テラーノベル
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ズンズンと、重低音がダンススタジオの防音壁を揺らしている。連日続くハードなリハーサル。もうすぐライブ本番が近い。照明の熱気とメンバーの熱気が充満する部屋の中で、シューヤは必死に呼吸を整えようとしていた。
11(……やばいかも、視界がぶれる……)
フォーメーション移動の足取りが、ほんのコンマ数秒遅れる。手先のキレが失われ、自分の体がまるで水中で動いているかのように重い。
5「はい、一旦ストップー!10分休憩!」
ユーキの声が響いた瞬間、他のメンバーたちが振り付けの確認など声を掛け合いながらドリンクボトルに手を伸ばす中、シューヤは壁際に滑り込み、うつむいた。
荒い息を殺そうと胸を圧迫するが、心臓は早鐘のように打ち鳴らされている。額から流れる汗は、単なる運動の汗ではなく、じっとりと嫌な冷たさを孕んでいた。
11(もうすぐライブなのに、ここで俺が倒れたら、タカシくんに迷惑かけちゃう…それに全体のスケジュールが狂うし、絶対にバレちゃダメだ)
強がりと責任感だけで、シューヤは必死に意識を保とうとしていた。
しかし、そんなシューヤの焦燥と異変を、最初からじっと見つめている視線があった。
同期であり、グループ内で1番仲のいいマサヒロだ。
マサヒロは水分補給をしながら、チラチラとシューヤの様子を窺っていた。今日のシューヤはあきらかにおかしかった。動きがいつもより鈍く遅い。
休憩に入った途端、誰とも話さず壁際に行きそのまま動かない。
何より、首筋から耳元にかけてが真っ赤に火照っていた。
マサヒロは迷わず歩み寄り、シューヤの前にしゃがみ込んだ。
12「……シュー、ちょっと顔上げて」
11「ん……? あぁ、マサ…なに? なんか確認あるんなら、次の休憩に――」
12「いいから」
マサヒロはシューヤの言い訳を遮り、強引に手を伸ばして前髪をかき上げ、躊躇うことなく自分の掌をシューヤの額にピタリと押し当てる。
11「マ、マサ…?なに、」
12「…お前、バカだろ」
掌にはありえないほどの熱を感じた。
マサヒロは苦々しい表情で眉を寄せ、手を離した。
12「熱、めちゃくちゃあるじゃん。なんで言わないの」
11「ちがうし、これは、ダンスで体が温まっただけだし…」
12「嘘つけ。ダンスでこんなならないでしょ、熱すごいよ。」
11「…だって、もうすぐライブ本番じゃん、俺が抜けたらタカシくんに迷惑かけちゃう。それにフォーメーションだって崩れるし…」
12「確かに迷惑はかかる。でも本番に倒れたりとか、途中で抜けられたりする方が困るんだけど」
11「でも…」
5「休憩終わりー!続きするよ!」
なんて言い返そうかと考えていたらリハが再開してしまう。
とりあえず立ち上がろうとした。立ち上がらないとリハが進まない。
すると視界が大きく揺れ、限界を迎えた膝がガクガクと砕けた。
11「うわっ――」
12「ほら言わんこっちゃない…今日はもう無理でしょ、帰ろう。みんなに言ってくるから帰りの支度しといて」
12「すみませんシューヤ体調悪いみたいで――」
あぁマサにも皆にも迷惑かけたなーなんて思いつつゆっくりと帰り支度を始めた。
12「準備終わった?タクシー呼んでるから、行こ。歩くのしんどいでしょ…ほら、捕まって」
11「ん、ごめん」
12「いいよ、あやまんなくて」
14「シューヤくんお大事にー!」
7「シューくん無理はせんといてな…!」
3「早く元気になれよーなんのために筋肉つけてんだよー」
2「お大事にな、シューヤ」
など、みんなの心配の声と気遣いに申し訳なさとありがたさを感じながらリハ室を後にした。
…元気になったらリョウガはしばく。
タクシーで帰りついたのはシューヤの自宅。
マサヒロはシューヤをソファに座らせ、看病の準備をテキパキと進める。
その間にシューヤの脇に体温計を挟んでおくことにした。どうせ熱高いから時間かかるだろうし…
11「絶対熱ないから、おれげんきだし…」
ボソボソとそんなことを言ってるシューヤを放っておいて準備を済まし、シューヤの横に座る。
するとタイミングよく体温計がなった。
体温計の画面には38.7の数字。
12「うわぁ…朝からしんどかったんじゃないのこれ、よくリハ来れたね…」
11「絶対ばぐってるよそれ、おれげんきだって」
12「はいはい…言っとけ言っとけ。それよりなんか食えそう?」
11「んー、ゼリーなら…食えるかも…」
ゼリーなら食えるらしい。仕方ないので冷蔵庫にあったゼリーを投げつける。
11「いった!?え、病人だよおれ!?ちょっとは優しくして?!!」
…元気なのは本当っぽい。
12「とりあえずゼリー食ったら寝て。その熱で風呂は危ないし…」
11「え、風呂ダメなの…?入りたかった…」
12「当たり前でしょ。早く食って早く寝ろ。」
――数時間後
12「やっと寝た…」
ゼリーを食べたあと、熱のせいか疲れきったようで、布団に入ったあとにすぐ寝た。
俺は帰ろうとした。したのだが…腰掛けていたベットから立ち上がって進もうとしても進まない。シューヤの手が俺の服の裾を掴んで離さないのだ。
12「これじゃ、帰れないじゃん…」
仕方ないので少し様子を見ることに。明日はメンバー全員オフだ。少しくらいいか…
それにいくら仲のいい親友だとはいえ、あまり寝顔をよく見ることはない。二度とないチャンスだと思い、シューヤの寝顔を観察することにした。
12(…シュー、意外とかわいい顔してんだよな)
そう思い、熱で赤らんだもちもちなほっぺを指でツンツンしてみる。柔らかい、刺し心地抜群だ。しかし突っつきすぎたようだ、
11「ぅん…」
12(やべ、起こした?)
ただ顰めっ面になっただけで起きてはない。セーフ。
シューヤはゴロンと寝返りを打ち、俺の裾から手が離れる。
これは帰るチャンスかと思ってタクシーを呼ぼうと時計を見る。しかし、あまりにも夜が遅くなってしまった。どうしようもないのでシューヤのソファを拝借して寝ることにした。
――翌朝
11「ん、もう朝…?」
目が覚めるとマサヒロがいない。もう帰ってしまったのかと少し寂しさを感じつつ、喉も乾いてきたのでリビングに行った。
リビングに行って驚いた。ソファでマサヒロが寝ている。
11「え、こんなとこで寝てたの…」
ずっと居てくれたことに喜びを感じながらも申し訳なさを覚えた。
11(とりあえず起こそう…)
11「マサ、おはよう。朝だよ」
12「…ん、あれ…起きてたの?おはよう…」
11「ふふwマサ、おもしろい寝癖がついてるよ笑」
12「えうそ。マジか…てかまって体調は?大丈夫なの?」
11「うん。おかげさまで」
12「ほんと?良かった」
「とりあえずさ、風呂借りていい?」
11「あ、入ってなかったの?」
12「誰かさんが俺の裾掴むから入る暇もなかったんだよ」
11「…んー、だれだろーなー…」
12「白々しい笑」
11「んふふwてか早く入っておいでよ。下着新品あるし、服貸すよ」
12「え、服いいの?ありがとう。…でもシュー先入りなよ。汗かいてない?」
11「あー、たしかに言われてみれば…」
12「じゃあ先入っておいで」
11「おっけー!」
シューヤが風呂に入ったのを確認し、昨日看病で使ったものを片しておく。
とにかく元気になったみたいでよかった。
2人とも風呂を済ませ、のんびりすることに。
11「てかマサ、よく気付いたね」
12「ん?なにが?」
11「俺が体調悪いの、みんな気付かないと思ってたのに…」
12「どんだけ一緒にいると思ってんの。すぐ分かるよ」
11「いうて4年とかじゃね…?」
12「それは触れない約束」
11「ふふ、wあははww」
12「うるさ!シューって病み上がりでもこんなうるさいの…?」
11「うるさくないし…でも、マサがずっといてくれたの、嬉しかった。だからテンション高いのかも…」
12「ふーん…、」
11「…なにニヤついてんだよ笑」
12「は、ニヤついてないし、てかシューこそ顔赤いけど?笑」
11「これは病み上がりだからだし」
12「言い訳だ、照れ隠ししてる笑」
11「ちーがーう!もー!!」
12(いつも通りのシューだ。…元気になってよかった。)
オチ迷子で申し訳ないです💦
コメント
1件
ああ〜〜〜!!めっちゃ良かった😭💕 無理しちゃうシューヤと、そっと気づいてあげるマサヒロの距離感が尊すぎる…!「お前、バカだろ」って言いながら看病して、寝顔ツンツンしちゃうの、親友の特権すぎてキュン死に寸前だったよ…🫠💞 最後の「病み上がりだから赤いんだし」って照れ隠しも可愛すぎて反則!! オチ迷子って言ってたけど、全然気にならなかった〜!続きめっちゃ気になる!!
#ゆり組
有栖
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