テラーノベル
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少年は森の奥を彷徨っていた。夏休み、祖母の家に泊まることとなった少年は退屈を誤魔化すためか、よく森に出かけていた。
しかしそれが悪かったのだろうか。
少年は道を外れ、迷子になってしまった。
名も知らぬ鳥の鳴き声が余計少年の恐怖を駆り立てる。
ついには涙ぐんできた頃、救世主は現れた。
「きみ、大丈夫」
やさしげな声に安心したのも無理ないだろう。
「あ、あなたは」
「私はレイ、レイだよ」
白いワンピースと透き通るような肌が特徴的な少女がそこに立っていた。
「きみはどうしてここにいるの」
「ここが好きなんだ」
帰り道まで案内してもらえることとなり、ひとまず少年は安心した。
――
それから、レイとよく遊ぶようになった。
本人いわく普段は森の神社にいるとのことだ。
レイと会えたのは1種の奇跡だろう。
レイは流行りごとには疎かったが少年の知らないような沢山の昔ながらの遊びを知っており、少年はそれに夢中だった。
しかしそれも終わりを告げた。
それは何気ない言動がきっかけであった。
「最近楽しそうねえ」
祖母の嬉しそうな声色に調子に乗ってしまい、レイのことを話した。
レイから口封じされていたのに。
祖母は血相を変えて
「レイ、その子はそう名乗ったのかい」
と、少年を揺すりながら聞く
「う、うん、そうだけど」
祖母は頭を抱えながら話す
「いいかい。その子は幽霊さ」
祖母いわく、レイは村八分に会い、死んだ女の子だそうだ。
村の人間を恨み彷徨い、人の生命力を喰らう。
現在は祟り神として祭られており、森の外にはでられぬのだ。
「嘘だ。だって、レイは僕を助けてくれた」
少年は叫び家を飛び出した。
――
レイはいつもの優しい笑みを浮かべていた
「あ、また来てくれたんだね」
「・・・ねえ、レイ、君が悪霊って嘘だよね
祟り神なんて嘘だよね」
レイは少し悲しそうに微笑み、
「ほんとだよ」
「え」
レイは地面に座り込み、俯く。
「ほんとは、食べるつもりだった。」
「でも君の隣は暖かくて、無くしたくなくて」
「でも、私の中の化物が勝手に食べちゃうの」
レイの頬から1雫溢れる
「ごめんなさい。もう一緒にはいれない」
少年は微笑み、手を大きく広げ、
「最初と立場が逆だね。今度は僕が迷子を救う番だよ」
そう言うと少年は、少女を抱きしめる。
「一緒にいたい。 そのためなら、僕を食べて。」
「君と居られるなら、化物にだってなるよ」
その言葉を聞き少女は遠慮がちに抱きしめ返す。
その瞬間、少年たちの肌が透け始める。
村中から嫌われた少女はもういない。
迷子で泣いていた少年はもういない。
2人は世界一優しい化物になってしまったのだから。
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