするようにもなった。先生も普通に挨拶するよりも返ってくる返事も明るかった気がする。「お疲れ様〜。」「今日もありがとうー!!」なんて言われたりもした。


嬉しかった。


でも何か違う気がした。

私は偽っていたはずだったのに、心のどこかで楽しみに感じていた。 そんな矛盾を抱えながら私はまた同じような五日間を過ごす。

最初、掃除をする日は一週間に一回だった。一緒に帰っている、部活が同じな小学生の時からの友人が、寂しい思いをしたりするかもしれないと思っていたから。ちゃんと優しい私を演じていた、のか….?

初めて掃除をしてから一ヶ月が経ったある日、席替えで隣になった男の子と話をしていた。話が尽きて数秒の間が出来た時、私はとっさに放課後掃除をしていることをうっかり話題に出してしまった。気になる!一緒にやりたい!!とお隣さんになった櫻田くんは言った。

言わなければよかった…そう思った時にはもう時すでに遅しであった。

こんなことになったのも『お隣同士で少し雑談して下さい』という指示をしたせいだっ!と少し担任の先生を憎んだ。

彼はクラスが決まった挨拶の日から目立っていたので、私は知っている。勉強よりもゲームが好きで、勉強は出来ないけど周りに受け入れられていて、男女どちらも仲の良い男の子、と認識していた。まぁ言い方を変えれば、女たらしでアホとも言えるだろうか。でも一つ羨ましいことがある。それは

「周りに自分を受け入れてくれる人が傍にいる」

ことだ。

(私も本当の”わたし”を話せていたのなら、彼のように誰かに受け入れて貰えたのだろうか?)

ある日の放課後、いつも通り教室に残って二人で掃除をした。その後、明日はどこを掃除しようかと一緒に話をしながら帰っていたら、そのまま彼の自宅までついて行ってしまった、ということもある。話し上手で聞き上手な彼は話していて聞いていて、楽しかった。その数日後の放課後に彼と私の小学生からの友人の3人で帰ったこともある。

今、思い返してみるとすごく幸せだったと思う。





少し長く書いてしまいました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

次の更新にてお会いしましょう。

ではまた。

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