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観音埼は、剱埼の目をまっすぐに見つめた。
「……お前、ほんとにめんどくさいな。」
「は?」
「だーかーら! 喧嘩するなら、ちゃんとぶつかってこいよ!」
観音埼の手が、光の槍を握る。
「お前が壊れそうだったら、俺が止めてやる。
でも、お前が泣きそうなら、笑わせてやる。」
「だって、俺ら――“灯台”だろ?」
「どんなに光が弱くなっても、誰かが見てくれてる限り、灯りは消えねぇんだよ!」
次の瞬間、槍と剣がぶつかる。
光と闇の激突。その狭間に、ある“声”が落ちてきた。
「もう、やめて。」
それは、柔らかくも、どこか切ない声だった。
剱埼が目を見開く。
「……石廊埼?」
彼の傍らに、薄い光を纏った影が立っていた。
――石廊埼灯台。
「君たちが争うのは、望んでない。
観音埼、君の言葉は確かに剱埼に届いているよ。」
「……でも、剱埼もまた、君を想っていた。」
石廊崎の周囲に、あたたかな光が広がっていく。
それは、まるで海に差し込む朝の光のように、柔らかく全てを包み込んでいった。
剱埼は、光に手を伸ばし、静かに目を閉じた。
「……クソ。俺らしくもねぇ。」
「でも――もう一度、お前らと並んで歩いても、いいか?」
観音埼は笑った。
「当たり前だろ!」
逆光が砕け、二人の名前が空に浮かび上がる。
剱埼
石廊埼
五人目、六人目が戻った。
そして、最後の文字だけがまだ消えずに残っている。
犬吠埼
次なる“闇”へ、灯は進んでいく――。