テラーノベル
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朝、ベットの上で目を覚ます。
カーテンから淡い朝日が差し込み、階下からはトントンという子気味いい音と味噌汁のいい香りが漂ってきた。
俺はベットから起き上がり階段を降りると、嫁がいるはずのキッチンのある部屋を通り過ぎて、そのまま洗面所に向かい身支度を整えた。その後はワイシャツに着替え、ダイニングに出る。
「おはよう、あなた。今日はよく眠れた?」
「……はよ。」
短くそれだけの返事をすると、席について何も言わずに朝食を食べ始めた。淡々と食事を済ませ、食べ終わった食器はシンクに置くこともせずスーツを羽織る。
すると、聡子が弁当を差し出してきた。
「はい、あなた。今日のお弁当。」
俺は無言でそれを受け取り、そのまま仕事に向かった。
帰宅し、玄関の扉を開く。
「……ただいま。」
本当に小さな声で言うが、すぐに俺に気づいた聡子が笑顔で顔を上げた。
「お帰りなさい。晩御飯できてるよ。」
キッチンの方からいい香りが漂ってくる。今日の夕飯は魚の煮物だろうか。
俺はソファにスーツと荷物を適当に置き、席に座った。聡子は俺が置いた物を手際よく片付け、食事を食器によそってから出す。
聡子も席に座ってから、軽く手を合わせて食べ始めた。
「それでね、今日は近所の田中さんが〜〜」
食事中、基本俺は喋らない。聡子が一方的に話を続ける。そんななか、俺は珍しく口を開いた。
「……いつもありがとうな。」
呟くような声だっただろう。しかし、それを聞いた瞬間聡子の表情が変わった。
「あの人はそんなこと言わない。」
は?俺が固まっている間に、聡子は困ったようにブツブツと呟きながらスマホを弄る。
「またバグかしら……全く、何のためにロボットを買ったのか分からないわ。」
聡子はどこかに電話をかけ始める。途中でチラチラと俺を見る目は酷く冷めたものだった。呆気に取られているうちに電話は終わり、聡子は席を立ち上がり俺に近づく。
「聡子、何を……」
「気持ち悪い。その顔でそんな声を出さないで。」
カチッと音がして意識が暗転した。暫く機体の中でメモリが消されていく機械的な音だけがする。
『初期設定ガ完了イタシマシタ。アナタノ理想ニ設定シテクダサイ。』
私ノ口カラ、無機質ナ声ガ流レテキタ。
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