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「そうだったんですか……」
大切な人……
祐誠さんは、私のことをそんな風に紹介してくれてたんだ。
すごく、嬉しい。
「うちには、私も含め幅広い年齢層の榊様ファンがたくさんおりますから。みんな驚いてましたけどね。でも、お2人を見てとてもお似合いだと思いました。憧れのお兄ちゃんみたいな人ですけど、美山様なら結婚されても安心です」
け、結婚って……
「そんな、まだ結婚とかは全然……」
「え! プロポーズはまだなんですか?!」
「そんなの、してもらえるかもわかりませんよ」
私は、苦笑いした。
「榊様、あんなにイケメンなんですから早くプロポーズすればいいのに。きっと照れてるんですよ。昔から女の子とキャッキャするタイプじゃないので……って、すみません。私まで無駄なおしゃべりばかりして」
可愛い人、すごく好感が持てるし、きっと良い女将さんになるだろう。
「お話ししてもらえてすごく楽しかったです。緊張がほぐれました。ありがとうございます。ここの方達に見守ってもらって、祐誠さんは大人になったんですね。この旅館にはきっと、祐誠さんの思い出がいっぱい詰まってるんですね」
「本当に……小さな子どもの頃から来て下さってるので。思い出の場所と思ってもらえたらすごく光栄です。あっ、だったら、ここをずっと守らないとダメですね。実は私、来年結婚するんです。相手はここの料理人なんですけど……」
「そうなんですか! それはおめでとうございます」
「ありがとうございます。結婚したら本格的に女将修行が始まるんです。だから、榊様と美山様が次に来られる時には、女将として、ご夫婦になられたお2人をお迎えしたいです」
そう、笑顔いっぱいに言ってくれた。
「夫婦……私達もそうなれるといいですけど……まだわかりませんから。とにかく、本当におめでとうございます。何だか嬉しいです」
こんな若い人が女将修行をして頑張っていくんだ……とても大変な仕事だろう、私も頑張らないとな。
私は、なぜかそこから「結婚」という2文字が頭に張り付いたまま離れなくなった。
祐誠さんは、何度もずっと一緒にいたいって言ってくれたけど、それは、一生なのか今だけなのか?
私には……わからないから。
「ただいま」
「あっ、榊様、お帰りなさいませ。では失礼致します。ごゆっくりなさって下さい」
仲居さんは慌てて出ていった。
「彼女に何か言われた? 女将さんに似て、おしゃべりな子だからな」
「いえいえ、何も言われてないですよ」
「嘘が下手だな、雫は」
「あっ、来年結婚するんですって。ここの料理人の方と……そういう話をしてました」
慌ててごまかす。
「結婚? あの子が結婚なんて、ちょっと信じられないな」
祐誠さんは優しく笑った。