テラーノベル
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狐塚小豆
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来世は二酸化炭素がいい さんのリクエストで、rtttの『オメガバース』を書かせていただきました!
結ばれた後のヒートのお話とのことでしたので濡れ場メインにしようかとも思ったのですが、直近で致死量の『友情』を食らってしまったため後半だけ変に真面目な感じになってしまいました。
半分くらい勢いで書いたのでご希望に添えていなかったらすみません! リクエストありがとうございました!
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「うぃ〜おつかれ〜〜! 今回の任務はけっこう楽勝だったな」
「な! 特に前衛組の連携が冴えとった気ぃするわ。今日は特別に俺が奢ったってもええで〜!」
「え、マナ太っ腹じゃ〜ん! てことは打ち上げは焼肉でも行っちゃう? 焼肉でKPしちゃう〜??」
久しぶりの戦闘任務がつつがなく終わり、時刻は夕方の6時半を過ぎた頃。俺たちは諸々の手続きのせいで凝り固まった身体を伸ばしつつ帰路に着いていた。
マナの言う通り、今回は立地のせいもあってかいつもは小回りの効かない俺やウェンが立体的に動きやすく、自分でもなかなかに良い働きができた気がする。けれどそれは偵察や遊撃を任されているマナやテツがサポートしてくれたからであり、特にテツが敵を誘導する立ち回りをしてくれたおかげで最後は一網打尽にすることができた。
改めて感謝を伝えようと隣を見れば、テツはどこか覚束ない足取りで俺の一歩後ろを離れて歩いている。また怪我でも隠しているのかと肩に手を置いてみると、テツは大袈裟に驚いてこちらを見上げた。
「ッ、ぁ──」
「……テツ? どうした?」
「テツ〜? さっきから喋ってないけど大丈夫?」
「お前また怪我隠してんとちゃうやろな? せやったら打ち上げは無しやで」
「あ、ぇと、……何でもないよ」
そう言って笑ってみせるが、やっぱりどこか様子がおかしい。潤んだ瞳はふらついていて焦点が合っていないし、いつもより頬の血色が良い気がする。まさか熱でもあるのか、と首筋に手を当ててみたところ、テツはかっと目を見開いて息を詰まらせた。
──そして、ぶわりと香る甘い匂い。
「ッ……おい、お前……」
「どしたん? やっぱ怪我でも──」
「……っ!」
顔を覗き込もうとしたマナから遠ざけるように、気付けばテツの身体を抱き寄せていた。思考よりも先に体が動く。この感覚には、確かに覚えがあった。
ぽかんとしているマナに何か弁明しようとして、吸い込んだ空気の甘さに目眩がする。これだけの匂いに2人が気付かないはずがない。だとしたら、いよいよ答えは明白だ。
勘の鋭いウェンは口籠る俺を見て何かを察したらしく、ああ、と声を上げる。
「……おっけ。そうね、なるほどね。……マナ、今日は僕と2人で呑み行こっか」
「へ? なんで急に……あぁ、そういうことか」
詳しくは語られずともマナもそれを察したようで、ススっと俺たちから離れていく。申し訳なさそうな表情と仕草がありがたいやら気まずいやらでますます言葉が出てこない。
ちらりとテツの方を確認すれば、頬の紅潮と視線のブレはさっきよりも一層ひどくなっている。これはなりふり構っている場合ではないな、とそのときようやく気がついた。
「ごめんまじで、そういうことだから……」
「おん、気にせんでええよ。復活したら連絡してな」
「こっちの方は僕らでどうにかしとくからさ!」
「ありがと、埋め合わせは絶対忘れねえから」
マナとウェンは親指を突き立てつつ街の方へ消えていき、それを見送った俺はテツの肩を支えながら反対の駅の方向へとむかう。ここからならホテルよりタクシーでも拾って家へ向かった方が早いし、どうせこいつのフェロモンを感知できるのは俺だけだ。
それでも、こんな状態のテツを晒しながら移動するのは──そう考えた俺はキリンちゃんを肩に移動させつつ、片手で上着を脱いでテツの頭から被せる。影になったフードの下から、ぱちぱちと明滅する瞳が困惑げに俺を見つめている。
「ごめんな、ちょっと歩くことになるけど……フード被ってていいから、それで我慢して」
「……っ、うん……」
テツは控えめに頷くと、俺の上着をきゅっと摘んだ。いつもより仕草が幼なげで、声は小さく甘ったるい。
──まずいな、思ったより時間との戦いかもしれない。運良く目の前を通り過ぎようとしたタクシーを捕まえ、事情を説明して乗り込んだ。
密室。窓を全開にしても車内にあっという間に充満する甘い匂い。正気を失いそうになるのを内頬を噛み締めて堪えながら、俺は再度テツの身体を抱き寄せた。
§ § §
甘い、あまい匂いがする。
一瞬靄がかった意識を力づくで現実に引き戻し、目元を抑えていた右手を退ける。眼下に広がる光景は、今まさに俺の手によってシーツの上に縫い付けられ、小刻みに震えながらこちらを見上げる『番』の姿──それはまさに、絶景だった。
咄嗟に手を離せば物惜しげに目で追われ、取り返したばかりの理性がめちゃくちゃに掻き乱される。
「っ、りと……くん」
「……うん」
「ごめ、こんな……急にくると、思ってなくて……♡」
「いや、こっちこそ……察してやれなくて、ごめん」
「……謝んないで、よ……それより、いいから……っ♡」
すり、と何も纏っていない白い脚が擦り合わせられる。涙で潤んだ控えめな声とは裏腹に、その視線はひどく淫猥に濡れていた。
俺はテツの望み通り立てられた膝に手のひらを置き、そのまま下へ向かって這わせてゆく。いつもは俺よりずっと低いはずの体温が火傷しそうなほど熱を持ち、ただ触れているだけで過剰な刺激を受け取ってしまう肌が粟立っている。
そうしてたどり着いた、あわいの部分。「触るぞ」とだけ声をかけて指を伸ばせば、それだけでそこはとろりと熱い蜜をこぼした。
「っすげ、どろっどろだな……もうシーツまで垂れてる」
「……い、言わないで……♡」
よほど恥ずかしいのか、テツは枕を引き寄せて顔を隠してしまう。少しでも興奮を抑えるため視界に入った情報を整理したかっただけなのだが、嫌がるのならやめにしよう。
白い枕にぎゅうぎゅうと顔を押し付けるテツの顎を撫で、「顔みせて」と呟いてみる。いつもより従順なテツは大人しく枕を離し、真っ赤に泣き腫らした可愛い顔をこちらに向けてくれた。
涙で濡れた頬に謝罪代わりのキスを落として、再び手元に意識を向ける。とろとろとこぼれ落ちる愛液を指先に纏わせて、ゆっくり中心部へと運ぶ。
とっくにぬかるんでいたそこは、俺の節くれだった指を何の抵抗もなく飲み込んでいった。第二関節まで挿れただけですぐさま伝わる粘膜の熱さと柔らかさ、そして奥へと誘うような収縮に、下半身がぐっと重たくなるのを感じる。
「──ぁ、あっ……♡ も……っ、挿れていい、って……!♡」
「……いつもより短くしてやるから、もうちょっと我慢して」
「ぅ゛……ぅう゛〜〜……♡♡」
散々待たされたテツは早く早くと急かして来るが、俺としても前回みたいに本能に飲み込まれたくなくて必死なんだ。はやく新鮮な精を寄越せと脈動する内壁に主導権を渡してしまわぬよう、あくまで冷静になかの筋肉をほぐしてゆく。
「……抑制剤飲んでたのって、何ヶ月くらい前からだっけ? 夏は忙しかったから……もう3ヶ月くらい? そんなに溜め込んじゃったら、さすがに無理が祟るよな」
「う、うん……」
「そういやお前、昨日から固形物食ってなかったもんな。食欲ないだけかと思ってたけど、もっと早くに気付くべきだった。ごめん」
「う……ん、」
「別に番ってからも初めてってわけじゃねえのに、なんか毎回緊張するよな。フェロモンが他の奴に感知できないのとか、強制発情になるのとか、慣れないことばっかだし──」
「……っ、ねぇ、リトくん」
「うん?」
「あ、足……当たってる、んだけど……♡」
言われて見てみれば、どうやら無意識のうちにテツの脛に自身を擦り付けてしまっていたらしい。かっと顔から上が熱くなり言い訳しようとするが、それももう、発情しきった頭では考えることができなかった。
「ねぇ、」と再びテツが甘ったるく俺を呼ぶ。あと一歩でも逸れたら崩れてしまいそうな理性をどうにかこうにか保っていたくて、顔を上げることができない。
動こうとしない俺に痺れを切らしたテツは震える腕を差し出して、俺の腰をするりと撫でる。途端に甘い香りが強くなり、ずくん、と脈打つ下半身に嬉しそうなため息がかかる。
「はぁ……っ♡ ……今のわかった? きみの、僕のなかに入りたいってうずうずしてるみたい……♡ ね、もう我慢できない♡ はやく気持ちよくなろ?♡ はやく、すっっ……ごく気持ちいい番えっち♡ しようよ……♡♡」
「おっまえ……ッッ!」
ぷつん、と自分の中で何かが切れる感覚がして、気付けば俺はテツの上にのしかかっていた。テツは嬉しそうに三日月型の双眸で俺を見据えていて、頭の中はもう、目の前の『俺だけのオメガ』に種を植え付けることでいっぱいだった。
煩わしいベルトを片手で乱暴に外し、前の部分を寛げる。紫色の三日月が更に細められ、そこから先はもう、覚えていない。
§ § §
「あ゛ッ♡♡、っまた、でて……ッああァ゛……ッ♡♡♡」
「……フーー……っ」
ふっと全身の強張りが取れて、束の間頭の靄が晴れる。今しがた自身が吐き出した精液を最奥へと塗りこもうと腰が勝手に動いてしまい、下生えの擦れる感覚に身震いした。
それが気持ちよくてたまらないらしく、テツは蛙が潰れたような声を上げて何度も繰り返し絶頂している。それに合わせて内壁が痙攣するものだから、冷静になりかけた思考があっという間に欲で塗りつぶされていく。
「お゛ッ♡、んぉ゛っ……ぐぅゥ〜〜……ッッ゛♡♡ そぇ、やばい……っ♡ ッいぐの、どまんに゛ゃ……ッ♡♡ 〜〜ぉお゛ッ♡♡♡」
「……」
「も、なんか言ってよぉ゛……ッ♡♡ ──ッひ♡!? 待って、まっれ゛ぇ……ッお゛〜〜〜……ッッ!♡♡♡」
「は、かぁわい……」
ぐちゅん、と不意打ちで奥を突いてやれば、イきっぱなしになっている身体に更に重ねて絶頂させることができる。そう教えてくれたのはテツだし、射精せずに達するときは明確な終わりがなく、天井に擦り付けられるような快感がずっと続くようなもの、と教えてくれたのもテツ自身だ。
だったら今のこれはどれだけ気持ちがいいんだろう、とそこまで考えて、自分の口元に凶悪な笑みが浮かぶのが分かる。ストッパーの馬鹿になった本能はもはや制御する術などなく、優しく愛撫している余裕も今はない。いつもは絶頂が落ち着くまで頭を撫でたり頬を包んだりしている両手が、気付けばテツの細腰を乱暴に掴んでいた。
「あぇ……?♡ ……ぁ、まだ、うごかな──い゛ぃ……ッ!?♡♡♡ あ、あ゛っ♡♡ むりッ♡ メスイキしたばっかのあとのぴすとんッ♡♡ ほんとにむりだからぁ……っ♡♡」
「ッごめん、ゆっくりするから……ごめん、ごめんなぁ……?」
抗い難い衝動に駆られ、俺は再び奥の行き止まりをめがけて思い切り腰を突き入れる。とろとろに柔らかい肉の壺は絶え間なく蜜を滴らせ、それを性急に掻き回すものだから、結合部が白く泡立ってしまっている。
……いや、白いのは俺の吐き出した精液も漏れてきているからか。そう考えた途端、『じゃあ、また注ぎ直さなければ』なんてふざけた答えに至ってしまうのだからどうしようもない。それを止める正気も今は留守らしく、俺は邪魔な思考を頭の隅に追いやって、下半身の感覚に集中する。
「、ッぐ……やばい、とまんね……ッ♡ はは、テツもきもちいな……? ……ほら、前もさわってやるから……」
「ひぁ゛……ッ!?♡ やぇ゛、やめでっ♡ んぉ゛ッ……♡♡、も、僕のせぇし出ないからっ♡ いまの僕、女の子だから……っ♡♡」
「……おんなのこ……」
咀嚼しきれなかった情報をおうむ返しに口に出す。くったりと頭をもたげたままのテツのちんこはぶしゃぶしゃ透明な液を吐くばかりで、いくら触っても扱いても硬度を持つことはない。
当然だ、テツはすでに俺という番を持つオメガなのだから。ヒートを起こした今のテツは種を欲する母胎としての身体に変わっており、雄としての役割──つまり射精や勃起をすることは一切ない。性感帯としての役割は変わらないらしいが平常時の感覚ともまた違い、射精直後のような敏感な状態で、触れられるだけで身体が言うことを聞かなくなるらしい。
でも、気持ちいいんだから良いじゃんか。まともに頭の働かない俺は深く考えずに震えるそれを掴み上げる。潮だかカウパーだかで濡れそぼった先端に親指を当てた途端、テツから甘く濁った悲鳴が上がった。
「ひ……ッ゛!♡、やだやだっ♡♡ それづらいっ♡ これでイくのやだぁッ!♡♡ おねが、──んい゛ッ♡ ぃう゛〜〜〜〜……ッッ゛!♡♡♡」
「すげえ、中うねってきもちー……」
「ぃ゛……ッ♡♡ やら゛♡、きついぃ゛……ッ♡♡ ぁ、ぁ゛ッ♡ 〜〜〜でるッ♡♡ っ潮、ふいちゃうってッ゛……!♡♡」
「ははっ……いいよ。だして」
「だめ、やだぁ……っ♡ やだって、ねぇっ、リトくんッ♡♡」
「……うん」
髪を振り乱して駄々をこねるテツの両腕を頭の上でひとまとめにして、俺は尚も亀頭を弄るのをやめてやらない。こうして強い刺激を与えると、内壁がぎゅうぎゅう締め付けてきて気持ちがいいから。
本人の言う通り相当限界が近いらしく、鈴口に指を沿わせてなぞるだけで大袈裟に腰が跳ね、ただでさえ細い身体が折れそうなほど反らされる。薄い腹には中に飲み込んだ俺の形が浮いて見え、中側も外側も全て俺が掌握している状況に支配欲がみるみる満たされていく。
今日何度目かの射精に向けてラストスパートと言わんばかりに抽送を早め、がつがつ最奥を嬲り続ける。肉のぶつかる粘着質な音が鼓膜を揺らし、全身から汗が吹き出して、もう何も考えられない。
「っごめん、あともうちょいだから♡ ……我慢して、」
「むりッ♡♡ も、でちゃ……っ♡ やだ、リトくんっ♡♡」
「ごめん、ごめん……っ♡ ……っは、イく……ッ♡」
「あ゛ぁァ゛ッッ♡♡ むりッ♡ イっちゃう、やばいのきちゃう゛……ッ♡♡ 〜〜ッんぃ゛、っぎゅうぅう゛……ッッ゛♡♡♡」
俺たちが果てたのはほとんど同時で、俺が一番奥で吐精した瞬間に、テツも勢いよく潮を吹いて達したようだった。どくどくとやたら長い射精の感覚に酔いしれて、俺は背中を震わせながらまたしても奥の方へと塗りつける動きがやめられない。
繰り返し注ぎ続けたことにより段々とテツの腹が許容量を超えてきたようで、入り口の筋肉がぐぱぐぱと伸縮するのに合わせ白濁したそれが品のない音を立ててこぼれてくる。こうして何度も欲を吐き出したところでいつものように頭がすっきりすることはなく、むしろ輪をかけて輪郭を失っていくばかりだ。
──テツ、俺のテツ。俺だけのオメガ。俺だけの可愛い可愛い番。
それを快楽漬けにして種を植え付ける。アルファとしての本能で染まりきった脳内でそんなことを繰り返し反芻する。反芻しながら俺は、枕に押し付けられた顔の反対側──無防備に晒されたうなじをべろりと舐めあげた。
うなじはオメガの急所だ。アルファに噛まれるだけで番が成立してしまうその箇所は他の性より神経が集中していたり、フェロモンを分泌する汗腺が通っていたりする。よって、オメガはそこに触れられることを本能的に恐れているらしい。しかしそれはアルファにとっても同じことで、特に番となった相手のことは所有の証を確認するために執拗に触れたくなってしまうのだ。
例えば今。繁殖欲求で馬鹿になった俺の頭は、目の前の番を支配することしか考えられなくなっていた。
「は……ッ、テツ、テツ……っ♡」
「ぁ、ぐッ♡ ひぎッ……──ァ、」
すると、それまで半狂乱で悶えていたテツが突然ぴたりと動かなくなった。もしや無理をさせすぎたか、と射精後の倦怠感で濁りかけていた意識が覚醒し、すぐさま上体を起こして顔を覗き込む。
テツは口の端から涎を垂らしたままあらぬ方向を見つめており、その表情はまるで肉食獣と目が合ってしまった草食動物のように引き攣っていた。潤んだ瞳と紅潮した頬はそれでいて甘く、恋に気付いた乙女のような様子でもあり。
「ぁ、あ……っ♡」
「っなに、どっか痛い……?」
「……あ、ちがっ……♡ わ、わかんな……も、ぜんぶきもちいい……っ♡♡」
テツは焦点の合わない視線をふらふらと漂わせながら、途切れ途切れにそう呟いた。おそらく本当の意味で極限状態に陥った脳が快楽物質を爆発させているのだろう。試しに腹の上をそっと撫でてみれば、痩躯は異常なほど痙攣してそれだけで絶頂に至ったようだった。
──番同士の発情は連動する。首筋から香る咽せ返るような甘い匂いに涎が湧いて、白い肌へとぽたぽた落ちる。
「……? リト、くん……? ……ぁ、あ♡、ンっ……♡」
余韻をたっぷり味わい徐々に弛緩していく身体を抱き寄せて、噛みつくようにキスをする。普段のように愛情表現の一環としてではなく、快楽を貪り合うためだけの、本能的なキス。後から後からあふれてくる唾液を健気に飲み干すテツが愛おしくてしょうがなくて、余計に凶暴な欲が駆り立てられる。
俺は深く口づけたままシーツの海を彷徨っていた華奢な脚を手繰り寄せ、そのまま膝裏を持って抱えこむ。もう何もかもがどうでもよくて、ただ目の前の愛しい番を孕ませたくて、可愛がってやりたくて。
愛でも単なる生殖欲求でもない歪な感情がごちゃ混ぜになったまま、とうに硬度を取り戻していた下半身をゆっくり前後に揺らしはじめる。
「んぐ……っ!?♡ はッ♡、んあ゛っ♡♡ きもち、いぃ゛……っ♡♡ おく、奥すきっ♡♡」
「……お、れは?」
「ッ、んぇ……?♡」
「俺は? 好き……?」
「……へ、へひひっ……♡♡ ……好き♡ ぜんぶのなかで、いっちばんすき……♡♡」
「……、……そっかあ……」
嬉しそうにとろりと溶ける紫色をみていたら今度こそ何も考えられなくなって、テツの身体を覆い隠すように腕の中へ閉じこめる。きゅうきゅう締めつけてくる肉の壁を無理やり拡げ、テツが好きだと言った奥ばかり狙って責め立てた。
「あ゛ッ♡、ぐぅ、う゛うゥ〜〜ッッ゛♡♡♡ ──ッい、イっでる♡♡、も、イってぅ゛、からぁ゛……ッ♡♡♡」
「……もっと、」
「ッお゛っ♡♡、ら゛ぇ、おぐきもぢぃ♡♡ またいく、イってるのにイぎゅっッ゛♡♡ 〜〜ぉッ゛♡ お゛っ♡♡ んおおぉ゛〜〜〜……ッッ♡♡♡」
抱えた脚を攣りそうなほどぴんと伸ばし、獣みたいな声を上げているところを見るに、テツはよほど重たい絶頂をしたらしい。
いつもみたいに抑えるでも無理して高い声を出そうとするでもなく膨大な快感を搾り尽くすための咆哮と、こちらを気遣う様子など微塵も感じられないほど暴れる手足。
それに俺はかわいい、とだけ呟いて、休まず最奥を叩きつける。どれだけみっともない姿を見たところで今の俺にとっては興奮を煽る材料でしかなく、むしろもっとぐちゃぐちゃにして原型を留めなくしてやりたいとすら思う。
天井を向いて晒された腹に手のひらを当て、じっくりと温めて排卵を促す。それも知識や経験の前提があるわけでもなく、ただ本能に突き動かされるまま、目の前のオメガを自分のものにしたいという原初の欲に従うまま。
「──〜〜ッッかひゅッ♡♡、ぅお゛♡ ぉ゛っ♡ ふぉお゛……っ♡♡」
「てつ、俺もすき。好きだよ……」
「っあ♡、はぁッ♡ はぁ……っ♡♡、……??♡」
余韻から戻ってこられないテツにそれ以上言及することもなく、震える身体を抱きしめて再び腰を振りたくる。どちらのものか分からない体液が結合部どころか太ももまで垂れて、シーツをしとどに濡らしている。
耳元で泡の弾けるような喘鳴が聞こえ、背中はがくがく震える足で殴られて、髪の毛先から汗が滴り落ちる。けれど、それも全てどうでも良かった。
──俺のだ。全部俺の。こいつの汗も声も体も心も全部全部、俺だけのものだ。他の誰にも渡さない。
子どものわがままと獣の本能が合わさったような衝動に流されるまま、俺の意識はまた、気だるい快楽に支配されていく。
§ § §
「……ごめん、マジで……」
「いや、こっちこそなんか、ごめんほんと……」
翌日、俺とテツは膝を突き合わせて両者ともに項垂れ、早くも昨晩の痴態を恥じていた。
最後の方はもう覚えてすらいないが、あれからテツが早々に潰れて意識を失ったあとも、俺は満身創痍のテツに無体を働いていたらしい。ちらりと横目だけで窺えるだけで、Tシャツの裾や袖から覗く白い素肌のあちこちに赤い花が散らされている。
通常、アルファはヒート状態のオメガのフェロモンを浴びすぎると一時的に『強制発情』と呼ばれる状態に陥ることがある。特に番となった相手のヒートにはとりわけ誘発されやすく、どれだけ気をつけていても種として抗えない部分があるのは事実だ。
──いや、それにしたって。
「その……大丈夫かよ、身体……」
「あ、うん、おかげさまで……いやでも、ごめん。こっから体力が回復次第、もう一回か二回くらい頼むかも……」
テツは顔を赤らめながら下腹部をさすり、ふわっと香る甘い匂いは久しぶりのヒートがもうしばらく続くであろうことを示している。
こちらを気遣っているんだろうが、数ヶ月ぶりのオメガのヒートがあと一回や二回の行為で終わるわけないだろ。当の本人が隠したがっているのだからわざわざ口にすることこそないが、俺は次こそせめてもう少しくらい理性的な行為をしてやろうと心に決めた。
「俺、飯のついでにゴム買ってくるわ。どうせお前外に出せねえし」
「え、いいよ……ていうか、今更ゴムとか必要ないでしょ。僕らには」
「、ぁ──……ごめん」
テツが冗談で言っていることは分かっているが、俺は勝手に責任を感じてしまい咄嗟に口から謝罪が漏れる。テツはびっくりしたような顔でこちらを見ると、「いやっ違、そういうつもりで言ったんじゃないって!!」といつものように200%慌てながら全力でフォローしようとする。
俺もついいつものようにつられて笑って、けれど、どれだけ誤魔化そうとしたところで事実は事実だ。碌にシャワーも浴びていないべたべたの腕をさすり、俺は再び視線を逸らす。
俺とテツは──というか、俺たちのように派手な肉体改造を受けたヒーローは、副作用として子どもを作る機能を失ってしまっている。これは研修のとき何枚も同意書を書かされたものだし、納得はしているつもりだ。
……納得、しているつもりだった。あの頃はテツと両想いになれるだなんて、微塵も思っていなかったから。
運命なんて信じていなかった。あったらそりゃあ素敵だとは思うけど、この世界にただ1人俺だけを待っている人がいるとか、そんなふうに思えるほどロマンチストでもないし。そんなものをわざわざ探すより、世界平和を目指してこの身を差し出す方がよっぽど現実的に思えたのだ。
それから数えて早数年、物の見事に俺は運命の番に骨抜きにされてしまっているわけで。そんな幸せの絶頂にいる俺は、あの日死ぬほど悩んで出した答えを今更になって後悔しているところだった。
「──リトくんは欲しかった? その、僕との子ども」
「それは……俺が決めていいことじゃない、けど、…………」
「……そっか」
何と続けても傷つけてしまう気がしてイエスともノーとも言えない俺を、テツはそっと宥めるように肯定してくれる。気にしていないはずがないのに。繁殖のため書き換えられたオメガという存在が子を成せないことについて、負い目を感じていないはずがないのに。
束の間重たい沈黙が訪れて、今はなんと答えるのが正解だったのかとぐるぐる後悔する。せめてフォローする言葉のひとつでも、と開きかけた口は、テツによって塞がれることになった。
「あのさ、僕この前、本部の喫煙所でたまたま偉い人に会って……色々聞いてみたのよ」
「い、いろいろ?」
「そう、色々。んでさ、あっちも僕らのこと知ってるわけだから、つい口を滑らせちゃって。──『僕らって子ども作れないじゃないですか』って」
「……ッ」
分かっていたことではあるが、いざこうして言われてみると、形容し難いほどに重く感じる。俯いたまま下唇を噛む俺に向かって、テツはなおも言葉を続けた。
「で……そしたらさ、『え? 作れるよ?』って」
「……は?」
「『言ってなかったっけ。ちょっとデバイスの使用休んでもらうことになるけど、一応技術としては理論的に可能だよ?』……って、言われまして」
「……え、つまり……?」
「や、それだけじゃないけどね。リトくんはリトくんでキリンちゃんと話つけてもらわなきゃだし、任務のシフトの工面とか、それこそ本部とも要相談案件だし、あと僕は煙草吸えなくなるし、それは一大事だし。……でも、まぁ、その〜〜……ね、」
語尾は上手くはぐらかされてしまったが、今の話を聞けただけでさすがの俺も事の概要は掴めたと思う。
──技術としては、理論的に可能。その意味を理解した瞬間、全身の血が沸騰したように熱くなる。昨日で消耗しきったと思っていたのに、と若すぎる身体が恨めしくなる。
色々と話し合わなければいけない。理性的に、もっと冷静に、将来のことを考えて。しかし、どこまでもアルファである俺とオメガであるテツは、それぞれの叩き出した結論に向けてどう言い訳するか、そのことだけで頭がいっぱいだった。
「……えっと、それで……どう? 僕と子作り、したい……?」
「……ッ!!」
ビシ、と体が固まって全身の毛穴から汗が噴き出す。お前分かって聞いてんだろ、なんていつもの軽口すら出て来ずに、俺ははくはくと口を開閉させることしかできない。
黙って返事を待つ上目遣いに、俺の出した答えは──……。
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まじで良いです!浅間さんがかくしょうせつ