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悠香 @ギザ歯教
MIRAN@また新作だすかも?
──────メテヲさん視点──────
そこからの戦闘は地獄であった。能力に頼らないで戦うすべはいくらでもあるが、それはお父様には全く効くことがない。メテヲが死角から蹴りを入れようとしても、お父様は素早く回避し、逆に反撃をくらう。また、剣を交わしたと思ったら、すぐさま2番目の剣がメテヲの喉元をかすめる。一瞬でも油断したら、その圧倒的なスピードに蹂躙されるだろう。
息が荒くなる。それに比例するように脇腹が痛くなり、スピードが落ちる。そうすると、お父様の攻撃がかわしにくくなるわけで、段々とかわせなくなり、致命傷を避けることしか出来なくなる。一方お父様は汗ひとつかくことなく常に一定の距離を保ちながら攻撃をしかけてくる。お父様の作戦はわかる。長期戦の体力切れだろう。それは、メテヲに有利なはずだったのに。今じゃこのザマである。相手がお父様じゃなければ、こんな苦戦することもなかっただろうに。そんな文句を一つ垂れる暇もなく、常に回避に専念させられ、攻撃にまわることが出来なくなる。段々とメテヲは焦燥感に駆られ、冷静さを失う。本当にまずい。メテヲの中に、負けの可能性が、メテヲが勝つ可能性よりも高まっていく。何とか、何とかしないといけないのに。だって、当主になって、そのまま神にカチコミをしに───。
そんな思考になって、ふと気づいてしまう。なんで、メテヲは神に逆らおうとしているのだろうか。別に、メテヲは神との接点はないはずなのに。どうしてこんなにも怒りにかられて行動しているのだろうか。
──────《それが、あなたの使命だから》
ふと、脳内に声が聞こえた。メテヲの声ではない、なにかの声。けど、メテヲにとってその声の主は重要ではなかった。ただ、戦いの邪魔をする厄介なもの。もしかして、お父様の精神攻撃か?いや、メテヲがこの声に動揺してスキを見せることが狙いか…?そんなことを考えていると、その声はさらに大きくメテヲの脳内に響いた。
《あなたが私の契約に応じるならば力を与える》
そう、声の主が所謂甘い囁き、というものをしてくる。だが、それはメテヲを味方に引き入れたいのなら悪手だ。メテヲは脳内でその声の主にはっきりと言い切ってやる。
(メテヲは自分の力で勝ちたいんだ!お前の契約なんて受ける気ねぇーよ!)
そう言い切って、やつの存在を思考から追い出す。メテヲは改めて目の前のお父様に目を向ける。メテヲの能力を消したと思われるあの忌々しい剣。もし、あの剣の能力によってメテヲの能力が消されたとしたら、あの剣を壊してしまえばメテヲの能力が戻るはず。あの剣に狙いを定めろ。次、次あの剣がメテヲに振り下ろされた時、それを叩き壊してやれば───!!
そう意気込み、そのチャンスを伺う。正義の剣がメテヲの視界に数回入ってくる。けれど、今度はもう臆さない。メテヲはその攻撃を捨て身で受ける。斬撃の当たったところが砕ける感覚。肉がホロホロと落ちるが、そんなものには構っていられない。正義の剣を振るう。その一瞬の隙をメテヲはずっと待っていたのだ。そのまま、闇の剣に思いっきり光魔法を当てる。
その魔法を発動させる。一か八かの賭けであった。これを外せばもう一度この魔法を打てるほどの魔力はもう残っていない。そう、この魔法であの忌々しい剣を消すっ!!
メテヲの命運を賭けたその作戦は
──────見事、当たったらしい。あの剣は光に包まれ消滅し、それと同時にお父様の一撃を避けていた。やってやったのだ。その瞬間、メテヲのドーパミンがドパドパと溢れ出し、今までにない幸福感としてやったり、という感情を抱く。
先程まで負ける、なんて意気消沈していた自分が信じられない。希望が見えた途端、メテヲはその槍を強く握りしめ、軽やかに飛び跳ねて、お父様を見下げる。
そこで、ようやく気づく。お父様が、動いていないことに。まるで、石像のごとく固まったお父様に疑問を抱くのと同時に、その空間に音が一切響かないことに違和感を感じる。その空間で唯一動けるメテヲが、まるでこの世界の異物みたいにその場に取り残された。
メテヲは直感的にその現象を理解する。メテヲの能力がたった今、進化して時を止められるようになったのだと。
「───ははっ!」
メテヲは口角を上げ、笑う。窮地は時にその生命体の限界値を引き上げる。知識では知っていたけれど、メテヲがその窮地に陥ったことがなくて味わえなかった感覚。最っ高に気分がいい。メテヲはそのままお父様の心臓に矛を向ける。このまま一突きすれば、メテヲの勝ちだ。たとえ追い詰められようと最後に勝つのはいつだってメテヲだ。この勝利に酔いしれようと思った時、不意にメテヲは動きを止める。 ───己の手が震えているのだ。恐怖?焦り?どれも違う。メテヲの気分は恐怖の真反対の最高潮だし、この勝ち確の盤面で焦ることなんてない。じゃあ、なんで手が震えているのだろうか?どうして、力が入らない?
───なんで、なみだがとまらないの?
「は…っ今更、何を日和っているんだ?」
自分自身に、そう問いかける。そうだ。どうして動きを止めているんだ、メテヲは。ただ、一突きすればいいだけ。相手の不意打ちを気にする必要も無いし、抵抗してくることもない。相手は老体で体はもうボロボロだろう。じゃなきゃ長期戦なんてしないで、速攻片をつけてくるはず。これほどまでに楽な決着はないだろ?なんで、動けよ。早く、終わらせろ。
メテヲ、今まで誰かを殺したことあったっけ?模擬戦では、命までは取らないし、殺す方法は知識として知っているだけ。だから、当然弱点も知っている。その弱点を今、つこうとしているだけじゃないか。
どうして、息が荒くなる?どうして、涙が止まらない?どうして、手は動かない?
訳分からない。早く、早く終わらせろよ。そう、願っているのに。どうして、思い通りにならないのだろう。あぁ、なんで、なんで?
それが、自分の正義というなら貫き通せばいい。誰に対しても公平に。そして平等にするのがイヴィジェル家というものだろう?
ある日言われたその言葉を思い出す。誰に言われたのだろうか?お父様?お母様?ぐさお?それとも教師だろうか。誰から言われたか分からない言葉に、メテヲは勇気を与えられる。そうだ、平等に。お父様だからといって容赦してはいけない。そうしないと、次期当主の席には座れない。
そう、己の中で決着をつけ、メテヲはその槍を構え直す。最後に深呼吸。そして、今までの恩と感謝を忘れずに。
そう、一突き。
そして、メテヲはその戦いに勝利を収め、そして初めて殺しを行った。
ここで切ります!初の人殺しを書くのは何度だって難しいですね…。なんか全く同じ展開になりそうで怖いなぁ。でもやっぱり覚醒はかっこいいなーって思いながら書いてます!楽しい!
それでは!おつはる!
コメント
2件
覚醒とか強化イベントとか入れようとするとそうなるよね