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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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『ちょっと花少ないなあ』
横浜イングリッシュガーデンに来て、千歳(女子大生のすがた)は苦笑いした。今日の千歳はおしゃれしていて、髪を伸ばしてふわふわに巻き、真っ白いコートを着てウエストをベルトできゅっと止めている。
「いや、ごめんね、流石にもうちょっと花あると思ってたんだけど」
俺は謝った。冬の横浜イングリッシュガーデンは緑の庭園で、緑の中にたまにぼちぼちとバラが咲いてるかな、という感じだったのだ。
『まあ、ここのはお前の用事だし、昼のパフェがうまかったら合格にしてやる。おばあさんに送る写真、うまく撮れそうか?』
千歳は俺の肩をはたいた。
「一輪一輪接写すれば、それなりにきれいなのがたくさん撮れると思う」
『うん、がんばれ。ワシはクリスマス飾り撮る』
イングリッシュガーデンの入口にはクリスマスリースや大きな靴下が飾られていた。ガーデンの奥には大きなクリスマスツリーもあるそうだ。
「クリスマスツリーのところでさ、千歳も一枚撮らせてくれない?」
『ん? うん』
「それで……悪いんだけどさ、俺とツーショットで写ってくれない?」
俺は照れながら頼んだ。こないだおばあちゃんに山下公園の写真を送ったら、「千歳さんと一緒に撮らないの?」とやたらせがまれたので。
デートじゃないから! とその場はごまかしたのだが、おばあちゃんが欲しい写真なら撮ってあげたいし、あと一応今日はデート練習ということだし……。
『映るのはいいけどさ、誰にとってもらうんだ?』
千歳はあっさり了承したが、もっともな疑問を発した。朝一で来た冬のイングリッシュガーデンは、俺達以外に人がいない。
「スマホの自撮りモードあるから。俺頑張って腕伸ばして撮るよ」
『あ、そうか、自撮りってそういうのに使うのか!』
千歳は納得したようだった。そうだよな、昭和に自撮り文化なんてなかったもんな。
そういうわけで、俺達はイングリッシュガーデンを余す所なくうろつき、よさそうなバラが咲いていたらすかさず撮った。赤に黄色が透けた花びらのバラ、縁が濃いピンクで全体は淡いピンクのバラ、薄紫のバラ、金色にも見える黄色のバラ。一輪一輪を見ていくと、よく手入れされていて美しかった。
「これ、たくさん咲いてる時だったらもっと良かっただろうなあ」
『見頃っていつなんだ?』
「春と秋だって」
『じゃあ、それくらいにまた来よう』
「また付き合ってくれる?」
『うん!』
そっか、じゃあ俺ここにまた千歳と来られるのか。千歳、また俺と一緒に遊び歩いてくれるのか。
さんざんうろついてから奥のクリスマスツリーに着いて、俺はまず千歳とクリスマスツリーを撮り、それからクリスマスツリーをバックに千歳とのツーショットを撮った。
「よし、これでおばあちゃんに頼まれてたのは完了」
『ツーショット、おばあちゃんに頼まれてたのか?』
あ、言ってなかった。
「そ、その……おばあちゃん的には、俺と千歳が仲良くやってるところが見たいらしくて……」
ごめん、千歳を彼女扱いしてるわけじゃないんだよ、でも千歳とは仲良くしたいし、仲良くしてる証拠おばあちゃんにあげたくて……。
『おばあちゃん、お前の事心配なんだなあ』
千歳は頷いた。いや、まあ確かにそういうことなんだけど。
『そんなら、もっとツーショット撮るか?』
「え、いいの?」
千歳からそこまで提案されると思わなかったな……。
「じゃあ、入口のクリスマスリースのところまで戻って、それをバックに撮らせてくれないかな」
『わかった!』
そんなわけで入口まで戻り、クリスマスリースをバックにまた二人で自撮りした。だいぶクリスマスに浮かれた二人っぽいツーショットになったな。
でも、おばあちゃんに送るならこれくらいでいいかな。俺達は楽しくやってますよって、わかってもらえるもんな。
循環バスで横浜駅まで戻り、次は高野フルーツパーラーでパフェ食べようか、と高島屋に向かった時に千歳が『あ』と声を上げた。
『狭山先生だ!』
「え?」
千歳の指差す方を見ると、確かに狭山さんがちょっとよそ行きの格好でいた。隣にはおしゃれした金谷さんもいる。
狭山さんが片手を上げた。
「あ、千歳さん、和泉さん!」
『わー、こんなところで会うと思わなかった!』
千歳は狭山さんに駆け寄っていった。金谷さんもいるということは、これは狭山さんの方はガチのデートではなかろうか、俺達は邪魔じゃないか、と思ったが、声をかけてくれたのは狭山さんなので、俺も狭山さんの方に歩いていった。
狭山さんは笑った。
「いや、千歳さんの気配するなと思って」
「あ、そうだったんですね、邪魔してすみません」
「いえ、おふたりとも楽しそうで良かったですよ」
金谷さんはちょっと緊張した面持ちで、「こんにちは」と俺達に頭を下げた。千歳がなにかに気づいた。
『あ、そうか先生たちデートか! ごめん邪魔して!』
「い、いえ、邪魔とかは、いえその、確かにデートなんですけど」
金谷さんが縮こまって答える。いやそりゃ金谷さん的にはプレッシャーだよな、本当邪魔してごめん!
狭山さんがとりなすように言った。
「これから猫カフェなんですけど、あかりさん猫初体験なんで緊張してるんですよ」
「そ、そうなんです……」
あ、そっち?
『猫? 狭山先生んちのクーちゃん触らせてもらえばいいのに、懐っこいし』
「えーと、クーちゃんに失礼のないために猫カフェでリハーサルをするつもりでして」
『そうなのか?』
「来年度以降、私はクーちゃんとも暮らすことになるので……」
あ、そうか、金谷さんクーちゃんを小姑くらいに思ってるって狭山さん言ってたな。
クーちゃんに会ったことのある者として、俺は金谷さんを慰めた。
「普通にしてれば大丈夫ですよ、クーちゃん、あっちからスリスリしてくれます」
「あ、和泉様はクーちゃんと会ったことあるんでしたっけ」
「はい、お腹も触りましたよ、初対面で」
「初対面で!?」
金谷さんは驚き、千歳は吹き出した。
『ふふふ、ワシもお腹触った! だから全然心配ないぞ、まあリハーサルは大事だけど!』
「そ、そうですか……」
金谷さんは目を瞬き、俺はそろそろ頃合いかなと千歳を促した。
「じゃあ、デート邪魔してすみません、私達そろそろ」
『うん! デート楽しんできてな! ワシらこれからパフェ食べに行くんだ!』
「あ、すみません、こちらこそお引き止めして」
「いえいえ」
狭山さんたちと頭を下げ合って別れ、俺達は高島屋に向かった。
『クリスマスパフェといちごパフェでまだ迷ってるんだよなあ』
千歳は首をひねっている。
「今しか食べられないのにすれば? また来るんだし」
『どっちも今しか食べられない!』
「それは困ったな……」
お金は下ろしてきてあるし、千歳が決められなかったらふたつ奢ってもいい、ということにしよう。
高野フルーツパーラーでは早めのお昼も済ませる予定なので、食べて最寄りの駅まで帰ったら、駅前のケーキ屋でクリスマスケーキを受け取るのにちょうどいい時刻だ。千歳が選んだブッシュ・ド・ノエル、喜んでくれるといいな。
『なあ、夕飯はチキンとパエリア仕込んであるからさ、昼はお前の言ってたローストビーフのサンドイッチ食べよう!』
千歳の笑顔に、俺は「うん、そうしよう」と頷いた。
コメント
1件
読ませていただきました🌷 冬のイングリッシュガーデン、花は少ないけど千歳さんとのやり取りがすごく温かくて、ほっこりしました。おばあちゃんに送るためのツーショット写真、千歳さんが「もっと撮るか?」って言ってくれたところがすごく好きです。二人の距離が自然に縮まっている感じが伝わってきました。狭山さんと金谷さんのデートと偶然会うのも微笑ましくて、クーちゃんの話でまた繋がるのもいいなあ。クリスマスパフェ、どっちも食べたいっていう千歳さん可愛いですね🤍