テラーノベル
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彼女目線見ていない方は先に彼女目線見てください。
絶対ですよ。
短編6の続き
〇〇と別れるために俺は、山の上の展望台を目指していた_そこは『カップルで行くと別れてしまう』と言われている場所だった_いざ、駐車場の車を停めると、たくさんのカップルで賑わっていた_本当にここが『カップルで来ると別れる場所』なのか、やはり俺は疑った_「ねえ見て、今日あっちの方で花火大会やってるらしい」助手席で〇〇が、スマホを眺めていた_「帰りに寄ってかない?」そう言って微笑む〇〇に、俺はこの後別れを告げなければならない_俺は先月、『男性不妊症』と診断を受けた_それは将来、自分の遺伝子を持つ子供が、授かれないと言うことだった_その事を〇〇には、ずっと話せずにいた_〇〇とはよく、2人の将来のことを話した_子供は3人がいいとか、女の子がいいとか、きっと私たちに似てくせっ毛だろうねとか、そんな話をしていたからこそ、俺は離れてあげないと思った_付き合って3年、水と油のような正反対の性格の2人なのに、一緒にいるとものすごく居心地が良かった_弾き合うことで、お互いを刺激し合うような、どこのカップルにも負けない特別はパートナーだった_だからこそ、別れる時くらいは、未練の残らない普通の別れ方が良かった_身体のことは伏せて、ただ冷めたからという理由で別れを告げることにした_けれど最近の〇〇は何を話しかけても曖昧な返事ばかりで、向き合おうとはしてくれなかった_もしかすると〇〇は、気づいているのかもしれなかった_病院で貰った診断書は、引き出しの奥に仕舞っていた_それをもし、〇〇がこっそり見てしまったのだとしたら、〇〇はきっと別れを切り出すことに遠慮をしている_俺を気づつけないように、別れの理由が言えずにいる_もしそうなら早く、向き合わないといけなかった_自分たちじゃ決めることができないのなら『カップルで行くと別れる場所』に頼るしかなかった_そこならきっと、別れることができる、そう思った_展望台で夜景を眺めながら、俺は〇〇に伝えた「ここで、話しておきたいことがある」_〇〇はすぐに「ごめん……」と謝った_俺は「見たんだね……」と〇〇に聞いた_〇〇は黙ったまま、軽く頷いた_やっぱり〇〇は、気づいていた_ずっと〇〇が口にできなかったのは、やっぱり俺を気づつけたくなかったからだった_俺はもう、自分の身体のことを口にもしたくなかった_だからこそ、知られていたことは都合が良かった_うつむく〇〇に俺は「こうなった以上、もう恋人ではいられない」と言った_彼女の肩が落ちて、表情が段々と暗くなった_これ以上話すと、俺も泣いてしまう、そう思った_幸せと言うものは、どちらかが裏切らない限り、ずっと続くと思っていた_明日も明後日も、変わりなく訪れるものだと勘違いしていた_幸せは薄い膜で覆われていて、針のようなたった1突きで壊れてしまった_どうして俺は、こんな身体になってしまったのだろう_〇〇と幸せになろうって決めたのに_どうして_本当に申し訳ない_こんな身体になってしまって、本当に_「ごめん……」俺は深く頭を下げた_そして、〇〇に背を向けた_歩き出す俺を「待って」〇〇は止めた_淡い期待が、俺の瞼を押し開けて涙を溢れさせた_左腕で目を擦り、ゆっくりと振り返った_ちゃんと〇〇が送り出せるように、俺は口角を上げた_ここは笑顔で、俺は大丈夫だからって、「バイバイ」泣いていた割に、俺はしっかりと笑うことができた_〇〇は少しだけ送って、振り絞るように「下まで送るよ」と言った_2人の決断が揺るがないように「会話は禁止ね」と言った_車に乗り込み、約束通り〇〇はずつと黙っていた_帰りは、〇〇が運転をしてくれた_俺助手席で窓の外を見ていた_いつか〇〇が赤子を抱いた時、俺のことが少しでもよぎらないように、俺はできるだけ無表情でいた_最初から混ざり合う気はなかったかのように、冷たく、冷めた目で外を眺め続けた_見た目を性格も、正反対な2人だったからこそ刺激的な3年間だった_混ざり合えなかったからこそ、別れの時は簡単だった_車を降りる時、〇〇と少しだけ目が合った_言葉は交わずに、ただ2人同時に手を振った_車を降りて、俺はライトに照らせた道を歩き出した_明かりが途切れて、俺はゆっくりと後ろを振り返った_薄暗闇の中で、彼女がハンドルに顔を伏せていた_「どうか神様、彼女を幸せに導いてください」俺はそう願いを込めて、ゆっくりと前を向いた_走り出す車の音を聞きながら、俺は1歩ずつ歩き出した_見上げた空には、月と朝焼けが遠慮し合っていた_まるで2人のようで、鮮やかに混ざり合う空に、俺は少しだけ泣いてしまった_
コメント
3件
質問!!なんでこんな最高な作品を作れるんですか!