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____knt side
雲雀は、下を向いたまま何も話さない。
いつもなら五月蝿いくらいに話始めるのに、その素振りも見せないまま、ただ下を向いていた。
その空気に耐えきれなくなり、声を上げようとした瞬間、雲雀が口を開いた
「…ごめんな、奏斗」
『…え?』
急な謝罪に思わず声が出る。
雲雀は僕の顔を見ると、申し訳なさそうに眉を顰めた
「お前が、…αになりかけてたの気付かんかった。」
「あの時は本当にごめん。匂いも結構キツかったやろうし、
俺のせいで手もあんなボロボロになって血も……。」
「しかも俺なんかに言い寄られて嫌、やったやろ。」
「…ほんとに、…ごめん、」
「ごめんな」
あまりに申し訳なさそうな顔で言うものだから、何も言えなくなってしまった。
そんな顔をさせているのは間違いなく自分で、雲雀がどれだけ混乱していたかも見てとれた。
分かっている。
あれが雲雀の本心じゃないことくらい
雲雀は俺のことを好きじゃない、
あれは雲雀がヒートを起こしただけ。人なら誰でもよかったのだ
僕がその当事者だったけ
“あれは、雲雀の本心ではない”
それくらい分かっている
俺が選ばれないことくらい分かっているのだ
『大丈夫だよひば。嫌な思いさせてごめん』
上部だけの言葉を並べていく
目の前の雲雀は目を見開き、また眉を顰めた。
「で、でもッ奏斗は、!」
『分かってる。あれはひばの本心じゃない、そうでしょ?…大丈夫、全部分かってる』
「っ……」
雲雀の瞳がゆらりと揺れた
そして安心したように目を細めて、「よかった、」と呟いた
「俺、奏斗と…ずっと相棒でいたいから、…だから、もうこんなことしないようにする。から、」
「俺と一緒にいてくれるよな?」
その瞳には俺が映っている。
真っ直ぐにハッキリと
『…あったりまえ!一緒にいるに決まってんじゃん』
嘘だ、全部嘘
ほんとは俺だけを選んでほしい。俺だけを好きになって、ずっと僕のそばにいてほしい
相棒なんて嘘だ
友情なんてとっくに通り過ぎてしまった。
ずっと、雲雀のことを裏切っている
相棒だと思っているお前を、ずっと、ずっと
「…じゃあ俺、帰るな!…奏斗と話せてよかった!」
『うん。また明日』
そう言うと、雲雀は病室から出ていった。
残るは俺一人、
___もし、僕が雲雀にこの気持ちを伝えたら
はどんな反応をするのだろう
知りたくもないけど
『…ごめんなあ、ひばり…』
とっくにいなくなってしまったアイツに向けて謝る言葉は酷く掠れていた。
聞こえていないのに、
ただポツリポツリと言葉を溢す
『……好きになって…ごめん、』
ごめん、なんて何様なんだろう
謝る資格もないくせに
いっそ、消してしまえたらいいのに。
雲雀に抱いているこの感情も
全部、
消えてしまえば
『…はは、…馬鹿らし、』
___翌日
医者から告げられた一言に、酷く息が詰まりそうな感覚に襲われた
「奏斗さん、貴方は_________」
アキラ「α、になった?」
『…うん。医者がもう確定だって。』
セラフ「そうなんだ。体調とか大丈夫なの?」
『うん、なーんも問題なし』
ヒバリ「そうなんや!なんか、全然信じられん、」
雲雀はありえないとでも言うように僕の顔を見ていた。
『僕も信じられないんですけど』
体のどこかしこも異常はなくて、
ただずっと胸の底がぽっかりと空いているような
αになったことで、体も拒絶反応を起こしているのだろうか。
アキラ「…すみません。奏斗、ちょっといいですか?」
『?…うんいいよ』
アキラは何やら神妙な顔で僕の腕を引いた。
それについて行くように足を進める
雲雀達と数メートル離れた場所につくと
腕を掴んでた手を離して、まっすぐ僕を見た
アキラ「…その、…奏斗。」
『なに?』
アキラ「雲雀のことは、あまり深く考えすぎないでくださいね。…考えすぎても貴方が辛くなるだけなので」
『……え?』
雲雀のことって、なんだ?
僕が辛くなる?
さっぱりアキラの言っている意味が分からなくて、思わず首を傾げる。
目の前のアキラは下を向いて何やら言葉を紡いでいる。
状況が飲み込めない。まずなんで雲雀の話がここで出てくるのだろう
『えーと、ごめんアキラ…何言ってるのか分かんないんだけど、』
「え?…いやだって、奏斗は雲雀の事が、好き、じゃないですか」
___
『?何言ってんのアキラ?』
『僕と雲雀は相棒じゃん』
コメント
20件
ぐっ、ぐぁぁ...( ᷄ᾥ ᷅ )😭最後のセリフ...(´;ω;`)うぉぉぁぁ...!
奏斗…もう別人じゃん、😭
奏斗!諦めたらそこで試合終了だぞ!