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「そんな……」
「1人でいる方が落ち着くし、それに、今誰かと付き合ったとしても、仕事と勉強とで結構ハードだから、ゆっくりデートもできないだろうしね。ほんの少しでも時間が空いたら寝ていたいし」
確かにそうかもしれないけど……
「でも、一生1人なのは寂しくないの?」
「俺、1人じゃないから。1人だなんて思ったことないよ。いつも側に父さんとあんこさん、親戚のみんながいてくれるし。結構毎日にぎやかだよ」
「それは心強いと思うけど……」
「何度も言うけど、俺には雫ちゃんがいるから。たまにだけど、声は聞ける。遠くにいても、それでも繋がってると思える。だから、俺はこのままで十分幸せだよ。嘘やごまかしじゃないし、もちろん負け惜しみでもないから。本当にそう思ってるから安心して」
慧君はその言葉を一言一句丁寧に、そして、静かに言った。
それが、私の心に優しく突き刺さった。
「ねえ、お母さん。あっちでパン食べよ」
正孝が私を呼びにきた。
「そうだね。あんこさんのパン食べたいね」
「うん! お兄ちゃんも一緒に食べよ」
「お兄ちゃん……?」
慧君は初めて会った正孝にそう言われて、ちょっと驚いてた。
「お兄ちゃん、お母さんのお友達でしょ?」
慧君は、正孝のその言葉にゆっくりうなづいた。
そして、姿勢を低くして、
「うん、そうだよ。君のお母さんは……とても大切なお友達だよ」
そう噛み締めるように言った。
正孝はニコッと微笑み、私の手を引いて祐誠さんのところに連れていった。
久しぶりに食べるあんこさんの料理。
私達のお祝いも兼ねて、心を込めて作ってくれたって。
本当に本当にすごく美味しくて……
みんなの笑顔を見てたら、何だかちょっと泣けてきた。
慧君の幸せ……
あんこさんの幸せ……
私は、ずっと祈ってる。
雄大な北海道の地で、大切な人達と綴った素敵な思い出。
その思い出は、二度と忘れられない大切な宝物として、深く心の中に焼き付けられた。