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Dream of memorY.5
ーどうすればいいんだろう。
わからない。
親から暴力を振るわれているのなら、
どうしたらいい?
『・・・』
あの子のことばかり考えていた。
俺は頭を横に振る。
違う!
あの子は、騙してるんだ。
きっとそうだ。
信じてなんか…
アレを見て、信じるなと言われる方が難しいだろう。
なら、やっぱり…
学校に行く。
今日も変わらず、暴力を振るわれる。
痛い。
なのに、
足りない。
あの子はもっと…
『くっ‼︎』
歯を食いしばり、拳を強く握りしめる。
そして、
『大丈夫?痛い?』
あの子が、心配してきた。
『別に、痛くないからいい。』
この子に比べれば、
なんともないのと変わらなく感じる。
『狼夢君、無理してる?』
無理、
それは…って、
『狼夢、君?』
『うん、狼夢君。』
いつもと違う。
いつもは確か、狼夢さんって言ってたような。
『昨日、そう呼んでいいって訊いたらいいって言ってくれたよ?』
そうだっけ?
覚えていない。
そういえば…
そんなことを訊かれて、
適当に返したような…
まぁ、いいや。
『別に、無理してない。教室行くぞ。』
『うん。』
今日は、
『人狼。コイツらは、産まれた時から最低なヤツだ。』
酷い授業だ。
僕は、教室の前に立たされる。
『人狼には、こう!するといい。』
先生に殴られる。
そして、周りから笑われる。
人の苦しむ姿を見て笑えるなんて、
素晴らしいクズだな。
そんなことを思った。
休み時間、
泥水をかけられて、
髪を引っ張られて、
膝蹴りをくらう。
『お前も、ゴミだな。』
なんだよそれ。
お前らがゴミだろ。
でも、そんなこと言えない。
水道で、頭を洗う。
身体の方は、仕方ないか…
給食の時間。
俺とあの子の机の上に乗せられたのは、
残り物ばかり。
そして、
ゴミが入っている。
こんなの、いらない。
食えるわけがない。
『お腹、すいた…』
そうだよな。
でも、食べれるものなんてない。
あの弁当屋に行くか。
俺は立ち上がり、教室から出る。
『まってぇ!』
あの子がついてきた。
『弁当屋に行くぞ。』
あそここそ、信じていいのかがわからない。
でも、あそこしかない。
そして、弁当屋へ。
『今日もきたのか。ほら、弁当だ。』
『ありがとうございます。』
弁当を受け取って、公園で食べる。
さて、戻らないと。
学校に戻って、
つまらない授業を受けて、
帰る時間になって、
帰ろう。
あの子と帰る。
『お前は、俺のことを疑ったりしないのか?』
気になって、訊いてみた。
すると、
『ううん、疑ったことなんてないよ?だって狼夢君、優しいもん。』
『おまっ!優しくなんてないって言っただろ。』
でも、
『ちゃんと優しくしてくれたよ?』
この子は言うことを聞かない。
『そんなこと…』
『ごみって、名前で呼んで欲しいな、』
本当に、勝手だな…
『そんな名前でなんか呼ぶか!』
そんな名前で呼びたくない。
『なら、狼夢君が新しい名前付けて?』
『嫌だよ。』
面倒だな。
『お前はあっちだろ?さよなら。』
あの子と別れる。
そして家に着いて、
家を、また追い出された。
弁当屋に行くか。
『また来たのか、ほらよ。』
弁当箱を渡された。
『ありが…』
え?
向こうに、人が写った写真が飾られていた。
『あぁ、あれか?あの人は、私の姉さんだ。
『ねぇさん…』
『昨年に、亡くなったんだ。あの子も、人狼だった。』
そうか、だから…
『困ったことがあれば、ここにくるといい。昨日一緒にいた彼女も連れてな。』
『ありがとうございます…』
この人も、信じていいかもしれない。
弁当を食べて、家に帰る。
家に帰っても、少量のご飯しか出してくれない。
弁当を食べてよかった。
そんな日々が、しばらく続いた。
そんなある日。
黒板に、机に、狼無と書かれていた。
僕の名前も、ひどいと思うようになった。
人狼でも、夢を持っていいとかなんとかで、狼夢という名前になった。
でも、狼という字が嫌いだった。
俺は、狼じゃないから。
なのに夢が無にされてしまったなら、もうそれは、悪口にまで聞こえる。
『無能!』
『無価値のゴミ!』
やっぱり、そういう意味か。
今日から、そう言われるんだろうな。
本当に、そうだった。
まぁ、予想はしていたけど。
もう帰ろう。
『きゃあ!』
と、
あの子が叫んだ。
なんだろう。
『どうした?』
嫌な予感がした。
が、
『むし!や!こわい!』
あの子のスカートに、
なんだっけこれ?
赤くて黒色の丸い模様がある丸っこい虫がいた。
なんか色々丸いな。
あ、
確か、てんとう虫?
害はないよな?
『はぁー、』
ため息を吐いて、
手で振り払ってやる。
『狼夢君、怖くないの?』
『怖くはないな。』
なんならちょっと可愛くも見えるくらいだ。
『ありがと、狼夢君。』
『・・・』
この子も、そう呼ぶ。
きっと、この子は、
この子だけが、夢として呼んでくれているのかな。
でも、やっぱり嫌になる。
家でも、
『狼夢!何度言ったらわかるの?本当に私の話を聞いてるの?今までのは全部無駄だったんだね。』
『無能だなお前は。出て行け。』
また、家から追い出される。
『お前は、他人なんだよ。この家にはいらない。もう戻ってこなくていい。俺は、それを望んでいる。』
やはり、父は俺を歓迎なんてしていなかったんだろう。
人狼である俺を歓迎したのは、あの母だけたった。
人狼のことを信じてたんだろう。
でも、裏切られた。
まぁ仕方ないか。
事実を知らないから、先生が言ったから、嘘を信じてしまったんだろう。
は?
なんだよそれ!
ふざけんなよ!
俺は人狼だ。
だから、周りからいじめられることなんてわかるだろ。
簡単に騙されてんじゃねぇよ!
俺は、頭を抱える。
俺もあの子も、苦しんでんだよ。
何もしてないのに、辛い思いをしてんだよ。
いつも通り、弁当屋へ。
もう夏だ。
暑い。
『・・・』
あの家に、あと何日いられるだろうか。
そのあとは、どうしたらいいだろうか。
わからない。
今日は、あそこに帰れるのかな。
行ってみるしかないか。
帰ると、
父は、明らかに不機嫌そうだった。
母も、俺のことを気にしなかった。
次の日、
あまり寝れなかったせいで、眠い。
でも、やっぱりいつも通りで、
いじめられて、
痛い思いをする。
俺に、居場所がないようで、
『っ‼︎』
イライラする。
そんな時、
『ねぇ、狼夢君。あそぼ?』
あの子が、話しかけてきた。
『何でお前と遊ばなきゃいけないんだよ!あ、間違えた、遊ぶって何するの?』
いつも気を張っていたので、強い口調になってしまった。
『狼夢君は何をしたい?』
あの子が訊いてくる。
何をしたいって訊かれても…
それより、その名前が気に入らない。
『まず、狼夢って呼ばないで。俺はその名前が嫌いだから。』
親ではない、あの親からつけられた名前。
昨日のことを思い出す。
今は、そいつらも名前も大っ嫌いだ。
『ごめんね。なら、新しい名前を考える遊びをしよ?』
新しい名前を考える、
遊び?
『なんだそれ?』
よくわからない。
だけど、あの時も言っていたような、
『お互いにお互いの名前を考えて、それを新しい名前として呼び合うの!』
いきなり言われても困る。
だけど、いいかもしれない。
俺が狼夢と言われることがなくなって、
あの子を、名前で言えるかもしれない。
悪くないな。
でも、
やっぱりすぐには決められない。
帰り道で、
家で、
考えてみる。
そして、
!
バチン!
父に、頬を叩かれた。
『これが、人に手を出すってことだ。覚えておけ。』ー