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うめぼっち

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臣桜
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鷹槻れん/鷹槻うなの

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#恋愛
水無月 京
1,300
「豆さん、仕事するなら言ってください!」
私飲んじゃったから頭回らないですよ!
半ば悲鳴のような声を上げる私を見下ろして、豆さんはニヤリと笑う。
「馬鹿、仕事じゃねぇよ」
そこまで無粋じゃないのよ、俺も。
豆さんとオフィスを掛け合わせたら仕事しか出てきませんけど、と言ってみても「ひどい言われようだな」とまるで相手にされない。
まあまあ、と何故か宥められながら弊社の職場に逆戻りする。巨大なビルが闇の中に聳え立っていて、ずいぶんな威容がある。ビルの上層階はまだ当たり前に電気が付いている窓の方が多くて、なんとなく申し訳ない気持ちになる。
「こっち」
短い言葉で誘導されて向かったのは、オフィス用の入館ゲートではなくて、一般向けの店やレストランが入っている入り口。
時々、時間があるときにランチをしたり、帰りがけに少しウインドウショッピングをすることもあるけれど、基本的にはあまり馴染みのないエリアだ。
「…買い物?」
「それはまた今度昼間にしような」
落とされた返事にどう反応していいのかわからなくて、頭の中で必死に読みといていると、たどり着いたのはエレベーターだった。
点灯した行先ボタンを見るに、我々は地下に行くらしい。
チン
軽い音と共に到着したのは、地階の駐車場のフロアだった。
ここまで来ればなんとなく意図が察せられて、ゆっくり歩く豆さんの隣を静かに歩く。地下の空気はひんやりしていて肌寒い。
程なく目的の車に着いたようで、電子音と共に室内灯がそっと灯される。
「どうぞ」
シルバーの輝く車体は、国内の高級ブランドのセダンで。車に詳しくない私でも、ブランドのエンブレムだけはよく知っている。
今からこの高級車に乗るのかと思えば、新たな緊張感が生まれてくる。そんな私を豆さんは知ってか知らずか、こともなげに助手席の扉を開けてくる。
「じょ、助手席は流石に恐れ多いです…!」
「んー、後ろの席は荷物でいっぱいなの、ごめんね」
にっこりと、しかしキッパリと後部座席に座ることは拒否された。
ここからでも後部座席はずいぶんスッキリしている様子が見えますけどね?もう一回ぐらい追撃しようと思えば「はやく」と催促されてしまう。
「そんなに俺の隣嫌?」
「え、ち、違います。そういうことでは…」
「はいじゃあ乗って」
私に勝ち目などなかったようだ。
諦めて「おじゃまします」と呟いて助手席に乗り込む。
革張りの座席は重厚感に満ちている。本来、きっと快適な座り心地を味わえるのだろうけれど、緊張感のせいで全く伝わってこない。
新車ではないのだろうけれど、微かにまだ革の匂いがする。ここで万が一シートを引っ掻いて傷でもつけたら、弁償費用で一体いくらかかるだろう。
「…なんでそんな緊張してんの」
レストランよりよっぽどカチコチじゃない、と呆れたように笑う豆さんは、本当に何も分かってない。
「車の内装を傷つけないように必死です」
「何、弓家さんの体からは棘でも生えてるわけ」
普通に座りなよ逆に疲れるでしょう。
穏やかに笑いながら、スーツのジャケットを脱いで後部座席に放り投げる。そして、さらにカフスボタンをはずして袖を捲り始めるのだから、もう一周回ってなんの罰ゲームなのかと泣きたくなる。
顔を背けて、なにひとつ面白味のない地下駐車場を一生懸命見つめていることにして。いつものシトラスが心なしかより強く香っているような気がするのも、きっと気のせいだからと必死に唱える。
「弓家さん、家どこ」
ナビを操作しながら豆さんの低い声が耳に入る。問われて、改めて彼が私を家に送ってくれようとしていることを思い出す。
「あ…」
「あ、別に家の住所知りたいとかじゃないんだけど」
でもあんまり家まで遠いと危ないし…。一人でやや煩悶とする豆さんはいつもの調子で、つられて私の動悸もようやく落ち着いてくる。
「いや、豆さん不審者ムーブしますけど別に豆さんなら住所知られても大丈夫ですから」
「そういう意味不明な信頼やめた方が良いよ?」
誰彼問わずそんなんだといつか危ない目に遭うよと、何故か不機嫌そう。
いや、これは豆さんだけですから!と隠すはずだった本心が咄嗟に口をついて出たことで「ほんとに?」と訝しげな視線が私にぶつかる。
「もう、ほんとうですってば。会社で他に住所教えたことある人いませんから」
梓にだって、大まかな最寄り駅ぐらいで住所までを明かしたことはない。まあ、特に教える必要がないから、というだけなんだけど。
「…それならいいけど」
幾分機嫌を持ち直した彼は、私から聞き出した住所をナビに入力する。
「今なら20分か」
夜は空いてるね、と言いながら豆さんは「動くよ」と静かにシフトレバーを操作し始めた。
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