「一旦休憩しますか」
「そうだね」
今はトレーニング中。
静かに音を立てるランニングマシンを止めて近くにあった蛍光緑の硬い椅子に腰かける。
隣をむくと、お前の首から一筋の汗が光る。天井を見上げ声を出しているせいもあり、俺を誘惑しているようだ。
水をとって飲むお前。
膨らむ喉仏と半開きの口で口元を見ながら滝のように飲み込む顔を交互にして見つめていると、ふと目が合う。
見られていることに気づいたようで、焦るように口を離すと一滴の水滴が零れる。
かきあげられた髪から滴る汗、程よくローズピンク色の濡れた口からこぼれ落ちた水滴、それを拭う筋肉とはかけ離れた細く可憐な指。
俺の理性を飛ばすには十分すぎる条件が揃っていた。
「ふふ、どうしたの?」
「ん、いや」
俺はありったけの理性を総動員して、あわてて目を逸らす。
このまま見つめ合うと、今にでも襲いかかってしまいそうだからだ。
「汗かいてるヒョンもかっこいいね 」
あぁ、それなのに下から顔を覗き込むとは、本当に罪な男。
いつも褒められなれているはずなのに、2人きりの静まり返った状況から、俺の中の天使と悪魔が討論している。
「お前もだよ」
ふは、と照れ隠しに笑うお前。
おぉう、とおちゃらけているが、その表情には余裕差が見えなく、うなじをかいている。
「はぁ、一旦って言ったけど疲れちゃいましたね、帰ります?」
「お前が帰りたいならいいよ」
「何その言い方〜…ㅋㅋ」
そう言うと、お前は俺の首をがしっと掴んで揉む。よくやるこの仕草は、良い感じに体がほぐれて気持ちいい。まぁただのマッサージの一環だろうが、今のこの状況では誘っているようにしか感じない。
「ジョングガ、俺の部屋くる?」
「いいんですか?行きます」
「何もしないならいいよ」
またまた、と茶化すお前。
珍しく肩を組んで来て、俺の耳に息がかかる。
「そんな格好で言われても、今ヒョン自分がどんな格好してるかわかってますか?」
低く、でもどこか甘いその声は余裕のなさが感じられる。
お前もそうなんだ、と気分が高まり、抑え込んでいた興奮が少しづつ漏れだしてしまう。
耳にやわらかい感覚がしたと同時に、ちゅ、とリップ音が脳に響く。
「耳にキスされただけでこんなにとろっとろに蕩けて、そんな顔されたら…」
急展開でこんなことになっているのに驚きが隠せないが、それを上回るほど、脳内を駆け巡るお前の声が気持ちいい。
「ね、だから早く帰ろ?」
俺の髪を耳にかけてぽんと頭を撫でたあと、お得意の愛嬌顔で見つめてくる。
俺がこの顔に弱いの、知ってるから。
当たり前に抗えず、小さくこくと頷いた。
その瞬間、待ってましたと言わんばかりに手を引かれ、声を出す間もなく腰に手を回されて連行される。
車のドアを大きな音を立てて閉めた後、座った後に手を握りながらそっと手に触れる程度のキスをされる。
わざと物足りなさを出すためだろうか。
俺の欲は破裂するほどになっていた。
「安全運転でね、」
「んわかってますよ〜」
前を向く綺麗な横顔に見惚れていると、肘かけにかけてある手に大きな愛おしいてかま覆いかぶさった。
俺は手のひらを回転させ指をからめる。
それを横目で確認した後、お前ははぁ…と笑いながらため息をつく。
信号が赤信号に変わり車がゆっくり止まる。
一向にこちらを向かなかった横顔の全貌が顕になると、その顔が近づいてきて頬に柔らかい感覚がした。
唇にしてくれないのがもどかしくて、こっちからしようとも思ったが、既に前の信号機は青色に灯り出していた。
家に着いた。
通るルートはいつもと変わらないのに、より長い時間が経ったように感じる。
車をおりると、膝裏と腰に手が這う感覚がした。
軽々と持ち上げられる。
「わっ、じょんぐぅ…」
「な、にしてんの、」
手足を動かせ降りようとするが、さすがは筋肉うさぎというものだろうか。どれだけ抵抗しようが腕を振りほどくことができなかった。
お前は慣れた手つきで鍵を開け、乱暴にドアを蹴り開けキングサイズのベットに俺を落とす。
「んっ、ぃた…」
「ヒョン、」
その言葉の後、獣のように俺の唇に貪りつく。
熱い舌をねじ込まれ、心拍数が上がってゆく。
酸欠で頭がぼうっとしてきた時、それを見越したように唇が離れる。
「ねぇ、早く電気消して」
「悪いけど今日はだめ、このままね」
恥ずかしくて目線をベットに固定する。
お前をちらっとほんの一瞬見るとばちばちに目が合った。どうやら、目が合うまで何もしてくれないらしい。
少しの抵抗で唇に視線を合わせると、ずいっと頭が下がり視線が絡む。
ひゅっと息を飲むと、少しお前は微笑み俺のボタンに手をかけ一つ一つ外していく。
首筋から鎖骨にかけてすーっと舌が這うと、身体が反応し仰け反る。
気の抜けたような情けない声が漏れてしまい、慌てて口をふさぐ。
お前は不満そうな顔をうかべ、片手は肘をつきもう片方の手はふさぐ手を上に固定する。
顔を見上げるしかない状況に顔が熱くなってくる。下唇を噛んで恥ずかしさに耐えると、人差し指と親指が顎に添えられ、軽くキスをされる。
先程とは違う落ち着いた様子のキス。
これだけ待たせておいて、これだけ?俺はそう思って腰を浮かせ舌を入れた。
お前は少し目を見開き驚いているようだったが、直ぐにスイッチが入り舌を絡ませてくる。
いつも俺は目を閉じているが、今日はなんだか見ていたくて目を開けると、お前は動揺で瞳が小さく揺れた。
そのまましばらく経ったあと唇を離される。
「ふは、今日なんでテヒョンアそんな強気なの?」
「だってっ、お前がじらす、から…」
「自分から来てるくせにもうイきそうじゃん」
そう言って茶化すお前も珍しくとろとろに蕩けている顔だ。
俺も大概だとは思うが、その滅多にない顔を脳内にやきつけておきたくて、何も考えずにまじまじと体を舐めるように見る。
「何?」
「んいや、かわいいなぁって」
「なんで、ㅋㅋ」
そうやって照れたように笑う顔がいつも俺を刺激する。
「ぁ!!!っていうかひょん、シャワーしなきゃだよ!!」
「ぁ…」
鼓膜が破れるほどの声量の大きさと嫌な内容に耳を抑える。
ごめんごめんと笑いながらお前は会話を続ける。
「もぉお、せっかくいいムードだったのにね」
「やだ…」
俺もやですよ、と腕を掴んで引き上げる。
突然の出来事に呆然としていると、早くと言わんばかりに唇を重ねる。
駄々をこねる幼稚園児と、それを言い聞かせるお兄ちゃんのような状況。
俺は手を引かれながらもはだけたシャツのボタンを直す。
「ね、浴び終わったら絶対だから早く入ろ?」
蜂蜜のような甘い顔__俺が弱い顔で見つめられる。
さっきもこんなことあったな、そう思って頷く。
この後、思っていたよりもジョングガは限界だったようで、翌日声が掠れるほどにされるということを、この時の俺はまだ知らない。
ーーー𝑒𝑛𝑑ーーー
コメント
9件
最高です!!!! テテ受け🐻💜ちょっとした グクの大人感とテテのぽやぽや(?)感がたまらん🤤♥️ 良ければ他にもグテやって欲しいです🥺
テテ受け(?)最高です!